第4話 この世界と今の現状の把握

 質問もあらかた終わりにして、この自分の頭で整理しなければいけないなと思うものの、目の前にいる執事グニルダさんがどうしても怖い。

恐らくはこの世界では常識なレベルであろう事も一言一句丁寧に受け答えをしているけど、直視できない程に最初に目の前にあった顔のインパクトが忘れられないのです。


 「他にご質問はございますでしょうか?」

 「あっっと、とりあえずは大体聞いたんで少し考える時間が欲しいかなぁ……」

 「そうであればここではなくお部屋で……」

 「いやっ!! ここで今考えたいんでっ!! ねっ!!」


 これで連れて行かれてBADENDになんてならないかも知れないけど、正直まだ心の準備も考えもまとまっていないからこの部屋からは出たくない。


 「では、お飲み物とテーブル等を持って来ます。」

 「っっと! ……そうしてもらえます?」

 「はい。 少々お待ちくださいませ。」


 そこまでしなくていい。という言葉をとっさに飲み込んだことで、とりあえずは短い間かもしれないが一人になれる時間をつくった。


 この召喚させられた世界……前世のゲームや小説の空想物語がベースになっているのは間違いないけれど、俺の知っているだけのものではないらしい。グニルダさんの話では、なんでもこの世界の魔王も勇者も【紋章を刻まれ、認められし者】しかなれないらしく、【紋章】は身体のどこかにある文字みたいな痣のことで、おそらくこの俺の"右の手のひら"にいつの間にかできているこの痣のことだろう。 こんな痣があるなんて、今まで気づかなかったし……。


 もう一つの【認められし者】っていうのがたぶん七つの大罪がベースである感情を司ってる者たちに認められるってことらしいけど、それなら今の俺は紋章はあるけど認められてないから魔王候補みたいな感じなんだろうか?


 それと、あのばぁちゃん天使が別れ際に言ったおまけがすごく気になるんだけども

身体中なんの変化も感じないし、何も持っていないけどなにが一体おまけされたんであろうか? 言葉が理解できるとかなのか?


 何であれ俺が望んでいた異世界チートで女性にモテまくりハーレムとは違い過ぎて嫌になるし、七つの大罪だから7人?の人達から認められなかったら最愛の嫁さんどころか魔王にさえなれないんじゃあ話がおかしいんでないのかね? 天使様。


 ただ、あの執事のグニルダさんから溢れ出る異常なまでの忠誠心みたいな感じ……先代の魔王っていうはどれ程の恐ろしさだったのか気にはなる。

 あんまりつっ込んで聞かなかったけど、勇者が攻め入って来たときに単身で魔王玉座の間で迎え撃ってそのまま玉座の間を封印したとか言ってたけど、玉座の間を封印したら俺は一体どこにいればいいのだろうか? これも謎のひとつだ。


 それに、この部屋から出たらあのグニルダさんみたいな凶悪な顔の悪魔や魔物とかいたら俺のメンタル崩壊しそうなんですけど、ゲームとかでも大体魔王城とかってすげーおっかないモンスターしかいないっていうのがセオリーだからなぁ……せめて人いや、人型に変身とかしてくれないかな? 一応、できるかお願いしてみようかな。

あと話聞くと現時点で魔王でもないし、魔王様呼ばれしてないからなんとか俺の名前で呼んでくれないかこれも応相談だな。


 そんなことを考えていると、鉄の扉越しからグニルダさんの声が聞こえた


 「失礼いたします。 お飲み物をお持ち致しました。」


 そういうと、扉が開き大きなテーブルとイスを持ってグニルダさんが入ってくる。

そして、少し間をおいてからティーセットを両手に持って入ってくるメイド服を着た赤髪の美しいグラデーションがかった長い髪に目鼻立ちが良い整った顔と印象的な深い緑の大きな瞳……そして服越しでも十分に青年心を掻き乱すなんとも豊満な身体の女性が丁寧に一礼をした後、部屋の中央へとやってきた。


 「どうぞ、こちらへ」


 グニルダさんが椅子を引き、俺が座るのを待っているがそんなことよりも目の前に

いる美女が気になってしかたがない。


 「えっと、こちらの女性はどなた?」

 「これは申し訳ありません。 この者には魔王様が、お席につかれた後に紹介をさせようと致しまして。」

 「あっ、そうなの?」


 そういうことならばと俺はそそくさと椅子に座って、この美女のご紹介を待った。

ティーセットをゆっくりとテーブルに置いて、スカートの両端をしなやかな両手でつまみながら浅くお辞儀をし


 「お初にお目にかかります。 私はこの城のメイドをつとめさせて頂いておりますサキュバス種の名をサリーと申します。 新しき魔王さま、以後お見知りおきを……何なりとお申し付けくださいませ。フフッ。」


 あー、これはヤバい……最後のフフッと上目遣いでハートを射抜かれたわー

これはもう駄目だろ、だってサキュバスであってこの美貌でフフッてもうイケるフラグだもの。悪の権化みたいなグニルダさんがこの場に居なかったら何なりとお申し付けちゃうもの。


 などと思っている間に、サリーは俺の元までティーカップを運んでくれたのだが。


 「あっ……」


 ——バシャ!


 数秒も経たぬうちに俺の股間辺りがじんわりと濡れてくる。


 「あっっちゃーーーー!!」


 その熱さに思わず飛び上がり、椅子が勢いよく後ろへ倒れる。


 「申し訳ありません! 大丈夫ですか!?」


 駆けつけて俺の股間に触ろうとするサリー


 「ちょっ! そこはいいから!!」


 サリーと前かがみになった俺の距離が近くなり、お互いの目が合った瞬間だった。なにか全身に鳥肌が立ったような感覚に一瞬だが見舞われる。


 『えっ!?』


サリーと同時に声が漏れる。

 少し距離をとったサリーが小さな声で続けた


 「ウソ? なんで?」


 先ほどまでと比べ声のトーンが幼いように感じたが、その違和感について考える間もなく、悲鳴にも近い叫び声が聞こえた。


 「まぁおぉうぅさぁまぁ!! お怪我はありませんかぁ!? この私にすぐ患部の処置をさせてくださぁい!!」


 そう言いながら、グニルダさんが俺のズボンに手をかけ、今にも脱がせようとするのを必死に抑え


 「いいっ! 大したことないからぁ! 放して!! 手を放して!! 大丈夫って!!いぃぃやぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」


 抵抗̩むなしく、グニルダさんにズボンをずりおろされたのだった……。

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