第10話 斎藤の葛藤とはるの空回り

 クラスの奴らの視線が痛い。俺だって悪いことをしたってことくらいわかってる。謝って、仲良くしてくれってみんなに言えば、また仲良くなれるかもしれない。でも、謝ってもダメだったらどうしたらいいんだよ。それより、これまで誰からも愛される俺のポジションを守ってきたのに、あんな地味なやつに謝るなんて負けた気がする。このまま一匹狼スタイルで行くのも悪くはないかもしれないな。


「斎藤」

なんだ?こんな俺に話しかけてくれる…はる?

「斎藤、殴って悪かった。ずっと言えないでいて悪かった。俺は鈴木を、友達をいじめたお前を許せないかもしれない。それでも、斎藤に辛い思いしてほしいわけではない」

なんだよ、こいつ。いい奴すぎだろ。

「鈴木に謝ってくれないか? お前のためでもいい。クラスでみんな仲良くなれる方法な気がするんだ。だめか?」

結局、鈴木かよ。あんなののどこがいいのか俺にはわかんねぇ。

「殴られたのなんて気にしてねぇ。あいつにも悪かったって気持ちはある。でも、謝らない。俺は1人でいい」

その後、背を向けて歩く俺にはるは何か言っていたが、知らねぇよ。俺は1人で生きていけるんだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る