歌色

葉月 涼

1人の話

私は、歌が本当に大好きなんだ

偶然、広くひろがる高音と静かに響く低音、自分の心に応じて変わる音色を持っていたから


でもね、私にはそれ以外に優れるところは1つも無い

悲しくなってしまうほどに何も無い


歌の代わりに友人もいない

歌の代わりに知識もない

歌の代わりに愛されることを失った


それでも、歌は、私に


感情を教えてくれた

自分だけだと知ることの無い感情を


孤独を孤独でないと思う力をくれた

歌の中では私は1人じゃなかった


音に色を付ける方法を教えてくれた

一つ一つの言葉に思いをのせて伝えるということを


歌詞という言葉の羅列から思いを読み取る力をくれた

感情と音を合わせて歌える楽しさを知った


私には結局歌しか無かった

他のことを自ら拒絶してしまったから


今日も私は音の溢れる世界に溺れる


いつか誰かの世界に虹をかけることを望みながら

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歌色 葉月 涼 @kiminokoe

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