第41話 松川くんの事情4

悠人のことも気がかりだったが、俺は斎藤のことも気になっていた。斎藤とは、俺の友人である鈴木をいじめていたやつだ。いじめが解決してから1人になったあいつに俺は何ができたんだろうか…。




今から数日前…


「斎藤」

俺は斎藤に声をかけた。


「斎藤、殴って悪かった。ずっと言えないでいて悪かった。俺は鈴木を、友達をいじめたお前を許せないかもしれない。それでも、斎藤に辛い思いしてほしいわけではない」

いじめを止めた時、必死だった俺はあいつを殴ってしまった。それを謝りたかった。そして、俺はいじめ自体も、いじめをしたやつも許せるような人間ではなかったが、斎藤の寂しそうな姿を見て、声をかけずにはいられなかった。


「鈴木に謝ってくれないか? お前のためでもいい。クラスでみんな仲良くなれる方法な気がするんだ。だめか?」

斎藤が仲間に戻るには鈴木に謝る必要があると思った俺は、斎藤にそう頼んだ。でも。


「殴られたのなんて気にしてねぇ。あいつにも悪かったって気持ちはある。でも、謝らない。俺は1人でいい」

斎藤は強がっているのか、本心なのか、1人でいることを選んで、俺に背を向けた。



その後、鈴木に斎藤と話したことを告げると、鈴木は自分をいじめた斎藤の気持ちをしっかり考えて、あくまでも推測だけど、考えを教えてくれた。その日は、俺ももっと考えようと思いつつ、悠人と遊ぶ日だったため、公園に向かった。



斎藤と話をした次の日、斎藤は学校を休み、俺は担任に相談しに行った。担任も悩んでいる様子で、皆で考えていかなければならないことなのだと思った。ただ、俺以外にも悩んでいる人がいるとわかって安心した。斎藤は1人じゃないと思えた。



斎藤のことも気になるが、斎藤を思って行動してくれる人はまだたくさんいると思えた。


俺はまず悠人を助けてやらないといけないと思う。




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