第4話 ハンターになりたくないと言いながら
「えい……」
つん。
気合も入ってない声で、攻撃もやる気なしに見える動き。
「せめて、振り上げろよ……」
見かねてレメゼールさんに言われてしまった。
やりたくないモンスター退治。スライムだから一撃だ。つんとしただけで動かなくなり消え去った。
一応退治しないといけないからね。
「必ず魔石を拾う様に」
「魔石?」
「それも覚えてないのか?」
驚かれた。
いや知っている。モンスターを倒すと魔石という黒っぽい石になる。それを回収し持ち帰り、聖女の祈りによって浄化するとそのモンスターは転生しないらしい。
つまり生き返っていたが、浄化させられて天昇する。
「えっと。魔石がどれかわからなくて……」
「これだ」
「えー!」
屈んで右手人差し指で指した石は、かなり小さい。うっすらと明るい程度だし、大きさを知らなかったら気づけない。
「これ、本当に拾う意味あります?」
つまみながら聞いた。
「大きさは関係ない。いやあるか。浄化するのは知っているな? その後その石から魔法力を抜き取るらしい。大きければ大きい程、量は増える」
「ふうん。それって何に使うんですか?」
「……それも習ったはずなんだけどなぁ。MP回復に使うんだよ。さっき貰った帰還の水は、全MPを消費して脱出するんだ。MPが枯渇して0だと、飲んでも帰還できないからな。覚えておけよ」
「え? 僕、5しかないけど」
今の所使わないみたいだけどね。
「そうだな。増やす方法はMPを減らすだ。HPは、攻撃を受けると最大値が増える。体力が増えやすいのは、リュックを背負って動き回るからなだ。ずっと走っていたりすれば、素早さもアップする」
なるほど。それでいくと、攻撃を受けずにいるとHPは増えないわけね。なんだよそれ! しかもMPは減らさないと増えない? 僕はどうやって減らせばいいの? 帰還の水だってタダじゃない。
「あぁ、まあ。覚えたスキルにMPを消費するのがあるかもしれないだろう?」
僕が、ずーんと沈んだのを見てそう言ってくれた。
本来サーチは、MPを消費するらしいけど、僕が取得したサーチには消費MPが書いてなかった。つまり消費しないって事。使い放題だ。けどMPが増えない。
まあ、減る事がないのなら増えなくても問題はないけどさ。
でも覚えたスキルがいきなり消費6とかだったら使えないスキルになってしまう。それにダンジョンから出ると消えちゃうらしいしさ。
「そんなに落ち込むなって。君はいいスキルを手にしたんだから」
「どこが? 外に出れば消えちゃうんでしょ?」
「下に行けば手に入るだろう? サーチなんて凄いスキルだぞ? 宝箱を手に出来るかどうかって、強くなれるかどうか掛かっている。つまりは、生き延びる可能性を高める」
「そうだけどさ……」
「一つだけ言うと、魔石の数でお給金が出るからな。ダンジョンによって一個当たりの金額が違う。だから奥に進まなくてもいいが、ここに通えるのは三日だ」
「うん? 三日?」
「そう。スライムダンジョンに潜れるのは最大三日となっている。俺と一緒にパーティーを組めるのも三日間だ。その内に腕力ぐらいは上げておけ。スライムをひたすら倒すだけで少しは上がる」
「わかったよ。やってみる」
一応助言してくれているのだろうけど、スライムを倒した程度では、全然上がらないだろうなぁ。
そういう事で、魔法陣に行くまでに出会ったスライムを倒して行った。
そして一つ下の地下3階に降りた。
覚えたスキルは、「体力+1」だった。でもステータスを見たところ増えていない。
「あれだ。MP1とあるからMPと引き換えに増えるかもな。試してみたら?」
「なるほど」
MPも消費するしいいかも。
って思ったら発動したっぽい。一瞬体が光った。
ステータスの体力が1増えた!
「あ! スキルが消えてる!」
「使ったら消えるスキルってあるのか? まあ普通はないな。でもMPと引き換えに増えるならいいんじゃないか? お得だろう? MPは回復させられるのだから」
そうだけど。ダンジョン出たら戻ったりしないかな? だったら意味ないんだけど。それは戻ってみないとわからないからなぁ。
スライムを倒し、次の階へ。4階で手に入れたスキルは、MP吸収。ここでは役に立たないけど、レメゼールさんは目を丸くしていた。
普通なら魔法攻撃が出来る武器を持っていないと、MP吸収などは意味がないけど、僕の場合は他のスキルでMPを消費するならそういう武器がなくても使えるスキルだと言っていた。
確かにそうだけどさぁ。
さて、とうとう5階に降りた。
覚えたスキルは、鑑定だった。
「おいおい。どんだけ凄いんだよ!」
「凄いかな? これいつ使うの?」
「いつって、宝箱を見つけた時だろう? サーチを覚えるんだから宝箱をゲットできる。そして、手にした装備品を自分で鑑定出来るんだ。便利に決まってる!」
興奮してレメゼールさんが言った。
そう言えばそうだけど。そうそう宝箱なんてないだろうに。
あ、そうだ。手に入れた革巾着は?
■無限革袋 口から入る物なら際限なく入れられて重量も変わらない。入れた物は、入れた本人のみ出せる。また袋内は、時間停止しており劣化しない。生き物は、入れられない。
ま、まじか。こんなところに凄いモノがあった。
「そうだ!」
「え? 何?」
僕はビクッと体を震わせる。
「それ、鑑定してみて教えて」
「え……」
指さしたのは、今鑑定した無限革袋だ。
ど、どうしよう。本当の事を教えて欲しいって言われたら。
「えーと。普通の皮袋みたいです……」
「へえ。ちゃんと鑑定できるんだな」
嘘ついちゃった。
ダンジョンハンターになりたくないと言いながら欲しいなんて、矛盾してるだろう!
よし、こうなったら一人でやっていこう。
暮らしていければいいから5階までしか下りない!
そう決めて、ダンジョンから出た。
5階には、地下6階に行く魔法陣と外に出る魔法陣があった。光る色が微妙に違った。白い方が外に出る魔法陣。ちゃんと覚えておかなくちゃ。間違ったら大変だ。
ダンジョンから出ると、スキルは消えていた。サーチも鑑定も消えていて、わかっていてもがっくしだった。
けど増えた体力はそのままだったし、腕力も1上がっていたんだ!
小さな宝箱は、記念として自分の部屋に飾る事にした。ただ机の上に置いておくだけだけどね。
そしてその中には、帰還の水を入れておいた。僕には高価な物だし、今の所使わないからね。
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