いくつもの世界

 あなたの体や記憶は頻繁に他の世界に移動しています。

 その認識のずれは非常に小さいものなので、気づかないことがほとんどです。

 もし気づいたとしても、人の記憶は不完全なものなので、気にもしません。

 自分の記憶を改竄して、勝手に納得して、そのまま一日を終えます。



 逆に言えば、これは気にしてもどうしようもないものなのです。

 もしあなたの記憶が周囲と食い違っていても、だからと言って、あなたが正しくなることはありえません。

 なぜなら、この世界ではそうなっていて、それこそが真実なのですから。

 あがいても苦しみが増すだけです。何も救われません。



 恐ろしいと言うのは、そういう意味です。

 あなたはいつの間にか、昨日までとよく似た少し違う世界に、何の疑問も抱くことなく順応しているのです。

 そして元の世界に帰る方法はありません。

 もしかしたらあるかも知れませんが、少なくとも私は知りません。それで良いと思っていますし、困ってもいません。

 ただ違和感を抱き続けながら生きるというだけです。



 時間だけがすべてを解決します。時間の経過で違和感は風化します。

 いつまでも自分の中だけの正しさや過去にとらわれないことです。それは苦しみを生むだけで、何も解決しません。

 もし現実とあなたの記憶が食い違いを起こした時には、このことを思い出してください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る