第11話 ハードな戦闘訓練
「ありがとう」
僕がそう言うと、ニコッとデモンガリーはほほ笑んだ。
「いや、同級生として鼻が高いよ。王子に選ばれるなんてな」
なぜデモンガリーの鼻が高いんだ? 僕達、特段仲良くなかったよな?
「さて時間が勿体ないよな。三日しかないんだし。取りあえず、こっち」
すぐ近くにあった林の中へとデモンガリーが入って行く。
ダンジョンは、人里離れた建物がない所に出現する為、こういう林などが近くにある。
って、なぜに林?
「まって、どうして林なの?」
僕が問うも答えず、スタスタ進む。
「まずはここら辺でいいか。ステータス見せてよ」
「え? あ、うん……」
あまり見せたくないな。ガーナラルドが平均より少し高いっていったけど、それにしても僕は低いからな……。
「酷いなこの数字。どうやって王子に取り入ったの?」
「え?」
デモンガリーまでそう思うのか。まあこの数値を見ればそう思うのも仕方がないか。
「まあいいや。リュック降ろして」
「あ、うん」
デモンガリーも自分のリュックを降ろして口を開けた。そして、僕のリュックを開けると、そこから傷薬と水が入った水筒を取り出し自分のリュックにしまった。
「え? ちょっと……」
驚いていると更に驚く事をしていく。なんと、空になった僕のリュックに地面に落ちている石を拾って入れ始めたんだ。
「何するのさ!」
「何って、手っ取り早くステータスを上げる訓練。お前さ、王子に荷物持たせる気なのか? 普通は、一緒に行く者が王子の荷物も一緒に持つだろうが。なら重たい荷物でも耐えられる様にならないとな。これぐらいかな?」
リュックの半分ぐらいまで石を入れて、リュックを閉じた。
「背負って」
「……わかったよ」
まさかガーナラルドの荷物持ちをしなくちゃいけないなんて思わなかったよ。あ、でも、魔石すら拾ってもらうんだっけ?
って、重い!
「大丈夫か?」
よろけた僕を見て、ため息交じりに言われた。
「あ、うん。何とか」
これぐらいなら農作業で収穫した物を背負って運んだことがある重さだ。何とかなる。
「じゃ、もう少し奥に行くよ」
「え? もっと奥に?」
「あぁ。もう少し開けている所を探そう」
これから探すの? だったら探してから石詰めようよ……。
でもしかたがないので、彼について行く。
一時間ぐらい歩いて、ほんの少し、開けた場所に辿り着いた。
「はあ、疲れた」
「何、休もうとしてるんだ。ほら、訓練するよ」
腰掛けようとしたらそう言われてた。
「え? 休まずに?」
「ダンジョンのモンスターがこっちを気遣ってくれるのか?」
「え……いや、ないけど」
「だろう? あ、リュックはそのままな。モンスターと戦うのにリュックは降ろさないからな」
確かにそうだけどさ。少しずつ慣らすというやり方がいいんだけどなぁ。
「嫌なの?」
「え? ……頑張ります」
「それじゃ、これね」
そう言って木の枝を渡された。
太さは握れる程度。だけど、僕とデモンガリーの枝の長さがパッと見ただけでも違う。
「あのさ、長さ凄く違わない?」
「うん? ハンデが必要だろう?」
いや、ハンデって強い方が負うのではないかな? 僕の方が短いんだけど……。
「つべこべ言ってないでやるよ!」
ベシ!
言いながら突然叩いて来た!
左腕を叩かれて、痛みで体を折る。
「ちょっと待って……手加減してよ」
「は? 何言ってるの? 手加減してるから。俺が本気だしたら死ぬよ、お前」
「………」
そうですか。そりゃありがとうございます。って、痛い~!
全然、容赦ないように感じるのは気のせい?
枝の長さもあるけど、僕は防戦一方だった。だって避けられないから枝で受け止めるしかない。それでも防ぎきれなくて、叩かれまくっていた。
「ちょ……もう、無理……ぜぇはぁぜぇはぁ」
僕は、両手両膝を地面についてギブアップ。
「はあ? まだ10分も経ってないだろう? それに攻撃仕掛けて来いよ」
「出来ればやってるよ! こっちには石が入ったリュック背負って短い枝でやってるんだから攻撃出来る訳ないだろう?」
「ふうん。そう、だったら……」
止めると言うかと思ったらリュックを降ろした。
「そのリュック貸して」
「え?」
僕が背負っていたリュックを奪うと、デモンガリーは背負った。そして、枝も交換する。
「来いよ」
休みたいけど休ませてくれないのね。
仕方がないので立ち上がり、ターっと声を上げてデモンガリーに枝を振り上げるも避けられた。
そして、デモンガリーの反撃が来る。さっきと変わらない速さで繰り出される攻撃は、長い枝でも同じで受け止めきれず、体のあちこちを叩かれた。
「はぁはぁ……なんで、攻撃が一度だけ? これのせいなんだよな?」
どうやら違うみたいだ。リュックの重さ云々の前に、あきらかに能力の違いだ。
「ごめん。リュックは関係なかったみたい」
どさ。
デモンガリーは、背負っていたリュックを僕の目の前に投げてよこした。
「だったらそれ背負って、訓練だ。いいな」
「……わかったけど、少し休ませて」
「あぁ。少し休憩にするか」
デモンガリーも石が入ったリュックを背負って動いて疲れたみたいだ。自分のリュックから水筒を出し、僕に手渡してくれた。
「今日から三日、ここに泊まるからな」
「え?」
僕の横に座ったデモンガリーは、驚く事を言う。ここで野宿ってそんな無茶な。
「僕のリュックの中身知ってるよね? 食料ないけど?」
「俺のを分けてやる」
かなりハードな訓練なんですけど! 三日でステータスを上げるのならこれくらいしないとダメって事か。
しかし思ったより大変だった。
モンスターはいないけど、自然の動物に襲われるかもしれないので、交互に見張りする事になった。もし万が一火事になったら困るからと、火はおこさずにいた為、辺りは真っ暗闇だ。
食事もちょっと、ただただ枝で戦闘訓練をし続けた。
そして、二日目の夜。
「まあこれぐらいまで上がればいいか」
僕のステータスは、凄く上がっていた。
HP:9/65
MP:5/5
体力:158
魔力:10
腕力:15
素早さ:31
スキル増殖
「凄い、ありがとう」
「……明日、どこで待ち合わせだ?」
「え? あ、たぶん僕の家に迎えに来ると思う」
「は? お前、王子に送り迎えしてもらってるのかよ!」
「ち、違うって。一緒に普通の馬車に乗って移動するの」
「お前が行くのではなく、向こうが来るのかよ」
少し呆れ気味に言われるも、あっちが勝手にそうしてるんだから仕方がない。
「えっと、一緒に来る?」
「へえ。紹介でもしてくれるってか?」
僕は頷いた。
僕一人では、腕力を上げられなかったからね。
「……そう、ではお言葉に甘えて、紹介してもらおうかな。お前の家に行こうか」
僕はまた頷いた。
凄く疲れていて、もう話すのも億劫だったんだ。
リュックの石を捨て水筒を入れて背負い直す。
何とか最終の馬車に乗り込んだ僕達は、家へと向かった。
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