第39話 松川くんの事情2

 学校を休む日はよくカフェに行った。父に心配をかけると悪いので制服を着て出かけ、途中で着替えてカフェに行った。たまにカフェの近くの公園でぽよりん繋がりで前からたまに遊んでいた男の子と会っていた。悠人だ。悠人は小さい頃の弟に似ていた。とてもかわいらしくて、俺の話を楽しそうに聞いたり、無邪気に笑ったりした。悠人に初めて会った日はテストがうまくいかなかった帰りだった。いつものように元気を出そうとカフェに行く途中でぽよりんをカバンにつけた悠人に出会った。公園に向かうのだろうと微笑ましく見ていると少しつまずいて転んでしまった。とっさに“大丈夫か!”と声をかけると“えへへ、大丈夫ー!”と笑った。その笑顔が弟を思い出させたのだ。少し怪我をしていたので手当てをしてあげた。ぽよりんが好きなのかと聞くともぐらがかわいいと言って、ぽよりんを知らないようだった。そんな風に好きになることもあるのだと俺は笑った。

 ぽよりんは小さいときに読んでいた漫画のキャラクターだ。最近ひょんなことからアニメ化して久しぶりにハマっている。そこでぽよりんの話を悠人にしてやると、すごく喜んだ。弟と遊んでいるような気分になって、俺は嬉しくなった。公園にはよく1人で遊びに来るようで何度か一緒に遊んだ。ぽよりんの話をすることが多かったけどな。ある日悠人が公園の水道で水遊びをするとすごくはしゃいでいた。プールに行ったことがないと言う。不思議に思ったが、そんなに気にならず一緒にプールに行こうかと話した。お母さんに相談してみることになったが、後日プールはダメだったと聞かされた。そして、俺と会っちゃダメだと言われたと聞いた。そりゃ見ず知らずの高校生と遊んでいたら危ないと思うだろうと感じて“内緒で会おうか”と子供が喜びそうな理由をつけて会うことにした。ちょっと悪いことをしている気分だった。

 高校を休んでカフェにいた帰りもたまに公園で悠人を見かけた。“あ、お兄ちゃん!”と言って駆け寄る悠人は本当に弟のようでとてもかわいかった。ある日、悠人がたくさん汗をかいていたので拭いてやった。暑い日だったので俺も汗をかいていたが、しっかりとした下着を着ていることに気づいた。俺は何気なく“暑そうだな〜”と下着をパタパタめくった。すると、痣が見えた。悠人は“やめて!”といつもとは違った雰囲気で言う。俺はもしかしたら悠人は虐待を受けているのではないかと考えた。それでも、悠人は赤の他人だし、嫌がることをして会えなくなる可能性もあると思い、“ごめん、ごめん! よし、汗拭けたから遊ぶぞ”と言ってごまかした。家に帰ってからも悠人の痣が気になって仕方なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る