紅の林檎亭に新たな冒険者がやってくる

それから数日後、オレンジG-07郊外の山中にて

依頼を受けた逮捕に向かったエアル達4人と、待ち構えていた闇の武闘家の軍団との戦闘が繰り広げられていたが…もはや、もう勝負は決まっていた。


「ひいい!こいつら、強えぞ!」

闇の武闘家の1人が勝ち目が無いと確信して逃げ出そうとするが、そこにエアルが立ちはだかり、すかさず足払いをかけて転ばした。

そこに呪文を唱えていたサムソンの手のひらから放たれた、蜘蛛の糸で逃げ出そうとした闇の武闘家は捕らえられる。


「こっちは片付いたぞ、スズネ、マーシャ」

エアルが向こう側からやってきたスズネとマーシャにそう語り掛ける。

「すいません、何人かは逃げ出したようです」

「だが、当分は闇の武闘家は誰もここに戻ってくる事はないだろう」

謝るマーシャにエアルはそう答える。


「それよりも…」

スズネは他の3人に気絶して倒れている闇の武闘家の武闘着の襟をめくって見せる。

「たぶん、こいつらが身に着けているのも…闇の職人が作ったものだよ。エアルや他の冒険者達がローゼンに渡した物と、細かい意匠が似ている」

「やっぱり、グルってことか…」

エアルは同じの名を冠する事から悪の武闘家達と悪の武具職人達が薄々、何かつながりがあると気づいていた。


それから、闇の武闘家達を捕らえて紅の林檎亭に戻ったエアル達は闇の武闘家と闇の職人に関係性がある可能性を告発し、逮捕した闇の武闘家達を尋問して関係性を洗い出し、もし自分達が至った可能性が事実であれば、闇の職人を流派ごと指名手配するよう強く訴えた。

エアル達が捕らえた闇の武闘家達はあっさりと吐き、闇の職人達は指名手配となった。


そして、その次の日のアップルR-12の都市国家政府直営の新聞では、闇の武闘家と闇の職人のメンバー達は全て、最低危険度ローエスト・リスクCランク指定とされ、殺しても減額される懸賞金は2割となる事が発表された。

「Fランクでは人間やデミヒューマンの犯罪者は殺したら懸賞金無しだけれど…Dランクでは3割減、Bランクなら1割減、AランクとSランクでは…生死不問デッドオアアライブ…!!」

それを知ったマーシャは恐怖から思わず身震いした…。


国際法では、人間やデミヒューマンは全て「人類」に分類され、その中の犯罪者の確保に当たって殺人までは容認されておらず、確保した犯罪者が死亡していれば報奨金の支払額が減ってしまう。

最低値の危険度リスクFランクでは全く支払われない…だが、危険度リスクのランクが上がると減額割合は減り、危険度リスクAランク以上の場合、それが全く適応されず確保時に死んでいても構わない事になっている。

さらに、最高危険度リスクSランクの犯罪者は、それに加えてその犯罪者に与している者も危険度リスクに関係なく同様に確保時に死んでいても構わないという生死不問デッドオアアライブの法律が国際法で定められていた。


「どうしたんだよ!マーシャ!唇まで真っ青だぞ!!」

心配するエアルにマーシャは胸の内を打ち明ける。

「怖いんです、エアルさん!!闇の武闘家と闇の職人達に限らず、高ランクの犯罪者達は人生の再起を許されずに殺されてしまうのではないかと!!たった2割や1割の減額を軽いと考えて、悪を滅ぼす正義の陶酔とうすいや、悪への怒りに任せて殺してしまう冒険者や賞金稼ぎがいるのではないかと!!」

「マーシャ…」

「そんな命をなんとも思わない人が…人生の再起を許さない人が…殺してしまうんじゃないかって…!!」

「マーシャ…落ち着いて…」

泣き叫ぶマーシャをエアルは優しく抱き抱える。

「約束する…俺は目の前に死に急ごうとしている奴がいれば助けるし…人類を殺さずに済むのなら、殺したくない!!たとえ、危険度リスクAランク以上の犯罪者であっても!!」

「エアルさん…」

まだ泣いているマーシャは落ち着きつつあった…。

そんな様子を見ていたサムソンとスズネ…他の紅の林檎亭の冒険者達にも何か思う事はあった。


…たった4人を除いて。


「くだらない。罪を犯した者には、死あるのみだ」

「犯罪者を殺したら、報奨金が減らされるなんて、どうかしている」

そう言い放った女たちの声に、冒険者達とエアル達4人は振り向いた。

そこにいたのはいずれも誰も知っている顔じゃなかった…!!

今日、この街、この宿に来たばかりなのか…!?と誰もが思い浮かべた。


そこにいた4人は…赤い短髪に金の瞳の女戦士、ベリーショートの青い髪と紫の目をした杖を持った魔法使いらしき女、軽装の鎧に身をまとったボブカットの紫髪と赤い目が特徴的な長身の女、そして…4人組のリーダーらしき、金の瞳に丸刈りの女だ…。

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