第3話 微妙なスキル
「そうだ。さっきのスキルを見てみよう」
レメゼールさんが、重い空気を変えようと違う話を振って来た。僕的には、それにも触れたくないのですが……。
「まずステータスを出してくれるかな?」
「はい。ステータス」
ダンジョン内は、明かりが無くてもなぜか歩ける程度にうっすらと明るい。なので白い文字だと見やすかった。
「このスキル増殖の詳細を見たいと思ってみて。上手くいかないようなら言葉にしてみるといい」
「スキル増殖の詳細」
口に出してみた。
◎スキル増殖 階が新しくなる度に新しいスキルを覚える事が出来る。但しダンジョンを出ると消滅する。
「え……」
何このスキル。増えるけどダンジョンを出ると消滅するって……。覚える意味がないだろう!
「うーん。初めて見るタイプのスキルだな。ちょっと試してみようか」
「試すって?」
「下の階に下りるって事。ダンジョンの事は知っているかい? 下の階に通じる魔法陣を見つけて下りる。5階毎に脱出用魔法陣があるから覚えておいて。一応習ったはずだけど、君、色々忘れているようだから」
興味なかったからね。ダンジョンに行きたくなかったから覚えたくなかったとも言うけど。
「ありがとうございます。覚えておきます」
「なので取りあえず、一つ下の階に行ってみて、増えたスキルがどんなモノか見てみよう」
レメゼールさんの提案に僕は頷いた。
僕もそれがいいと思った。
レメゼールさんについて行くと、10分もしないうちに魔法陣に辿り着く。ここにいるスライム達は、攻撃しないかぎり攻撃してこないらしく、姿は見たけど遠くからだった。
初めて見たモンスターの感想は、「小さい」だった。
スライムだからかもしれないけどね。
魔法陣は、直径1.5メートルほどの円で思ったより小さい。乗ると数秒で次の階へ行くらしい。
なんか怖いな。ちゃんと同じ場所に転送されるだろうか?
「大丈夫。行き先は決まった場所だから」
僕が何を考えているのかわかったのか、レメゼールさんがそう言ってくれて安心した。ついでに一緒に乗った。
一瞬、周りが光りに包まれたけどすぐに元に戻る。さっきと変わらない感じだけど、違う場所だ。
「さて、ステータスを見てみようか」
「はい。ステータス」
ステータスには、スキル増殖の他に、サーチと言う文字が増えていた。
「す、凄いなこれ」
「凄いんですか?」
「サーチは便利だからな。敵の位置だけではなく、宝箱があればそれもわかるらしいから」
「宝箱!? そう言えば、強くなる為に宝箱も魔神様は用意して下さったって習った気がする」
「あははは。そう言う事は覚えているんだ」
笑われてしまった。
「モンスターと戦う事で強くなれるが、授かるスキルか魔法は一つなので、装備などが何故か設置されている。しかも毎日増えるようで、頑張れば色々手に入る。一応この階でサーチを使って見るといい。もしかしたらお宝があるかもよ?」
まああったとしても一番弱いモンスターのダンジョンの地下2階だから期待は出来ないけど、貰えるなら貰おう。
って、サーチって言えばいいのかな? うん?
あぁ。言わなくても使いたいと思えばいいみたいだ。
目の前に、うっすらと地図みたいのが現れた。赤い点が動いているからこれがスライムだろう。黄色は僕達。というか、離れた場所に4つの黄色い点がある。ガーナラルド王子たちだと思う。黄色はハンターだね。
そして、青い点と緑の点がある。どちらかが魔法陣だとしたらもう一つは、宝箱の可能性があるかも。
「ねえ魔法陣ってどっち側にあるの?」
「うん? こっちだけど?」
レメゼールさんは、右を指差した。
ガーナラルド王子達が居る方だ。こっちには緑の点があって、近くに四人がいる。だとすると、青い点が宝箱?
「ねえ、反対側に行ってもいい?」
「構わないが……宝箱があったのか?」
ちょっと驚いて聞いて来た。まさかあるとは思っていなかったんだと思う。
僕もドキドキしている。
「わからないけど、確かめたい」
「OK行こう!」
暫く歩くと、青い点の場所についた。
驚く事に洞窟の壁に小さな窪みがあって、洞窟と同じような色と模様の宝箱が窪みの中にあり、サーチでなければ気づかないかもしれない。
位置も頭上で、モンスターを攻撃して進むなら見えない場所。
「凄いな。本当にあった」
「これ、とっても大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。ダンジョンの地下に潜るほど、強力な装備やアイテムがあると言われていて、たまにトラップもあったりするから気を付けるようにな」
「はい!」
やったぁ。手を伸ばし小さな宝箱を手にした。
くすりと笑う声が聞こえ見ると、レメゼールさんが微笑みを返して来た。
「初めて笑顔を見せたな」
「え……」
「君みたいな子は初めてだよ。ほどんどの子は、夢を膨らませて来るからね。希望に満ちた顔をしているんだけど、君達は違った」
「うん? 達?」
「殿下も作り笑顔は返すけど、嬉しそうではないな」
やっぱりそうなんだ。王子もダンジョンハンターになりたくなかった。まあそうか。王族だもんね。でも一回ダンジョンに潜れば、お役目ゴメンだろう。羨ましい。
「開けないのか?」
「開けます」
片手で開けられるほど小さな宝箱。どちらかというと宝石箱?
それを左手に乗せて、右手で開けた。
15センチ程の小さな皮巾着が入っていた。
「これって何ですか?」
「うーん。正確に知りたいなら鑑定をしないとな。でもそれ、腰に下げてちょっとしたものを入れれそうだな。いいんじゃないか、下げておけ」
「あ、はい」
取り出して巾着を腰にくくりつけた。
「パーティーを組んでいれば後で分け合うけど、ソロなら全部自分のモノだ。いらないなら出た建物で売ればいい。高価な物だとオークションに掛けてくれるし、通常の装備なら買い取りをしてくれる」
「わかりました」
へへへ。2階でも装備品を手に入れられるなら5階までしか行かなければいい。確か月の半分をダンジョンにもぐればいいからそうしよう。どうせ一人になるんだし。
「あ、この宝箱はどうすればいいんですか?」
「もどしてもいいし、持って帰ってもいい。まあ普通は置いて行く。大きいからな」
だったら記念に持って帰ろう。
僕は、リュックに宝箱をしまった。
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