領主の子の兄妹は横暴に振舞う
エアル達がクルスから話を聞いていた頃、サムソンとスズネは食料運搬の依頼主であるアップルR-12の領主に関する話を聞こうと考えて、街の人通りの多い場所で聞き込みをしていた。
そこで2人が聞いた話はとても穏やかなものではなかった。
「あの、デブでバカな兄妹を溺愛している領主かい!?あいつは、自分の子供を肥え太らせる為だけに、食べ物をよその街から輸入しているんだよ!!」
「領主の依頼を受けた冒険者が食べ物を運んできても、あのデブでバカな兄妹の腹に収まるだけだ!!」
サムソンとスズネは口々に言い放たれる人々の領主の評判に驚いた。
「ここまで、評判の悪い領主だったとは…」
「サムソン、あたし、何か怖い。ここまで評判が悪い領主の治める街に住んでいるなんて…」
スズネはおびえたような様子でサムソンに語り掛ける。
「大丈夫だよ、スズネ。僕がついている。」
そんな事を2人は話している時こそが、噂をすればというものだった。
その時、人だかりから「キャー」と女の悲鳴が聞こえた。
サムソンとスズネが何事かと悲鳴がした方の人だかりに向かうと、きらびやかな服装をした丸々と太った巨漢と、豪華なドレスに身を包んだ化粧の濃い丸々太った女が食べ物屋の屋台の店員の若い女に絡んでいた。
「や…やめてください…みんなの分がなくなります!!」
若い女はそう訴えるが、
「金は出す、この店の食べ物全部私達で美味しくいただく」
「今度も美味しそうですわね、お兄様」
太った巨漢と太った女がそう言うと、兵士の格好をした男達が屋台を囲んでいた人だかりを追い払った。
「何なの、あいつら…!!」
「横暴な…!!」
サムソンとスズネも、助けたいと思うも兵士に阻まれもはや手出しできない。
そして、太った兄妹は屋台の食べ物を食い尽くすと、銀貨袋を置いてその場を去った。立ち去り際にサムソンとスズネの方を見ながら。
サムソンとスズネは、店員の若い女に駆け寄るが、女は何も言わない。
スズネはふと、太った兄妹が置いて行った銀貨袋に目が留まり、手に取った。
(袋に割と重量感が無い…たぶん、店が定めた金額に届いていない…)
サムソンは怒りに震えていた。
スズネはやるせなくなっていた。
そして、2人は察していた。あの兄妹は自分達2人が反抗的な目を向けていた事にあの太った領主兄妹は気づいていると…。
その後、サムソンとスズネはエアル達に合流して、領主の評判と全ての事情を話した。
「なんだと…!?」
エアルは驚きを隠せなかった。
「すべてが私利私欲による依頼だったなんて…」
ドロシーも悲しかった。
「合流する道中で聞いた話だけれど、あの領主の子の兄妹のそういう横暴は以前から続いていて、月の何度か、女の人があの領主の屋敷に連れ込まれて、兄の方に酷いことをされているらしい。」
エリスはやり切れない様子で話した。
「酷いです…こんな…お父さんの領主は何をしているんですか!?自分の子供達がこんな横暴をしているのに!?」
マーシャも眼に涙を浮かべた。
「残念だけれど、領主はあの兄妹を溺愛していて、罪を咎める処か揉み消しているのさ」
6人がその声がした方を振り向くと、孤児達のリーダーの少年、クルスがいた。
「僕自身も含めて、街の人達はみんな騎士団に訴えた事もあって、数回査察がおこ慣れたよ。でも、いずれも証拠はなしって結論だった。あいつらの証拠隠滅能力はかなりのものさ。後、噂話じゃあ、闇の武闘家と闇の職人とも関係を持っているとも聞いたねぇ」
嫌味のように淡々と語るクルスを見て、エアル達はクルスが自分達を追ってきていた事を察した。
「そのようだな、クルス。」
エアルはクルスに向き直ると、クルスに向かって歩みだす。
「あはは、だったら領主をどうする気?」
乾いた笑いを浮かべるクルスだが、次の瞬間、エアルに肩を掴まれる。
「え!?」
「まずは…君からなんとかしないとな…クルス!!」
驚くクルスにそう言い放ったエアルはマーシャ達に向き直る。
「ひとまず、ヴェルデ―アの店に向かうぞ、あそこならきっと…」
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