その10 美しい海の都市

 飛行艇はなんというかスピード感のない飛行機といった感じの乗り物だった。

 飛び立つときの浮く感じや揺れがあまり心地よくはない。


 これは酔い止め薬を買っておいて正解だったな、と思うがお隣のルキさんはそんなことも構わず外を見ていた。


「やっぱり何回見てもリースィの海は綺麗だなー!」


 いたく感銘を受けているようだったのでチラッと窓側を見てみると確かに海は綺麗である。

 深く青色が地平線まで続いていてなかなかの絶景だ。


「ルキは海が好きなんだ」


「まあ、海って綺麗だし広いし私も水魔法持ってるから、なんとなく親近感もわくからね」


 今度はその輝いた目を邪魔したくなかったため、共感するように笑顔になって俺は顔をそらす。


 どうしてこんな時に限ってこんなことを思いついてしまうのだろうか。

 俺がこの世界に来た理由は「布教」のためでもあったはずなのだ。

 彼女がどんな宗教に入っていたのかふと「能力視」してしまったのが失敗だった。


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信仰:海の神・ミリュート


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 口ぶりからするに自分の好きな神様を信仰しているのだろう。

 そして、もう一度ルキの顔を見て確信してしまった。


_____彼女が創造神を信仰することはきっとないだろうと。



『美しい海の都市・リースィへようこそ!』


 飛行艇の発着場に看板があり、そう看板には書かれてある。

 それが僕たちの目を引いた。

 

 流石都市だということもあってか、人通りは多くまた様々な種族がいる。


 猫耳が生えたもの、鳥人族と呼ばれる肩のあたりから羽の生えたもの、人間と大差はないが耳のとがったエルフのような種族のものも存在している。


「他の都市と比べても治安は良いし活気があるから、観光でリースィに来る人も多いんだって!」


 綺麗な海、新鮮な魚介類、抜群の治安の良さ。

 さてはアキオス神、わざとこの近くに転生させましたね?


「確かにこの雰囲気落ち着くよな。なんか安心する」


「そういえばコウセイってどこ出身なの?」


 唐突な質問に俺は動揺した。

 どうやって答えたらいいのだろうか、そもそもこの世界に来てから定住した場所なんてものはない。


「なんというか、海に囲まれてて食べ物がおいしいところ?」


「それだけじゃヒントが少なすぎるよ」


「まあ、遠い島国だから知ってる人はいないよ」


「コウセイも大変だったのかな……、なんかごめんね」


 そんなに素直に謝られてしまったらもう何も言えなくなってしまう。

 俺は大きな隠し事をしている。

 でも、そのことを伝えるときは今じゃない。


 そうして話しながら歩いているうちに、俺たちは海のすぐ近くに来ていたのだった。

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