第28話 ほんとうにつかれたらひとりになろう
ジュンは基本あとくされのない性格なのだが、さすがにショッピング・モールのフード・コートで遭遇したストーカーまがいのエキセントリックな男に罵倒されたことがショックで、そのショックは後を引いた。
だからひとりになろうと思った。
帰り道は街のにぎやかな大通りを歩いて帰った。
ひとりになりたいという気持ちと矛盾するように思われるかもしれないが、どんな人混みの中に居ようが、どんなに大勢の友達と一緒に居ようが、家族と居ようが・・・人間はひとりぼっちだし、ひとりになることができる。
日が長いので夕凪の時間帯にあっても太陽の光がジュンの横顔を照らしている。
ただ、斜めから差し込む光が彼女の影を身長の倍以上、もしかしたら三倍ぐらいに引き伸ばして、ジュンはその影の動きを楽しむ。
ジュン自身はいじめに遭ったことはないが、それでも友達と少し気まずくなって自分がマイノリティの側に追いやられそうになった経験は何度かあった。
その度に同じように日曜の午後遅い時間を今と同じような気分で過ごしていたことを思い出す。
「わたしはひとりぼっち。寂しくはないさ。だって人は基本ひとりぼっち」
ふふ、と何か新しい歌を作り上げたような高揚感に駆られてジュンは歩くスピードを緩めた。
いつの間にか立ち止まる、ビルの真下。
「えっ・・・えっ・・・えっ・・・」
我慢しきれない声を押し殺して、顔を真上に上げて、ジュンは泣く。
家へ帰ろうとしている人や、誰かと一緒に食事に向かう人たちが大勢ジュンの横を通り過ぎるけれども。
ジュンは、ひとりぼっち。
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