その8 旅人ルキ

 様々な店を散策していたら再びルキに遭遇した。


「お、チケットは買えたようね。そういえば、あなたはどうしてリースィに行くの?何か用事?それとも旅?」


「まあ、旅みたいなものですかね」


「本当に奇遇ね!私も旅しているのよ、世界中を。けどその中でもリースィはとってもいい都市だったわ!」


 ルキが本当に楽しそうに語るので俺もつられていい気分になる。

 そういえばルキはどうして旅をしているのだろうか?ふと気になって質問するといきなりルキが静かになってしまう。


 さっきの楽しげな雰囲気からは一転、少し真面目な表情になった。


「実は私さ、とある小さな村の出身なの。でも、火事で村が全焼しちゃってさ……、姉とは生き別れになって……」


 おっと、思いっきり地雷を踏みぬいてしまったようだ。

 もう一度ルキに「能力視」を使ってみる。


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名前:ルキ・キザリア

種族:人間

能力:水属性魔法

経歴:生き別れの姉を探すため世界中を旅している。これからリースィの都市に向かおうとしている。

職業:旅人および商人


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 いつの間にか「経歴」の欄に先ほど言っていたことが追加されていた。

 もしかしてこの能力は求めた情報以外の情報は開示されないのだろうか?


 なら、今度は生き別れの姉について重点を置いて「能力視」。


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経歴:ルキが12歳の頃に姉のアリスと生き別れになってしまう。アリスの居所、安否ともに不明。


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 やはり求める情報によって「経歴」の部分は変化するようである。

 しかし、流石に細かいところまでは分からないんだな……。不明という文字がちらと不安をさそう。


「お姉さんを一人で探してたんだ」


「でも、この国は広いし、一人しかいない姉だしで一生見つかることはないのかもしれない。でも、それでも私はもう一度お姉ちゃんと会いたくてさ」


 その頬にはつたうように涙が流れた。

 そして、流れた涙をそでで拭うとルキは無理やり笑顔を作って言った。


「ごめんなさいね。本当は、言おうとは思ってなかったんだけど……」


 でも、その顔には少しも笑顔なんて浮かんでなくて、逆にその顔に俺の心は揺さぶられた。

 ルキのお姉さん、見つけるの手伝ってやろうじゃないか!


「俺もリースィに行った後はどこに行こうか悩んでいたし、お姉さん探すの手伝いますよ?」


「でも、そんな……わざわざ人の手を借りるほどでは……」


「いや、ここで会ったのも何かの縁。他人ひとが困っているのを見かけたら助けてあげるのが世の常ってやつでしょう?」


 俺がそう言うとルキは少しだけ笑顔を取り戻す。


「じゃあ、お願いします。私の名前はルキ・キザリア」


「こちらこそ。俺の名前はコウセイ。よろしくね、ルキさん」


 そうしてルキと俺は手を結びあったのだった。

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