青年はエルフの匪賊と戦う

依頼請け負いと同時に情報提供された通り、エルフの外道術師クリス・シュバルツフォレストとその一味の現在のアジトはアップルR-12から東に歩いて、3時間ほどの所にあった。

アジトは森の掘っ立て小屋で、刃物を持ったエルフの匪賊3人が小屋の入口近くでアジトの見張りをしていた。


「エアルさん、どうしましょう…これでは、迂闊に近づけませんよ。」

マーシャは心配そうだが、エアルは小石をひとつ拾うと元気づけるように言った。

「大丈夫、俺に考えがある。マーシャ、君に使える奇跡にはどんなものがあるんだい?」


その会話の半分後、見張りをしていたエルフの匪賊達は、ガサッと草が揺れるのを耳にした。

「誰だ!!」

エルフの匪賊たちは怒鳴り散らすが、次の瞬間、匪賊の1人の腹にズドンと重い衝撃が走る。

「がはっ…」

「おい、どうし…」

残りの2人もエアルに思いっきり殴られ、倒れ込む。

「やりましたね。エアルさん!」

マーシャはエアルの活躍を喜んだ。

「ああ…加速の奇跡で俺を助けてくれてありがとう」

エアルはあらかじめマーシャが体感時間と速度を引き延ばす事ができる「加速の奇跡」が使える事を聞き出していた。

そのうえで、自分達がいる所とは別方向へと小石を投げて、草を揺らして、匪賊の気を引いた。

後はマーシャの加速の奇跡をエアルに使って、3人の匪賊を次々と殴り倒した。

2人は小屋にいる外道術師と残りの匪賊と戦う前に匪賊達の武器を取り上げて、ロープで縛って近くの茂みに隠しておくことにした。

だが、作業中にマーシャが何かに気付いた。

「…これ、『闇の職人』達が作った武器ですよ」

「いっそ、これで俺が武装するか?」

エアルは未だに素手での格闘ぐらいしか、近接戦の戦闘手段がない自分は、弱いと侮られていても仕方ないと思っていた。

「いえ、武器に限らず、作品には人間性が出るものです。闇の職人の作る武具は…とても歪な、なまくらに思えます。こんなものを使うよりも、エアルさんは自分の腕力で戦うべきです」

マーシャは悲しそうな目で訴えた。

「マーシャ…」

「大丈夫です、エアルさん自身が何らかの武器を持つ事はこれから先考えましょう。」

マーシャはエアルを励ました。

そして、ついに外道術師との戦いを迎える…!

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