第3話 かみ合わない理想論

次の患者は八幡次郎である。

渋沢吾郎:こんにちは八幡さん。夢のほうはどうですか。

八幡次郎:理想と現実がまったくかみ合いません。

渋沢吾郎:人類を救う手段は見えましたでしょうか?

八幡次郎:お金があれば、可能です。

渋沢吾郎:そうですか。では、どういう形で人類を救おうとお考えですか。

八幡次郎:大企業を創ることです。

渋沢吾郎:職種は?

八幡次郎:出来るだけ多くの職種でこの社会を救って生きたいのです。

渋沢吾郎:計画は進んでいますか?

八幡次郎:理想と現実がかみ合いません。

渋沢吾郎:八幡さんは自分がやりたいことがあっても、出来ない。何か欠けている事があるとは感じてないですか?

八幡次郎:はい。感じています。自分に業績がないのとお金がないことで、誰と話しても、理想論で終わります。

渋沢吾郎:私はもっと行動してみてはどうかと思いますが。

八幡次郎:妨害されているので、辛いです。

渋沢吾郎:他のせいにしても何も生まれ無いと思うのですが。

八幡次郎:しかし、それが現実です。妨害を乗り越える手段が無ければなりません。

渋沢吾郎:それには強力な味方が必要ですね。

八幡次郎:そうなんです。自分の夢である企業を起こす計画は人類救済の計画でもあります。

渋沢吾郎:私は八幡さんに頑張って欲しいですよ。

八幡次郎:期待されるとやる気が出てきます。

渋沢吾郎:運が向いてくるといいですね。あなたは正しい行いをしようとしていますからね。幸運を祈ります。

 と、八幡とのカウンセリングは終わった。

その日の夜は吾郎は清子と話していた。

渋沢吾郎:八幡さんのやる気には正直頭がさがる。だが、社会を救おうとしている者を妨害することは100害あって1利なしだよ。

渋沢清子:あなた、でも、八幡さんは社会で、物凄く叩かれているよ。

渋沢吾郎:今の世の中が病気なんだよ。だから俺みたいなカウンセラーが必要なんじゃないか。相手を理解できるカウンセラーが。

渋沢清子:あなたは優しいよね。

渋沢吾郎:俺はみんなの支えになってあげたいだけだ。じゃあ、そろそろ寝るか。

 と今日も家族は健やかだった。

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