男の娘は女性と誤認される

それから、エアルとマーシャは「ある事について」色々と質問をした。その後、カインと話し終えた際に「ある物」を受け取り、防音室を出たエアルとマーシャ。カインは反対側から防音室を出た筈だ。そこには、女物の私服姿のクルスが待っていた。

「あの…エアルさん、マーシャさん…」

「クルス…待っていたのか、良かった丁度いい。」

エアルはカインから受け取っていたものを見せた。

それは書類で、内容としては、エアル・ヒートフェンリルを保護責任者、マーシャ・アクアウイングを後見人として、クルス・を引き取るという内容の物だった。

エアル、マーシャ、クルスの顔写真のカラーコピーも書類には載っている。

「あ…という事は…」

クルスはエアルの意図に気づいた。

「これからは、クルスにも苗字があった方が便利だろうし…何より、昔から仲間だった孤児や貧民の事を思って無茶をしないか心配なんだ。」

エアルは優しく語りかける。

「そうですか…」

クルスは何処か嬉しそうに答える。

「あ…でも」

マーシャが書類を改めてみて気づく。

「クルス・ヒートフェンリルの戸籍の性別のところが…『Female』…『女性』になっていますよ!?」

「「!!」」

後でカインに問い合わせて知った事だが、クルスは実家から廃嫡された元貴族の両親から産まれ、今までスラム街の孤児だった為、他の孤児達や貧民達共々戸籍登録が今までされていなかった。

この手の保護責任や戸籍管理担当の職員が、エアルが撮って送ったクルスの写真の外見を見て男の娘だとは思わず、戸籍を女性として登録してしまったらしい。


すったもんだの末に、クルスはエアルとマーシャが保護者となった。

そして、その夜からはエアル、マーシャ、クルスの3人は保護者という関係になった都合上、相部屋で寝る事になっていた。

「エアルさん、マーシャさん。こちらからも、それからの事を話していいですか?」

もうベッドの布団の中に入っている3人だったが、クルスが語りかけた。

「ああ、いいよ」

エアルは優しく答える。

「カイン国王はスラム街の人々に仕事を凱旋してくれました。」

土木建築、農業、林業、鉱業、漁業、清掃業…様々な仕事が貧民達に紹介された。

そういう人々に冒険者も国も支えられているのだから。

「一番人数が多いのは土木建築ですね。まず、スラム街の建物はある程度原型が残っているものは改修して、人が住める長屋にするそうです。それ以外は取り壊して新しい建物を建てるらしいです。」

「そうですか…」

マーシャは安堵した表情でクルスに語り掛ける。

「じゃあ、もうお休み。クルス。」

そう語り掛けるエアル。明かりを消して、すやすやと眠るクルス。

「なんだか…子供が出来たみたいですね。エアルさん。」

「そうだな…マーシャ…」

でも、エアルがマーシャの本当の気持ちに気づくのは、まだまだ先の事…。

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