第9話 またも脱線。



 私がおちゃらけた性格なのは生まれつきだろうが、なんとなく生きていく上で、私がおちゃらけて周りの人が笑ってくれるのが好きなんだ、と思ったきっかけがある。

別に親からおちゃらけて生きなさいと言われたわけでもないし、特別ヘンテコな家庭環境に生まれ育ったわけでもない。


3歳までは家の中だけが世界。でも幼稚園に入園すると一気に社会と関わらなければいけなくなる。


幼いながら、同じチューリップ組にいる子でもあの子の方が頭がいいとか、かけっこが速い、見た目がイケてるとか自分と他人を比較するようになる。


今までは自分が世界で一番だと思っていたのに、他者との繋がりが生まれることで自分の価値を推し量るようになってしまった。



4歳の私は悩んだ。このままだと楽しくないぞ。自分より優れた人はたくさんいるのはわかった。でも私は目立つ子の周りにいるその他大勢でいいのか?私だってみんなに認められたい。



その時、ふと昨日家で観たドリフの大爆笑を思い出した。


推しメンは仲本工事さんだったが、カトちゃんけんちゃんはもう当たり前に面白かった。私はよく変なおじさんの真似をして家族の笑いをとっていた。お父さんとお兄ちゃんはゲラゲラ。お母さんはやめなさいと言いつつも、ちびな私があのおじさんの奇妙な動きをしてたら笑っちゃってた。これだ!


翌朝、チューリップ組に入ると同時に、変なおじさんをかまして登場してみた。その頃はまだあの動きを完全にマスターしているクラスメイトなどいなかった。私とっくに完コピ済みだ。

みんな最初はあっけにとられていたが瞬間、爆笑に変わった。


それ以来私は登園と共に変なおじさんをかまし、クラスのおちゃらけ担当としての絶対的地位を勝ち得たのだった!


キッズはまだ単純だから、面白い事は何度繰り返しても面白い。お絵描きの時間も、お遊戯の時間も、先生の絵本の読み聞かせの時間も、みんな隙あらば私に変おじをリクエストしてくる。期待に応える私。爆笑するクラスメイト。気が付けばスクールカースト上位の男女も私のお友達だ。


運動神経も勉強も見た目も、中の下の私は幼稚園内ただ一つのポジションを獲得し、毎日がハッピーだった。


毎週土曜日の半ドン、お母さんは近くの生協でケンちゃんラーメンを買ってくれた。

お母さんは私の園内での立場など知る由もないのだけど、セーラムーンとドリフを同じ熱量で愛でる私になんの違和感も持っていなかった。


そうです、私は変なおじさんです



それから30年経っても、私は私の好きな人たちが笑ってくれるなら変なおじさんwを喜んでやってしまう。


そんなおちゃらけた性格も、いまでは人生の一部だ。

友達もできたし、スナックでも働くことができたし、今もなんとか健康でいる。


出会ってきたすべての人、事象があるから今の私は私でいられることに感謝。


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