第14話 敵はモンスターだけではなかった

 ザク!

 パタンと倒れると、コボルトは魔石に変わる。

 思ったよりサクサクと10階に到着した。


 「この剣でもやはり平気だ」


 コボルトを切り捨て、ガーナラルドは言った。

 彼の腕力なら大丈夫だろうよ。僕でも大丈夫なんだから。


 あ、そうだ。腕力増えていたりして。

 そう思ってステータスを見ると、ずらりとスキルが並んでいた。

 そうだった。下りる度に増えるんだった。


 「凄いな。本当に増えるのだな」


 僕のステータスを覗いて言った。

 さっき5階まで来た時もステータスを出したけど、それどころじゃなかったから目がいかなかったもんね。

 ガーナラルドもそうだったみたいだ。



 腕力上昇率アップ

 MP上昇率アップ

 回復力アップ

 運+1:MP1

 疲労回復:MP1

 魔力+1:MP1

 サーチ

 安全地帯:MP5

 百発百中


 あ、サーチがある! という事は、一度出た事があるスキルも再度でるんだ。よかった。


 「本当にサーチあがる! なぜ使わないんだ」

 「え? あ、今気がついたし……」

 「増えるのがわかっているのに、毎回チェックしていなかったのか?」


 いや、しろとも言われていないし。そもそも10階とかまでしかいかないなら必要ないだろうに。まあサーチなら宝箱探しには使えるけど。もう10階だからこの階で終了だ。


 「MP表示がないのは、MPが必要ないのか? サーチにも表示がないが」

 「そうみたいです」

 「何? サーチを使い放題なのか? 凄すぎる!」

 「………」


 ガーナラルドも興奮している。そんなに凄い事だったのか。まあ一番使えるスキルかもしれない。


 「この階に宝箱はあるのか?」

 「え? あ、はい。見てみます」


 そうだその前に、スキルを使って運と魔力を増やしておこう。あれ運? そんなパラメータなんてあったっけ?

 見れば、増えていた。これも消えないでそのままなのだろうか?


 「どうだ?」

 「そうだった。えーと……」


 地図には、赤い点と黄色い点が複数あった。ダンジョンハンターの数が、スライムダンジョンの比じゃないな。

 青い点は、残念ながらなかった。


 「宝箱はないです」

 「よしだったらもっと下に降りるぞ」

 「え? 10階までじゃないの?」

 「サーチを覚えたのなら使うべきだろう? そのスキル獲得は、ランダムなのだろう? また来た時に覚えるとは限らないのなら覚えた時に下に行くのがいいだろう」


 確かにそうかもしれないけど、モンスターは強くなっていくんだよね?


 「えっと。ガーナラルドも武器の質を落として弱くなっているのだし、やめておいた方が……」

 「それは問題ない」

 「問題ないって……」

 「たしか、30階ぐらいまでなら一撃のはずだ」

 「え? なんでわかるの?」

 「与えるダメージの算出方法を知っているからだ。30階のHPは50だ。この剣の攻撃力も50だ。私なら50以上のダメージを与えられる」


 凄い。そうなんだ。知らなかった。


 「……初めて知ったという顔をしているが、習っているはずだ。まあこの剣の攻撃力は知らないかもしれないが」

 「あ、そういうのも習っていたんだ……」

 「習っているはずだ。武器の攻撃力×(自分の腕力÷100)が与えるダメージだ。通常は、この計算通りのダメージを与えられる。相手のモンスターのHPより多ければ倒せる」


 えーとだとすると、僕の腕力は22になっていたからダメージは11。この階のモンスターのHPはそれ以下という事か。

 でも僕じゃ、30階のモンスターは倒せない。というか、そのだいぶ前に倒せなくなる。


 「ダメージを計算すると、僕では30階は無理です」

 「いや、上げればいい」

 「上げればって。そんな簡単に言わないで下さいよ」

 「気づいていないのか? 瀕死になるぐらいして倍にしたのだろう? 7か8ぐらい腕力をあげたのだろう? それと同じだけさっきと今10階に来る間に上がったのに気づいてないのか?」


 うん? そう言えば、このダンジョンに入った時は15だった。なぜにそんなに上がったの? うーん。これかな?


 ◎腕力上昇率アップ 戦闘においての腕力上昇率が3倍になる。


 「3倍って……」

 「3倍のスピードで上がって行くって事だな。こんなスキルまであるのか。今上げない手はないな」

 「え? まさか、上げながら本当に進む気ですか?」

 「そうだな。とりあえず、検証してから行こう」

 「け、検証?」


 また難しい事を言っているよ。何をさせる気?


 「心配いらない。モンスターを何体ほど倒すと腕力が上がるか検証するだけだ。もっと言えば、攻撃した回数だ。弱いモンスターでも強いモンスターでも攻撃をしないと腕力は上がらない。素振りでもいいらしいが、当てるという行為が最も腕力が上がる方法らしい」

 「そうだったんだ」


 そう言えば、デモンガリーと訓練した時も体力が上がったせいか、動ける様になって攻撃出来る様になった。攻撃は全部枝で防がれたけど、確かに上がった。


 「少しずつ上がりづらくはなるが、3倍ならかなり早く上がるだろう。もしサクサクあがるようなら腕力を100以上まで上げれば、剣が持つ本来の攻撃力までダメージを上げられる」


 「なるほど!」


 そこまで上げれば、強いモンスターも少しは怖くないかも。

 僕達は、この10階で腕力上げをする事にした。


 検証の結果、通常は腕力の数値の倍ぐらい攻撃を繰り出すと、腕力が上がる様だった。3分の一で上がるとはいえ、腕力を100まで上げるのは大変なので、それはやめる事になった。


 検証の為コボルトを倒して25になったけど、これでもガーナラルドの4分の1程しかないからなぁ。


 「腕力が25あれば大丈夫だ。下の階に行こう」

 「え? 行くの?」

 「そのための検証だろう?」


 だけどさっき、モンスターの強さは関係ないような事を言っていなかったっけ? だったらここでよくない?


 「腕力を上げるなら別に下に降りなくてもよくないですか? 倒せるとわかってるのだし、安全だと思うけど」


 「下の階に下りるのは、宝箱を手に入れる為だろう? もし下に降りて宝箱を発見できれば、その武器を装備すればいい」


 そんな不確定な事を言われてもなぁ。なかったらこのままだし、宝箱があったとしても武器とは限らない。なにせ僕が初めて手に入れた宝箱の中身は、武器でも防具でもなく、袋なんだけど?


 「危険だとおも……うわぁ」


 話していると突然手を引っ張られた。ガーナラルドではない。誰この人?


 「ちょっと何?」

 「何をしている離せ!」


 ガーナラルドがそう言うと、僕の手を突き飛ばす様に離す。


 「あ……」


 吹っ飛んだ僕は、外へ出る魔法陣の上に乗っかってしまった!


 「ちょ……ガーナラルド!」


 しまった!

 僕達は、魔法陣の側で戦っていた。そして、下の階に降りる魔法陣と外へ出る魔法陣は少しだけ離れて並んで設置されている。そこへ放り込まれた形だ。


 あの人達の目的は何? どうしよう。誘拐だったら!

 そう思うも僕は、ダンジョンの外に出され建物の中にワープしたのだった。

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