2人は依頼達成の方針を決めて準備をする

『外道術師』

魔法使いの中で、在野・無所属あるいは賊の一因として、悪事を働く者の総称。

誰かや集団の下につかずとも、金で雇った護衛や、自ら召喚するなり、創造するなりした魔物や召喚獣に自分を守らせている者も存在する。


…エアルとマーシャが今回、逮捕を依頼されている外道術師はエルフの男。名前はクリス・シュバルツフォレスト。

2メートル前後の長身と、鉄紺色の短髪に赤い瞳が特徴。

故郷のエルフ族の村でダークエルフとして村八分に遭い、悲惨な少年時代を過ごす。

ある時、村八分の主犯格だった村長の家から理力魔法の魔導書を盗み出し、半独学で魔法を習得。

村八分の末に両親の自殺と、きょうだい達が村から出て行ったのを期に、自分達家族を迫害してきた村長を含むエルフの村人25名を魔法で殺害し、幾つかの金品や食料を盗んで逃走。

そして、現在も人間やエルフのならず者達数名を支配して、匪賊として行動を共にしている。


そのエルフ族の村は村を纏めていた村長が死亡した上、村長の死亡と事件、そしてこれまでの自分達の行為を受けて、村人27名が村を出ていってしまった。

これにより、働き手となっていた村人が著しく減少した事によって、農作業も狩りも行う事自体が難しくなった。

次の村長もまだ決まっていないどころか、次の村長の座を巡る争いが今も続いているなど、村としてのまとまりも無くなった。

そうして、今もその村の村人エルフ達は惨めな生活を余儀なくされている。


仕事を受けるにあたって、確保すべき相手の情報は提供して貰えた。

エアルは、そのエルフの外道術師に同情はすべきなのだろうが、自分の身に起きた不幸から逃れる為にした事は大問題だし、現在も匪賊をしているのであれば、確保せざるを得ない。

また、そのエルフの外道術師の危険度リスクはEランク。殺してしまえば懸賞金は五割減ってしまうから、マーシャとの懸賞金の山分けに当たって、必ず捕えなければならない。

…そう考えていた。


それに対する、マーシャの考え方はこうだ。

「然るべき裁きと償いを受けさせるのはもちろんですが、それだけでなく、その後の彼の人生の再起を認めてあげたいのです。だから、誰も殺さずに捕まえなければなりません」

「わかった。ただし、相手と戦うに当たって、前衛は腕っぷしの強い俺だ。君を危険な前線に立たせるわけにはいかない。俺が…必ず、守るから。」


実は、これが最初の切っ掛け…。


エアル自身は身体が丈夫で腕っぷしの強い自分が前線に立って匪賊と戦い、マーシャが後方から神聖魔法で支援してくれればという作戦をマーシャと組んだ時に考え付いたのも自分の中では否定しなかった。

何より、マーシャは自分より年下でしかも女の子なんだ。丸坊主の頭では少年にしか見えないかもしれないが。

その細身の腕では腕力には期待できないし、腕力に恵まれた自分が矢面に立ってでも、守らなきゃいけない。

そのように依頼に挑むに当たっての方針は決まり、匪賊確保用のロープや手錠の購入も済ませて、2人は地図を受け取り、エルフの外道術師が根城とする森の廃墟へと向かった。

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