青年は過去を語って諭す
エアルとマーシャの仕事はエルフの外道術師クリスとその手下たちを縛り上げて、後は引き渡すだけとなった。
「くっ…こんな奴らに捕まるとは、俺も焼きが回ったもんだぜ…」
ようやく声が出せるようになり、そう呟いたクリスはエアルとマーシャを睨みつける。
「言っておくが、今後のお前の為に忠告しておくぞ」
エアルはクリスに向き直ると、語り掛ける。
「どんな方法で手に入れたどんな力であれ、それは使い方次第だ。
俺はさっきも言った通り、色んな所から色んな技能を学んできた。
だが、それも使い方次第で勇者にもモンスターにもなっちまうんだ。」
そこまでエアルが言うと、マーシャもクリスに語り掛ける。
「あなたたちの更生を心から祈っています」
そういうと、マーシャがその丸坊主の頭をぺこりと下げる。
クリスとその手下たちは道中全く抵抗せず、アップルR-12の官憲に引き渡された。
エアルとマーシャがエルフの外道術師の捕縛に成功した事に、紅の林檎亭の冒険者達は驚きを隠せなかった。
懸賞金は銀貨600枚…取り分はエアルとマーシャで銀貨300枚ずつだ。
「ありがとうな、マーシャ」
そうエアルは、マーシャの丸坊主の頭を撫でる。
「…はい、私の方こそ…ちゃんと守ってくれて、本当にありがとうございました。」
マーシャは俯き、顔を赤くして、そう呟いた。
そして、その日がエアルが丸坊主の頭のマーシャを見て、マーシャの剃髪した頭を撫でた、最初で最後の日だった。
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