その11 海の神
太陽に照らされて光る波打ち際、柔らかな砂の感触、しょっぱいにおいと深い波の音。
海をこれほど近くに感じたのはいつぶりだろうか。
「こうやって綺麗な海の近くにいると私の魔力も清らかになるような気がするの」
「そうなんだ。確かにこの海を見ていると心が洗われた気分にはなるかな」
繰り返し現れる波の規則正しい音がとても心地よいものに感じる。
ルキもそのように感じていたようで、目を閉じて幸せそうな顔をしている。
『エミィ、綺麗な海だよ、出ておいで』
光正が呼びかけるとエミィは俺の右肩に乗って出てきた。
そのまま海を見つめていたが、パタパタと海の方へと飛んでいく。
『この近くにミリュート様のほこらがあるですよー、いってみませんかー?』
ほこら?確かに沖の方には島があるのがうかがえるが……。
泳いで行けるような所なのだろうか?そもそも行っていいのだろうか。
『わたしたち妖精はそれぞれ神様の守護のような役割をもっているのですー。むこうの妖精さんはわたしたちがいくことを快く許可していますよー』
それなら行ってみることもありかもしれない。
だが、心配なのはルキだ。
『だが、ルキはどうすればいい?』
『ルキさんも招待されてますよー、ごしゅじんがつれてきてあげてくださいねー』
ということらしい。
ルキは嬉しそうに海の音を聞いていたが俺の声かけでハッと我に返ってしまう。
「せっかくだからさ、ミリュート様のほこらに行ってみないか?」
「そんないきなり言われても……、もしミリュート様の怒りに触れたらどうするの?」
エミィは首を横に振って『そんなことはないのですー』と言っている。
やはり神の聖域に入っていくというのにはなかなか賛成を得られないらしい。
畏れ多いとなかなか行こうとしないルキに俺は少しだけ能力を使うことにした。
「もしも、俺が海の上を歩けるのなら一緒についてきてくれないかい?」
何を言っているのだろう、とルキは少し俺を不審に思っているに違いない。
しかし、その不審げなルキを尻目に、俺はゆっくりと海に歩みを進めていく。
「水の上を歩けるわけないわよ!」
ルキがそう言うのも想像通りだ。
そして、俺が水の上を本当に歩けることも。
「ミリュート様がほこらまで道を作っておられるのだ、ルキ。一緒に行こう」
「運命視」を使い、これから起こることを見ておいたのだ。
これならルキも信用してくれる。
信用してくれるというか、付いてくるしかないというか。
その後に聞かれる質問までが「運命視」で見えたものなのだから。
「あなたは一体何者なの?」
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