その6 旅に出よう
唐突なのですが、私は今猛烈に困っています。
手持ちのお金が大金貨しかないんです。
大金貨というのは、この世界での一番価値が高い貨幣。
この世界でもお金というシステムはしっかりとあり、様々な貨幣があります。
小銅貨から始まり、中銅貨、大銅貨、小銀貨、大銀貨、金貨、大金貨。
ハンバーガーはせいぜい大銅貨五枚分くらい、それぞれの貨幣価値は前の貨幣のぴったり十倍なので、ハンバーガーの200倍のお金を払ってお釣りをもらう、というわけです。
日本で例えれば駄菓子を一万円札出して買うのと同じくらいなわけですよ。
しかもそんな大金貨が麻袋の中に結構な量入っている、店主も苦笑いですわ。
「というわけでお釣りは、金貨九枚、大銀貨九枚、小銀貨九枚、大銅貨五枚になります」
働いてもいないのにこんなにお金があるとか逆に怖い。
まあ異世界転生したわけだし当然の量なのかもしれないけれど……。
俺はそそくさと店を出ていくと麻袋の口をぎゅっと縛り、腰のベルトにしっかりと挟んでおいた。
さて、とりあえずどこに行こうか。
妖精のエミィは寝てしまったため聞くことができない。なんか外に出ると寝ちゃうよね、この子。
仕方がないので書店に入って地図を買うことにした。
良質な地図はそれなりに値段はしたが、今はそんなにお金の心配はしなくてもよい。
「それで、進むべきは……と」
どうやらかなり広い大陸のようでその大陸のあちこちに村や都市がある。
一際目立つのは、レリュスという都市で海はないが様々な都市と道がつながっている。
レリュスであれば様々な都市からの情報が集まりそうだし、逆に情報の発信もしやすいのではないだろうか。
まあ、ここから行くとなると一度海沿いの都市リースィに出てそれからレリュスに向かうことになりそうだ。
見た感じだと馬車は無いようだし歩きで行くしかないのだろうか?
そう思って「能力視」を試しに使ってみるとちゃんとその都市の情報が出てきた。
本当にありとあらゆる情報が見えるんだな、この能力。
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名前:リースィ都市
治安:良い
備考:海沿いにある都市で、海路、陸路、空路が確保されている。名産は新鮮な魚。
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今のこの場所から海には出れないため陸路と空路が使えそうか。
それにしても空路ってなんなんだ?俺は空は飛べないぞ?
というわけでもう少しこの街を探索してみることにする。
案内所のようなものがあればそれを探すのも手だったが、面倒だったので道行く人に尋ねてみた。
「すみません、ここからリースィまで行ける陸路か空路ってありますか?」
「旅の人かい?私でよければ案内してあげるよ。丁度私もリースィまで行こうと思ってたからね」
当然、「能力視」でリースィへ向かおうとしていた人に声をかけたわけだ。
そんなこともつゆ知らず、赤髪の女性……ルキは偶然だと思い案内してくれるわけだ。
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