第12話 牙をむく彼
三日目の朝、デモンガリーと一緒にガーナラルドが来るのを待っていた。
変だな。昨日はベットで寝れたのに、HPが2しか回復していない。そして体は、打ち身だらけであちこち痛い。
疲れが出て来たのかも。
デモンガリーは、布団はいらないと壁に寄りかかり僕の部屋で寝た。僕は、体がだるくて、彼には悪いけどベットで寝かせてもらったんだ。それなのに疲れはとれなかった。
「おはよう。その者は?」
「おはようございます。彼は、僕と同じ学校に通っていたデモンガリーです。訓練を手伝ってもらったんです」
「おはようございます。殿下。デモンガリーです」
「訓練か。大丈夫なのか? 顔色が悪いが」
「はい。まあ……」
「馬車に乗り遅れますよ。馬車に乗れば一時間程座って休めるのですから問題ないでしょう?」
そうデモンガリーが言った。
僕、馬車に乗ったら寝ちゃいそうだ。
「わかった。乗り場まで行こう」
僕は案の定、馬車の中で寝てしまった。
殿下の前で寝るなんて信じられないと、デモンガリーに言われちゃったよ。
体力の違いが出てるよな。デモンガリーだって疲れているはずだ。
受付を済ませた僕達は、ダンジョンへと向かう。
「殿下、荷物をお持ちします」
「……いや、結構だ。自分の荷物ぐらい自分でも持つ」
「そうですか。では、そのように」
そう言って、デモンガリーは、軽くガーナラルドに頭を下げた。
何というか、態度違い過ぎないか? いや、相手は王子だから当たり前なんだけどさ。
「ところで、何階まで行くつもりですか?」
「それよりなぜ君が同行しているのだ?」
「……ダメでしょうか?」
そうだった。本当に紹介しかしてなかった。というか、今さら聞くんだ。ダンジョンに一緒に来たのだから一緒に行動するとは思わないものなのかな?
「別に構いはしないが、一つ条件がある。私を王子扱いしない事」
「わかりました」
デモンガリーは、頷いた。
よかった。彼にギルドに入ってもらう予定だったからダメと言われたらどうしようかと思ったよ。
「では、訓練の成果を見せてもらおうか」
「はい」
僕は、剣を手に頷いた。
取りあえずはまず、僕の信頼を取り戻さないと。
ダンジョンの中に進んで行き、出てきたコボルトに斬りかかる。一撃だった。
「驚いたな。数日でここまで……」
頑張った成果がでた!
嬉しくなってデモンガリーを見ると、彼は頷いた。
こうして、コボルトを倒しながら先へと進む。
スライムと違って、ある程度近づくと向こうから近づいて来て、攻撃を仕掛けて来るので、見つけたら斬りつけないと斬られる。
囲まれない様に気を付けながら倒して行った。我ながら上達したなと思う。一度も攻撃を受けずに5階まで来れたんだから!
カララン。
僕は、両手両膝を地面についた。
「はぁはぁ……」
「どうした?」
驚いて、ガーナラルドが僕に近づいた。僕の顔を覗き込む。
「顔が真っ青だ。ステータスを見せてみろ」
「え……はい」
「な……」
表示されたステータスを見て、ガーナラルドが驚いた表情を見せた。
凄く上がったからね。
「なぜ、HPがこんなに減っている? 攻撃は受けたように見えなかったが……。傷薬は?」
そうガーナラルドに問われ、傷薬はデモンガリーが持ったままなのを思い出す。
HPは、朝より更に減って6になっていた!
おかしい。ここに来ただけで5も減っている。
「傷薬を使うより戻った方が早いか。立て!」
「お待ちを。それは、俺がやります」
僕の手を肩にかけ立ち上がろうとしたガーナラルドにデモンガリーが言った。王子であるガーナラルドに、僕を運ばせる事は出来ないからだろうな。
「ご、ごめん」
僕は、ぼそっと呟くぐらいしか出来なくなっていた。
何とか魔法陣まで歩き、ダンジョンの外へ。
ワープ先は、建物内だ。
「すまないが、彼に回復魔法を頼む」
カウンターに向かって、ガーナラルドが叫んだ。
僕は、カウンターのすぐ横に設置されていた椅子に座らされた。
すぐにカウンターの奥からダンジョンハンターだと思われる男の人が出て来て回復魔法を掛けてくれた。
痛みも疲労感もスーッと引いて、ラクになった。
「ありがとうございます」
「殿下は大丈夫ですか?」
回復魔法を掛けてくれた人が聞くと、大丈夫だと返す。
「クラド、出て来る時のHPは見て来たか? 全回復の状態だったのか?」
「いえ。11でした……」
「11……攻撃を受けてないよな?」
「はい」
返事を返すと、キッとガーナラルドがデモンガリーを睨み付けた。
「彼を殺すつもりだったのか?」
「なぜ、そうなるのですか?」
「君なら知っているだろう。疲労でもHPが減る事を。寝てもHPが半分も回復していないという事は、体に異常があると言う事だ」
知らなかった。疲れていてもHPが減るんだ。
「彼にHPがいくつかなんて聞いておりませんでしたので……」
「君は、彼と同じ学校だったのだろう。だったら彼がどういう風に過ごしていたか知ってるはずだ。訓練などしていなかったのではないか? そういう者があそこまで上達するのには、それなりの事をしたはずだ。打ち身などあってそのまま放置したのではないか? HPが一割切れば、瀕死の状態になり動けなくなる事は知っているだろう? 君はワザとその状態になるように仕向けたのではないか?」
え? ワザとって……。まさかそんな事はないとは思うけど。でもそういえば、傷薬は返してもらってない。僕と一緒で忘れていただけだよね?
「それって、クラドの元のステータスをご存知という事でしょうか?」
「いや、見たことはない。ただコボルトに歯が立たないぐらい弱かった」
ガーナラルドの言葉に、聞いた皆が目を見開いたのがわかった。って、そんな事暴露しないでよ!
「そうですか。さきほどご覧になりましたよね? 腕力はあの数値の半分でしたよ? 俺としては、どうしてコボルトにすら勝てない彼を傍に置くのかわかりかねますね。まるで役に立たないでしょうに」
凄い言われようだけど、言っている事はあっている。
……けど、味方、敵ではないけど、今の言い方だと僕の印象は、デモンガリーにとって悪い様に聞こえるんだけど……。
「それに王子扱いするなと言う割には、権力を使っておいでですよね? 普通ギルドなどダンジョンハンターになってすぐに設立させる事など不可能ですよ。その資金はどこから出たのでしょうか?」
え? 僕の事だけじゃなく、ガーナラルドの事まで!?
「ちょっと、いきなりどうしたのさ。なぜガーナラルドに食ってかかるの?」
「は? 呼び捨て?」
僕の言葉に、デモンガリーが凄く驚いていた。いや周りもだ。凄く視線が痛い。あぁ、こうなるから嫌だったんだ!
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