国王は領主一家の今後を説明する

それから、しばらくの間、アップルR-12の町は大きな混乱こそなかったが、てんやわんやだった。

エアルとマーシャの2人だけは紅の林檎亭の防音室でカイン国王と少しの間、話す機会を与えられた。

「新しい領主は厳正に審査して選ぶ。ラファエロのように、あるいはそれ以上にろくでもない人物だったら同じ失敗をした事になって責任問題になるしね。」

カインは2人にそう説明した。

「あの…お聞きしたい事が…」

「なんだい?」

マーシャの質問にカインは答える姿勢を見せた。

「お母さまが国王様に知らせてくれたという事は…もしかして、昔、国王様はお母様と何か関係が?」

「まあ、昔、少しね。」

カインはそれだけ答える。

「俺…私からも質問良いですか?」

エアルも質問をしようとする。

「ああ、そんなかしこまらなくていいから。自然体でどうぞ。」

カインはエアルの質問を聞く姿勢を見せた。

「元領主一家はこの先どうなります?」

それを聞いて、カインは顔をしかめる。

「まず、ラファエロはおそらく、行為と年齢的な問題から更生の余地なしとして、一生を牢で過ごす事になるだろう。」

「え!?」

マーシャは激しく動揺する。

「強姦や食料独占の他、渡された証拠の中には、麻薬原料植物の違法栽培、人身売買などの犯罪を行っていたという内容の物が確認できた。さらには闇の職人、闇の武闘家、闇の魔法使い、闇の傭兵、闇の盗賊ギルドにスポンサーとして加担していた事実も確認できた。」

カインはやるせなさそうに、しかし厳しい口調で言う。

「しかも、麻薬はラファエロ自身も使っていたらしく…禁断症状で後、数か月ほどの命だそうだ。アルガスとターニャはそんな事は知らなかったし、使ってもいなかったようだが。」

「…ッ!!」

カインのその言葉を聞いたマーシャはエアルの腕に強く縋りつく。

「マーシャ…!?」

「なんでですか…!!何で更生の余地なしなんですか…!?」

動揺するエアル、顔を真っ青にし慟哭し嘆くマーシャ。

「すまない…これはショッキング過ぎたね…。」

カインは申し訳なさそうに言う。

「う…うう…っ…!!」

「落ち着いて…マーシャ……っ!?」

エアルはマーシャを落ち着かせようとして肩をさすろうとして、うっかりに手がもろに触れてしまった。

そして、エアルは思ったよりもマーシャが小柄こがら体躯たいくに見合わない豊満ほうまん身体スタイルをしている事に今更いまさらながら初めて気づいた。

咄嗟とっさに大きな胸から手をはなすエアルだが、すぐマーシャがさらに縋り付いてきて、今度はエアルの身体の側面に胸が当たってしまう。

(へーえ、彼女、相当にエアルの事が好きなんだねー)

そんな様子を見ていて色々察したカイン。

「あ…あの…アルガスとターニャ、そしてジニス以下腐敗に加担していた騎士達や私兵達はこれからどうなるんですかっ!?」

エアルはマーシャが身体を擦り付けてくるのを何とかごまかそうとカインに質問する。

「彼らはおそらく更生プログラムを受ける事になる。幸か不幸か、直前に生々しく被害者からの恨みや憎しみを突き付けられたもんだから、嫌でも自分がしてきた事の意味を知ってしまう事になったもんだからねー。」

「そ…そうですか…」

「え…?」

それを聞いたマーシャは一瞬落ち着きを取り戻す。

「良かった…良かったですぅ…あの人達だけでも…やり直す機会を与えられて…本当に…」

泣きながらエアルに縋りつくマーシャ、しかし、その表情は笑顔だった。

「あ…ああ…そうだな…」

エアルはマーシャの、今は長い金髪に覆われた頭を撫でる。

しかし、マーシャの大きな胸がまだ体に当たっていて、ちょっと恥ずかしい気持ちもあった。

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