第12話 モテモテのもて期。



 




 

 いまだから言おう。モテモテだったと。


小さな小さな界隈の話だが、勤続5年目の私はとにかくモテた。

むろん上野界隈だけの、いや私が働いていたお店界隈のものすごく小さな界隈で私はモテにモテまくった。


№1のお姉さんが結婚を機に6割り近いお客さんを私に譲ってくれた。

(他の4割はお姉さんガチ恋勢だったと思う)


ほか、自力で得た顧客の皆様。うーちゃかを始めとした他店での広がり。


そういったラッキーと、繋がった人脈がその時の私を形成していた。


ようやく一人前のキャストになれた。


……まぁこのとんでもない思い違いがその後いろいろと教訓になりますが…この時はそう信じて疑わなかった。


我が人生においてここまで調子に乗れることは今後無いと思いたい。


調子こいて周りが見えない期である。


異臭を放つ出っ歯女が、優しき他人に甘やかされるとここまで調子に乗ってしまうんである。


だから私は今でも調子こいてるやつを見ると、周りが優しすぎて自称不幸せな人と、優しいと思ったその実、他人に興味のない狡猾な他人に転がされてる幸せな人が点在してると思っている。


私は恐らく…根がポジティブなので前者だと思って生きている。


 この調子乗り期が、これまた№1不在のやや低迷してしまったお店においてはちょうど良く作用した。


開いた穴はでかいが、優秀なキャストとお調子者がその穴を見事埋めてしまった時期が続いてしまったのだ。



私はようやく社会の一員になれたつもりだった。親にもうお金を払ってもらわなくても。なんなら月々決まったお金を渡せるくらいになった。


親もここまで続けて稼げるようになった私を、不安げながらも以前よりは暖かい眼差しで見てくれていた。だって頭臭くないし。お金もあるし。


私は盛大に勘違いしていたのだ。

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