その12 俺は一体何者?

「あなたは一体何者なの?」


 困惑したようにルキの質問が飛んでくる。

 異世界転生しただとか、神に「布教」を頼まれたとかそういうことはまだ言うべきではないと思った。

 無駄に信用を下げるのは嫌だったし何より信じてもらえないだろう。


「……、これから確かめてみればいい。でも一つ言えることは、俺はルキの敵ではない」


 海の上で立ち止まりながら光正は言った。

 少し時間が過ぎ、何も言わずルキは立ち上がり光正の後ろを付いてくる。


「まあいいわ、コウセイが私の姉を探してくれるというのなら。味方だって敵だって」


 そうは言いつつも少し警戒されているのだろう。

 それならそれで構わない、ある意味でそれは必然の事なのだから。


 一度も海に入ることなくほこらまでたどり着いた。

 海の神であるミリュートはおそらく俺たちを歓迎してくれている。


「海の上で、木製のわりに腐ったり崩れている部分がないな」


 ほこらは確かに木製だったし、建造された百年前からずっとこのまま保っているのだとか。


「でも、ほこらまで来たはいいけど、ミリュート様に会えるのかしら?」


『多分、向こうがとびらを開けてくれるはずなのですー』


 というエミィの言葉はおそらくルキには聞こえてないのだろうが、ほこらの正面の扉が開いたのを真っ先に見たのはルキだった。


「ほこらの扉が勝手に開いた!?」


 中に祀られていたのはほぼ透明でうっすら水色が入った宝石。

 やたらと目を魅かれる美しさで俺もルキもその宝石に釘付けになってしまう。


『ミリュート様のほこらへようこそー!』


 そう聞こえた気がしたが、すぐに興味は景色の方へと移ってしまう。

 光正たちがいるのは水の中なのだろうか?美しくゆらめく空間には魚の姿すら確認できる。


 にもかかわらず、普通に呼吸ができるのだ。

 まるで、空気に水中を投影したかのようにも感じる。


 隣にいたルキは驚きで目を見開いている。

 そして正面には、流れているように美しい淡い水色の髪に、人魚のような姿をした人がいた。


「……あな、たは?」


 ルキは真っすぐとその人物を見据えまるで偉大なる存在に圧倒されたかのようにかすれた声で言った。


「私は、海神・ミリュート。ルキさん、緊張しなくてもいいのよ?」


 むしろその言葉にルキはさらに緊張をしてしまった気がしなくもないのだが……。

 それとエミィは水色の妖精のむれの中一人緑色が混じっていたのですぐにわかる。


「エミィ、戻りな」


「了解なのですー!」


 羽をはためかせて光正のもとへと戻ってきたエミィだったが、今度はそれにルキが反応した。


「コウセイ、あなたは妖精がつかえるの!?」

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