どうして食い違うのか

 あなたの記憶は確かなものではありません。いえ、あなただけでなく、本当は誰の記憶も確かではないのです。

 ただそこに何となく本当のような話があり、何となく信じているだけなのです。



 唯一確かなものは記録です。

 文字でも絵でも写真でも映像でも音声でも、そこに残ったものだけが真実です。

 それ以外のものを信じないでください。



 なぜ食い違うのか?

 それは記憶が改竄されているからです。

 人には都合の悪いものを忘れて、自分にとって都合のよいものに置き換える性質があります。

 大なり小なり、人にはその傾向があります。過去を美化するのも、その一種です。

 ひどい人になると、記憶障害や人格障害と呼ばれるものになります。



 しかし、中にはそうでない記憶もあります。

 あなたにとっても他人にとっても、あまり得でもなければ損でもないような記憶。どうでもいいような記憶でさえ、時には大きく間違っています。

 どうでもいいから間違っているのだという意見もありましょうが、まずは最後まで聞いてください。



 これは個人的な体験上の話ですが、記憶違いは時間の経過と比例します。五年以上が経過すると、その記憶はかなり怪しいものになります。

 数分前や一時間前でも、間違っている時は間違っているので、必ず昔のことだとは限りませんが。

 とても印象に残っていて、はっきり記憶したはずなのに、間違っていることもあります。

 うっかり屋だとか、ど忘れだとか、そういう話ではないのです。

 本当は誰もがそういう体験をしているのです。しかし、それを記憶していないか、記憶を改竄しているだけなのです。



 あなたの記憶は他人の干渉を受けて、大きく変化しています。

 他人との交流や衝突の中で、あなたの記憶はどんどん歪んでいき、「現実」に即したものに改変されていきます。

 それは恐ろしいことでも何でもありません。むしろ、ごく自然で普通のことなのです。



 記憶はあいまいなもので、他人との交流で現実に合ったものに修正される。多くの人は修正を自然に受け入れている。

 何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれません。



 では、ここであなたに一つの疑問を投げかけましょう。

 本当にあなたの記憶が間違っているのだと思いますか?

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