元闇の者達は更生プログラムを受けた末に働く

翌日の明け方、闇の職人、闇の武闘家に加えて、闇の魔法使い、闇の傭兵、闇の盗賊ギルドも組織丸ごと指名手配された事が、新聞などでゴールデンジューシー大陸中に報道された。

さらには、それら闇の者達の活動には魔物の王「魔王」や邪神教徒の関与が疑われる事もささやかれたが、これについては明確な真偽はまだわからない。

それからの冒険者達は、魔物討伐の他、それら闇の者達に限らず、人間の犯罪者を逮捕していく日々に追われる。

ある日、クルスは冒険者に捕らえられた末に騎士団に連行されていく闇の傭兵数名を眺めてこうつぶやいたという。

「彼らはこれから先の人生、どうなるんでしょう…白い目で見られる事も避けられないでしょうし…」と。

更生プログラムを受けて収容所を出た後の闇の者達や犯罪者達のその後は実に様々である。

真っ当な冒険者や傭兵になる者。

職に手を付ける者。

故郷で仕事を探す者。

アップルR-12よりもさらに大きな町に向かって仕事を探す者。

しかし、いずれも周りの世間からの目は厳しく、中々うまくいかないケースも多いようだ。

そんな事実を知ったエアル達はこんな会話をしたことがある。

「これでは、ダメだな…」

サムソンが呟いた。

「そうだね…あやまちを犯した事を理由に拒絶されれば、さらなるあやまちを犯し続けるだけだもの…」

スズネも自身とてどれだけ苦労した事かと振り返る。

「真っ当に働けているだけ幸せで無害だよ。」

ドロシーがいかった口調で言い放つ。

「ドロシーの言う通りだよ。一度収容所を出て、また犯罪犯して収容所に戻るという、犯罪者の再犯率は二割強。更生プログラムの末に傭兵魔術師になったクリス兄は少なくとも今のところは何とか再犯を犯さないでいるみたいだけれど。」

エリスがやるせなさそうにドロシーの言葉を肯定する。

「この現状を何とかする為に俺達に出来る事から始めないと…」

エアルは決意した。そして、それは他のくれない林檎亭りんごていの冒険者達とて同じ気持ちだった。

クルスの仲間であった孤児達に加えて、元闇の者達の給仕が紅の林檎亭で働くようになり、ローゼンの元では更生プログラムを受けた闇の職人であった者達が何十人かがローゼンの内弟子兼スタッフとして働くようになった。

それが決まったときローゼンは感極まったのか、エアル達の前で涙を流しながらこう零したという

「とうとう、俺も師匠の立場になったよ…ピオニー師匠…」

そんなローゼンの呟きを聞いたエアル達にはローゼンの師匠の名前にすごく心当たりがあった。

「ピオニー・イフリートスミス!?それって、あの伝説の鍛冶師か!?」

エアルはローゼンの師匠が誰なのか知って驚いた。

「間違いない!!昔、あたしの故郷の村を訪れた鍛冶師だよ!」

ドロシーはこの奇縁に感謝した。

「私も、教会の御堂騎士団に武器を提供してくれていたので、お母さまを通して会った事はありましたが…」

マーシャは神の導きかのような縁を感じた。

「まあ、そのうち、エアルやエリスも会えるよ。」

ローゼンは励ましているのか、からかっているのかわからない感じでエアル達に言った。

ヴェルデーアの方も、闇の盗賊ギルドによる麻薬製造に関わっていた薬剤師を何人か自身の内弟子兼店のスタッフとして迎え入れたという。

こういう動きもある事実がエアル達としても救いだった。

「薬の注文が追い付いていないんだ。だから、ここで人手を増やせたのは本当にありがたいよ」

ヴェルデーアはそうエアル達に呟いたという。

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