魔術師は賢者を夢見る
「僕はサムソン・ボルトキマイラ。今は一介の魔術師だけれど、夢はでっかく大賢者だよ!こっちは…」
「スズネ・アイスタイガーよ。よろしく。」
「エアル・ヒートフェンリルだ。これからよろしく。」
そんな風に3人は自己紹介をする。
「俺としては後1人…誘ってから、行こうと思うんだが…サムソンはどんな魔法が使えて、スズネはどんな拳法を学んできたんだ?」
エアルは組む冒険者達とチームワークを合わせるために、仲間の能力を把握する事を怠らなかった。
「ちなみに俺はだけれど…」
エアルがそこまで言いかけた時、
「知ってるよー、君は腕っぷしが強いのが取り柄だけれど、色んな所で色んな技能を学んだっぽくて、防音拳チャックアーツとかも使えちゃうんだよね。」
サムソンが先に言った。
エアルはこれまでの活動で、彼に関する話が紅の林檎亭の中には知れ渡っていた。
「ちなみに僕も同じでさ、色んな所で色んな魔法を教わって歩いていた事があるかな…例えば、薬の調合とか」
そんなエアルとサムソンのやり取りに、スズネが口をはさんだ。
「防音拳チャックアーツは、あたしも学んだことがあるわ。あたしも色んな所から拳法を学んできたから」
それを聞いたエアルは気になって聞いてみた
「色んな所から…それに、その髪型って事は…」
「そうだよ、スズネは闇の武闘家から脱走してきた。僕達が今、受けようとしている依頼も…闇の武闘家を逮捕する依頼だ」
サムソンがそう答える。スズネは過去を思い返し、俯いている…。
「大丈夫だよ、スズネ…君が更生しようとしているのは知っているから、大丈夫…僕も一緒に罪を償うから」
「俺も、闇の武闘家から逃げてきたお前が真っ当になろうとしているならば、お前が背負っている物を俺も背負ってやるさ」
サムソンと…エアルのこの言葉が最初のきっかけ…この後で3人が目の当たりにするマーシャに起きた変化と同じものが起こる始まりの合図…。
「じゃあ、あと1人誘ってからって言ってたけれど、その人も連れてこようか」
「そうだな」
「そうね」
サムソンのその言葉にエアルとスズネは答えて、3人はエアルの手引きで、アクレリアス教会へと向かった。
水を湛えたアクレリアス教会に到着した3人…教会の境内に入ったエアルはサムソンとスズネに説明してから、マーシャを探そうとするが、その必要は無かった。
「あの…エアルさん…ですよね?」
そう、話しかけたマーシャの声がエアルに呼び掛けた。
聞き間違えは無い、チャックアーツの修行のために、音を聞く訓練もしたからな。
「ああ、マーシャ、一緒に…」
そうエアルが言いかけて、マーシャの方を向いて、一瞬、思考が停止した。
闇の職人たちと同様に、丸坊主の頭だったマーシャの頭に…肩にかかるぐらいのボブカットの金髪が生えそろっていたのだから。
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