第17話 本当のダンジョンハンターになる為に

 休憩を挟んだ後、またコボルトを倒して数時間後、ダンジョンの外へ出た。へとへとだ。

 僕なりに頑張ったけど、小手は貰えなかった。

 でも、その場で魔石とお金が交換なので、お金は手にする事が出来た。


 「クラド。貰ったお金で宿泊できるか?」

 「え? 今日から宿に泊まるんですか? 今まではどこに?」


 デモンガリーに言われた事を気にしているんだな。


 「用意された宿だ。そこを早く出て自分で立ち上げたギルドの住処に移りたかった。だが、言われて同じ事だと気がついた。ダンジョンハンターになる資金としてもらったが、普通はそんなものは貰えない」


 ははっと、乾いた笑いをガーナラルドがした。

 結構ショックみたいだな。普通のダンジョンハンターと合わせたいと思っているみたいだし。


 「ごめん。僕も宿屋の金額知らないんだ。泊まった事ないし。母さん達なら知っているかも」

 「そうか。では、寄って行っていいか?」

 「はい」


 母さんは大喜びだろう。ガーナラルドが迎えに来るのを毎朝楽しみにしているのが、なぜか母さんだからなぁ。毎日、ガーナラルドの顔を拝めると……。

 なんとなく、母さんが危ない人物に見えるのは僕だけだろうか。



 「ただいま」

 「まあ、ガーナラルド様! また来てくださるなんて!」


 めちゃくちゃ嬉しそうだな。


 「おじゃまします。今日は、少しお伺いしたい事がりまして伺いました」

 「まあまあ、どうぞお座りください」

 「ありがとうございます」


 薦められた椅子にガーナラルドは座った。

 そして、温めたヤギのミルクを出す。うちで出せるものといったらそんなもんだ。

 なぜか居間に全員集まり、ガーナラルドが話し出すのを待った。


 「実は、今日から稼いだお金で宿に泊まろうと思うのですが、安い宿をご存知ありませんか?」

 「それだったらダンジョンハンター用の宿に泊まったらいかがですか?」


 答えたのは、父さんだ。

 そんな宿があるのか。まあ、あっても不思議じゃないよね。


 「ダンジョンの近くにあるらしい。ただ寝る場所だけの提供らしく、たしか一月契約で前払い。金額まではわからないが、ある程度稼げるようになったハンターはそこに泊まるようです」


 なるほど。ダンジョンの近くなら移動もラクだ。


 「一か月か。なら今日貰ったお金では無理っぽいな。お金がない者がどうしているかご存知ですか?」

 「私が知っているのは、知人のダンジョンハンターの話です。一般的かどうかわかりませんが、それでも宜しいでしょうか?」

 「かまわない」


 父さんが言うと、頷いてガーナラルドは聞きたいと言った。

 父さんの知人って、亡くなった英雄の事だよね……。


 「知人の話によると、最初の頃は食べ物を買ってダンジョン内で寝泊りしたらしい。だが襲われる可能性もあり、5,6人でパーティーを組んでいる時だけだそうだ」


 ダンジョン内で寝泊り!?

 確かに寒くないし宿代がうくけど、ちょっと怖いなぁ。

 ガーナラルドは、真剣な顔つきで頷いている。


 「後は、森で寝泊りらしいです。森の動物を狩って食料にもすると言っていたなぁ。ダンジョンの周りは、豊かな森林の事が多いからと。ただし、森で怪我をしてもダンジョン内の怪我ではないので、回復魔法をかけてもらえないとか言っていましたね」


 なるほど。森に泊まっているのか。

 もしかしてデモンガリーもそうやって過ごしていたのか?


 「あのさ、僕の様に家に戻ってこないのかな?」

 「うーん。普通はこないらしい。なぜなら集団生活をしているからだとか。一人だけ抜けて、家に帰る事は滅多にないとか」


 なるほど。そういう事か。


 「最初の頃は、二人の様に誕生日の仲間うちだから帰ったりもあったそうだが、顔を見せにな。ある程度強くなれば、自分のスキルや魔法と合う仲間を探して、パーティーを組んだりギルドに入ったりするらしい」


 そうなんだ。僕は、逆にガーナラルドと組んだから家に帰ってこれていたのか。そう考えると、恵まれているって事かな?


 「大変、参考になりました」

 「まさかと思うけど、森に寝泊りするとか言わないよね?」

 「パーティーで行動するというのなら、私だけの一存では決められない。クラドはどっちがいい? ダンジョン内と森の中」


 どうして、その二択になるんだ。いや、父さんはそう言ったけど、僕達二人パーティーだよね?


 「いや二人なんだし、どっちも無理なのでは?」


 普段しなかったからか、夜中に起きて見張りって結構大変だった。一人で起きていると、眠気と一人で戦わなくてはならないから。


 「大丈夫だ。寝る時には見張りの二人と交代でやればいい。どうせついてきているのだから」


 あぁなるほど。その人達まで巻き込んじゃうんだ。まあガーナラルドを守る事になるだろうから引き受けてくれるだろうけど。


 「そういう事でしたら違うパーティーの者を誘ってみてはいかがでしょう。他のパーティーがどういう感じかもわかると思いますよ」

 「……そうしたいのだが、彼以外は私を王子としてみるので」


 え! 僕も一応王子だと思ってはいるよ。いるけど、自分の事だけで精一杯だからガーナラルドの事まで、手が回らないだけ!

 いやどっちかというと、迷惑を掛けてばかりだけど。


 「ガーナラルド様。本当に普通に接して頂きたいと思っているのなら一つだけ手があります」

 「え? それはなんだ?」

 「この地域から離れた場所にあるダンジョンに行く事です。あなたの事は知っていても目にした事があるのは少ないはず。もちろん、我が息子もあなたに喜んで協力する事でしょう」


 待て待て。勝手に事を進めないでよ!


 「そうか。私は、覚悟が足りていなかったようだ。さすがクラドの父上。クラド、お願いできるか?」

 「お願いって、一緒に遠くのダンジョンへと言う事でしょうか?」


 そうだと、ガーナラルドは頷いた。

 父さん、余計な事を……。

 ガーナラルドは、英雄を目指しているかもしれないけど、僕はそうじゃないからそこまで無理したくないんだけど!


 「わ、わかりました。けど、その服装だとばれると思いますけどね……」


 嫌だと思いながらもOKしてしまう自分が情けない。


 「そうだな。やはりこれも着替えよう」


 遠くのダンジョンへ行くことになり、その用意の為ガーナラルドは僕の家をあとにした。明日迎えに来ると言って……。


 家族に僕は凄く期待されていたのだった。

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