幕間:冒険者の日常-剣士とその仲間達の薬草採取にて


ある日、丘の麓の森にて。


エアルとマーシャ、スズネ、サムソンはヴェルデ―アが出した薬草採取の依頼の最中に樹木の姿をした魔物達に取り囲まれていながらも、果敢に応戦していた。

エアルが剣を振り上げ、植物族の魔物トレントの身体を切り裂いていく。スズネも正拳突きや前蹴りでトレントを殴り倒し、薙ぎ払っていく。

もう少しで全滅という所で、後衛で魔法による援護を担当していたマーシャとサムソンへと背後から忍び寄って来たトレントの一匹が一気に突進し、枝に似た腕を振り上げたが…

「そこっ!」

そう叫んで、スズネに遊ばせていた左手で小さな片刃の斧をトレントの背中目掛けて投げつけられ、トレントは身体に切り傷を負った。

よろめくトレントへと、マーシャが長い杖を振り下ろしてトレントの身体を叩き割り、サムソンが短剣をトレントの急所目掛けて刺した。

そして、エアルが最後の一匹も切り倒して、ついにトレントは全滅した。


「すまない。前衛から攻めてくるトレント達ばかりに夢中になって…」

エアルが申し訳なさそうにマーシャとサムソンに謝ると、

「いえ、私達もエアルさんに守られてばかりでは申し訳ないですし、それに…」

マーシャはそこまで言うと、まだ右手に持っている長い杖を見つめて…

「ローゼンさんの腕なら、前衛が本職で無い私達や、武闘家であるスズネちゃんにも扱いやすい武器だって提供して貰えますし」

そう、マーシャの杖、サムソンの短剣、スズネの手斧もローゼンの作品。

ローゼンは今後の事も考えて、マーシャ達にも武器を用意する事をエアルに求めていた。

匪賊を倒して手に入れた闇の職人の武具や、採掘で手に入れた鉄や銅の鉱石、それらをエアル達は持ち寄り、マーシャ達の分の武器を作ってもらった。


「ローゼンは、俺達の為に『力』を与えることを決めた。でも、それに見合うだけ俺達も強くならなきゃいけない…」

エアルはそう呟いた。

「こんな森と丘じゃあ、炎の魔法でトレントを一気に焼き払おうとしたら、山火事になりかねないから、今回の僕はむしろ短剣での近接格闘の方が多かったと思うよ。」

エアルの言葉を聞いてサムソンは自分の今回の戦績を振り返った。


そんな重苦しい会話もほどほどに終わり、エアル達は目的のヴェルデ―アに頼まれた薬草を摘み取った。

4人は殆ど言葉を交わす事無く、次々と薬草を摘み取っていたが、もうすぐ作業が終わるという頃にサムソンがエアルに話しかけた。

「これ…僕とヴェルデ―アが作って、マーシャとスズネと一緒にヴェルデ―ア自身も飲んだ髪が長くなる薬の原料だ」

「それも、ヴェルデ―アが求めた数は、他の冒険者達も採りに行った分を含めて相当数…何のために必要になるんだろうな」

エアルはそれが少し気になった。

そんな頃、マーシャとスズネは少し気になっていた。

「少なくともここに生えているのだけでも私達の分だけではありませんよ。」

マーシャはうっすらとヴェルデ―アがこの薬草を何に使うのか気づいていた。

「ええ」(たぶん…あたしとかと同じ…)

スズネはこの薬草から作られる髪が生えたり長くなったりなる薬が何の為に使われるのか、確信していた。

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