鍛冶屋と薬屋は仕事が忙しくなる

その翌日、手ごろな依頼も無いのでエアルはこれ幸いと思い…。


「はっ!はっ!」


ローゼンに鋼の刀身が輝く長剣を作り出して貰ったエアルは、紅の林檎亭の庭で剣の素振りを繰り返していた。

(ローゼンの腕前はすごい…!材料になった闇の職人の武具でも素振りはしていたけれど…これはすごく手になじむ…!)


そんな事を思っていたエアルへと、マーシャはさらに伸びた金髪を揺らしながら駆け寄り話しかける。

「エアルさーん、頑張ってますねー」

「ああ、ありがとう」

ヴェルデ―アの薬でマーシャの金髪はもう腰に届くまでに長く伸びていた。

「その髪…すごく似合っているよ。それにとても可愛い」

「ふええ…ありがとうございます。」

マーシャは頬を赤らめながら、笑った。


そんな様子を遠くから見ていたのはサムソンと…髪が伸びて剃っていた所が無くなったスズネだ。

「見てばかりいないで、僕も魔法の練習をしないとね。しかし、君の自毛は黒じゃなかったんだね。」

そう言ってサムソンはスズネの方を見る。

スズネの頭からは辮髪と剃っていた所が消えて、亜麻色のセミロングの肩にかかる程の長髪になっていた。

「変…かな?闇の武闘家では黒染め強制だったんだけれど…」

スズネは心配そうに、サムソンに語り掛ける。

「そんな事ないよ、その色の髪のスズネが可愛いよ」

「!!」

落ち着いた笑顔のサムソンの言葉に、スズネの胸が高鳴る。


あれから、エアルはローゼンとヴェルデ―アの店の事を他の紅の林檎亭の冒険者達に教えた。

鉱物や不要な武具を持ち寄り、ローゼンに武器や防具を作ってもらった紅の林檎亭の冒険者達は装備が整い、依頼の成功率も上がっていった。

ヴェルデ―アの店にも、薬の材料になる薬草やハーブが冒険者達によって次々と持ち込まれ、冒険に必要になる傷薬や解毒剤も必要な数が揃うようになった。

ローゼンとヴェルデ―アからも、武器や防具の材料になる鉱物の採掘や、薬の原料になるハーブや薬草の採取の依頼が出されるようになり、紅の林檎亭の冒険者達と有効な関係を築いた。

しかし、緑の髪が背中まで伸びて女らしくなったヴェルデ―アを口説こうとする冒険者もいたとかいないとか…。


そんなわけで、ローゼンとヴェルデ―アはその仕事を忙しくした。

だが、2人の日常はとても充実していた。皆の役に立てるのだから。

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