一行はかけがえのない仲間と出会う
闇の武闘家と匪賊の軍団はエアル達に倒されて、残り十数人になっていた。
そして、とうとう鍛冶屋と薬屋が監禁されているであろう、道場の建物にたどり着いたエアル達4人。
建物に入り込んだエアル達が「闇の武闘家達!攫った人達を解放しろ!」と叫ぶや、稽古をしていた闇の武闘家達が一斉に襲い掛かって来た。
エアルとスズネが前衛で敵を引き付け、マーシャとサムソンが後方で壁を背に魔法で援護するが、如何せん数で不利だ。
魔法使い相手なら、声を出せなくする事に特化したチャックアーツの技が有効だが、相手は近接格闘の武闘家ばかりだ。
エアルとスズネが殴る、蹴るで打ち倒して、サムソンが魔法によって眠らせるなどで一人一人掃討していく。傷を負えばマーシャが回復させる。
そうしている内に闇の武闘家は残り5人になっていたが、エアル達も体力の限界が見えていた。
「油断しない方が良い…数の不利は覆せていないからな…!」
エアルが息を切らしながら呟くと、4人は改めて身構えた…。
闇の武闘家達の1人は追い詰められた、と感じたのか、叫ぶ。
「こうなりゃ、女のどちらかを人質にとるんだ!!」
それを聞いた、エアルとサムソンは目の色を変えた事にも気づかずに…!
「今…何つった…?」
エアルはマーシャの加速の奇跡の効果が切れている時にも関わらず、
目にも映らぬ程の速さで叫んだ闇の武闘家の顔面を殴りつけた…!!
「…武闘家としての誇りも忘れたのかい…?」
怒れるサムソンは電撃の呪文を唱え、闇の武闘家の1人の身体を丸焼けにした。
過剰な攻撃を受けて、大きな身体が2つの音を立てて崩れ落ちる…。それを見た闇の武闘家達は逆上した。
「てめぇら!!そんな攻撃を仕掛けてただで済むと思うなよ!!」
2人の闇の武闘家がスズネに対して、飛び掛かった。
スズネがやられる…!そう、エアルとマーシャが不安に駆られたとき…!!
「アイスシールド!!」
サムソンが魔法で氷の盾をスズネの目の前に作り出した事で、2人の闇の武闘家は、カウンターの要領で頭を打ち付け、卒倒した。
「ひいい…!!」
1人になった闇の武闘家は逃げ出そうとするが、エアルに殴りつけられ、そのまま御用となった。
その半刻ほど後、騒ぎを聞きつけた近隣の村人からの通報を受けたアップルR-12の市警が到着し、闇の武闘家と匪賊達は全員逮捕された。
事後処理にエアル達が追われる中…。
「ありがとう…サムソン。油断していたあたしを助けてくれて…」
そう、スズネはサムソンに申し訳なさそうに話しかける。
「こちらこそありがとう、前衛で君が戦ってくれていたから、僕は安心して魔法を唱える事が出来たんだから…」
そう、サムソンは穏やかな顔でスズネの辮髪に剃った頭を撫でる。
「俺からもありがとうな」
エアルもスズネの辮髪の頭を撫でた。
「マーシャを人質に取ろうとするなんて…武闘家としての誇りなんか欠片も無い、なんて奴らだ…」
そう呟いたエアルを見て、マーシャは思った。
私の為に、怒ってくださる…これじゃあ、ますます…お慕いするしかないじゃないですか…。
「何時かはあいつらも武闘家としての、戦士としての誇りを取り戻してくれる日がくればいいんだが…」
エアルは連行されていく、闇の武闘家達を見て思った。
そんなエアル達にアップルR-12市警の刑事が語り掛けてくる。
「お取込み中、悪いのだが…救助された人達から君達に話があるそうだ。」
そう言った刑事が合図をすると、鍛冶屋らしき青年と、薬屋らしき少女が姿を現した。
「どうも、はじめましてかな?俺は鍛冶屋のローゼンだ。」
「助けてくれてありがとうございます。私は薬屋のヴェルデ―アと申します。」
…これからの未来、生涯に渡ってエアル達を支え続ける、掛け替えのない仲間との出会いがこの瞬間だった。
そして…エアルもサムソンも…辮髪のスズネの頭を撫でたのは、この日が最初で最後だった…。
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