第13話 なんかおかしい…。
そう思い始めたのは勤続5年を過ぎた頃からだった。
われながら鈍いと思う…。賢い人たちはとっくに新たな道を歩みだしたというのに、私はのほほんとその日暮らしを楽しんでいた。薄々気が付いていたのかもしれないけど行動に移さなかったのなら気が付いていないのと一緒だった。
私は丸々5年間、ピエロとしてスナックサーカスにへばりついていた。
私を真っすぐ評価してくれる温かい人々に支えられて、半ば天狗になった私にまさかスポットライトがあたるなんて思わなかった。
で、そうなると気にくわない人もでてくる。なんでこの出っ歯アヤコがそんなにいい思いをしてるのか?なんでいいお客さんからお呼びがかかるのか?みんなからの視線が痛い。
あぁ…この…感じ…。中学校の時のアレに似てる…。今までノーマークだった地味子がちょっと目立った事すると急に邪魔者扱いされる感じ…!!中二のあの感じ!!
そこから店内には味方と呼べる人はいなくなっていた。
うーちゃかもママと喧嘩して辞めてしまっていた。仲が良かったクミちゃんもクビになっていた。二人のクビになる理由わからないではないが、色々考えてみても要はママが好きかそうじゃないかで判断されてしまったんじゃないかなと今でも思う。
私はなんでクビにならなかったかというと、ママの右腕モモコさんが面接してくれて目をかけてくれていたからだ。しかし私はその時モモコさんの自由すぎる営業スタイルに中々ついていけずなんとなく心が離れてしまっていたし、それに気が付いたモモコさんも以前よりそっけなくなっていた。
そんな庇護が無くなってしまった私は孤立状態だったのだけど、助けてくれたのはお客さんたちだった。モモコさんもママにも信頼の厚いお客様たちがバリアになってくれた。
今まで能天気にやってこれた事がどんどん歯車が狂ってできなくなっていく。信頼してきた人のいう事が信じられなくなっていく。
でも、変わってしまったのは周りじゃなくて私なんじゃないか?スタッフからささやかれる陰口も、全部本当の事で私が全部いけないんじゃないか。
もやもやと負の感情が内から浸食してくる。
頭がパッカーンとなるまでそう時間はかからなかった。
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