第11話 出会いその2。
爆笑問題の田中似のチーフ、以下チーフうーちゃかに連れられて来た九州出身のマスターのお店に私はすっかりはまってしまった。
チーフうーちゃかはやっぱり飲み仲間が欲しかったみたいで週末、ほぼほぼ私をマスターのお店に連れて行ってくれた。
マスターは笑顔が素敵で、昔のボードビルの俳優さんを思わせるような細身で筋肉質のスタイルのいい男性だった。いつも笑顔で迎えてくれた。同業者の女の子からはどれだけ飲んでも三千円しかとらないような粋な九州男児だった。
お店の客層は男性も女性もほぼ半々。やや男性が多いくらい。マスターの漢気に惚れた男女がひしめき合う繁盛店だ。
今思い返しても、恥ずかしくなるほど酔っぱらってお店にいっても、優しく優しく出迎えてくれた。
うーちゃかとマスターは旧知の仲で、お互い若かりし頃上野で奮闘した同世代の仲間だった。
「さんざん飲まされて、店の床に寝てそのまま、また仕事したなー。」とか、「あそこの女の子はもう辞めて自分で店を開いたみたいだよ。」とか、二人の少し開いた時間を埋めるように話していた。
私はそんな二人のやりとりを聞いているだけで新鮮で楽しかったし、たまに見兼ねた美人のお姉さんがかまってくれるのも嬉しかった。
あぁ、この街にはたくさんの人がいて、たくさんのお店があって、そこにたくさんのドラマがあるんだなぁ、とひたすら呑気にこの状況に浸っていた。
そこから、色んな人にたくさんのお店を紹介してもらって、たくさんの人に出会った。
でも、この時、うーちゃかチーフにここに連れてきてもらわなければ、私の人生は半分以下につまんないことになってたな、と思う。
知り合いのお店にふらっと行ったり、気になったらとりあえず勇気をもって入ってみたり。それでおもしろい人に出会えたり、おもいっくそぼったくられたり。
それが全部、自分の糧になる。
自分でお金を払うからこそ、お客様の気持ちがわかる。
私が働いているお店が大学だとしたら、他のお店は課外授業であり、留学だったんだな。
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