第19話 4月27日(金)レボ部のお料理教室

 グッドモーニング。今日も朝が来たぜ。え?何?余裕ぶっこいてて大丈夫かって?昨日のことはどうなったのかって?まあまあ、慌てない慌てない。ちゃんと今日話すから正座してて待っててくれ。

 では、今日は帰りのホームルームが終わる直前から始まります。

江藤:えー。今日はこれで終わり。あと、レボ部のメンバーはここで残れ。話がある。

佐々木:わかってます。

江藤:では解散。

 一年四組の生徒はレボ部を残して全員帰った。

江藤:お前ら、俺がなぜ怒っているかわかるか。

佐々木:大体はわかります。ただ、それは誤解です。

江藤:俺が何を誤解していると思っているんだ。

佐々木:レボ部の活動に疑問を持っているということじゃないんですか。

江藤:ほう。疑問を持っているということはわかっているのか。

佐々木:われわれの活動が単なる遊びに見える。そう言いたいんじゃないんですか。だから、誤解しているといっているんです。

江藤:誤解か。確かに俺が言おうとすることはそのことだ。俺にはお前らの活動は、男と女がわいわい、キャーキャーしていて、ただ遊んでいるとしか見えん。

佐々木:それは見方が違います。わいわい、キャーキャーっていっても、楽しんでいるだけで、遊んではいません。活動そのものは、意味があります。毎日、先生に報告しているじゃないですか。もう一度ちゃんと説明しましょうか。

江藤:言ってみろ。

佐々木:まず、最初の二週間はお互いを知るために、何か目的を決め、それをすることによって、自分も相手を理解し、自分自身に度胸をつけることでした。

そして、今週は月曜は英会話、歌謡は詩、水曜は武術、木曜は心理テストアンドギャグの向上という自分の能力の開発を行っているわけで、人間的に前に進んでいます。何かいけないことでもあるんですか。

江藤:佐々木は言うことはうまいが、他の角度から見ると不純異性交遊に見える。

佐々木:それは、先生の考え方が不純と決めつけているから、そういう風に見えるんです。男と女が共に活動をすることのどこが不純なんですか。男と女がお互い理解しあうことのどこが不純なんですか。男と女が話すだけでも不純なんですか。そしたら結婚すること自体が不純になってしまうことになり、おかしなことになりませんか。

江藤:それは屁理屈というものだ。男と女がわかりあうことは不可能だ。

川村:それは先生が分かり合おうとしなかったからじゃないですか。私は言いたいことがあります。男と女が一緒にいるだけで頑張れる、恋人のために何かを奉仕する、これって素晴らしいことなんじゃありませんか。

江藤:そんなことを言ったってなあ。男と女が一緒になることというのはなあ・・・。

名取:恋人ができたら堕落すると思っているんですか。私は力が出てきますよ。

助平:要するに、先生にとっては、子供ができたら大変だと言いたいわけですよね。

江藤:助平はストレートだなあ。でも、はっきり言ってそうだ。それを恐れるがために学校は規則を作るのだ。

神山:先生も結構素直ですね。

江藤:別にそうじゃないんだが、お前らキャラが強烈だなあ。そう言わざるをえんだろう。

阿曽部:まあ、僕としては仮に子供ができちゃったら学校を辞めて働いて家庭を作ればいいと思いますけど。

江藤:これは学校にとって恥なわけで、そうはいかんだろ。

佐々木:その恥というのは、人間社会が勝手に決めたことなんじゃないんですか。男と女が求め合うことは当然の方程式なのに、それを学生だから否定するっていうのは、あまりに不合理で矛盾しています。俺の結論を言わせてもらいますが、高校生でも、経済力があれば、家庭は作ってもいいんじゃないかと思いますが。

江藤:お前らの言うことも確かにそうだが、なんと言うか。

川村:先生は高校のときは恋愛をしたことないんですか。

江藤:あるが。

川村:なら私たちの活動は認めるべきです。

江藤:うーん。・・・・・・。わ、わかった。だが、もう一つ注文がある。レボ部の活動は一貫性が見えない。何か、これだというものに徹して欲しい。

佐々木:それは、心配無用です。一貫性について述べさせてもらいます。俺たちは自分も社会もよい方向に行くために、レボリューションをしていくわけです。今の段階は社会がどうのこうのというより、まず、自分をレボリューションしているわけです。自分が変わること、それをしなければ、人はより良い方向に歩んでいくことはできません。今、この前俺たちが作った詩のプリントを渡します。俺たちのことを、もっと理解してください。

 佐々木は、江藤先生にみんなが書いた詩を渡した。

江藤:お前ら。この詩はここで読むがいいか。

佐々木:そうしてもらえれば、こっちもありがたいです。

 江藤先生は詩を読んだ。先生は真剣に見ていて、読み終わった後、表情が和らいでいた。

江藤:わかった。この詩を見て、お前らの前向きな主張を聞いたことで、お前らが何かを目指しているのはよくわかった。これ以上は今は何も言わんよ。今日も活動があるのだろ。俺の話はここで終わりだ。

 江藤先生は、納得してくれた。しかし、この佐々木も改めてたいしたやつだと思った。と、同時に、江藤先生も、物分りがいいと思った。他の先生じゃこうはいかなかったと思うけどね。

佐々木:じゃあ、みんな部室に行くぞ。

江藤:ちょっと待て。

助平:どうしたんですか。

江藤:いや、他の生徒をこの教室から追い出してしまったから、この教室を掃除するものがいない。悪いが、お前ら掃除してくれ。

助平:そりゃないぜよ。

江藤:平常点をあげるといってもか。

佐々木:それじゃあ、みんな、掃除を始めようか。

名取:賛成。

 そして、レボ部は教室を掃除し、終わってから部室で活動が始まった。

佐々木:今日は予定通り、料理をします。で、講師は静香ちゃん。

 そう。静香ちゃんは料理が得意なんだ。

名取:はーい。今日は私が講師をします。メニューは何がいい?時間内に終わるものがいいと思うけど。

助平:じゃあ、今日も変わったものをCooking。

名取:助。うるさい。

川村:静香。今日は簡単でいいんじゃない?

長崎:そうそう、例えばラーメンとか。それなら、具材は朕の店にあるから、安くするけど。

佐々木:チャンポン、商売根性あるなあ。

神山:だけど、チャンポンの店に行けばいつでも食べられるよ。

長崎:ま、そりゃそうだけど・・・・・・。

秋山:こういう時は、やっぱりカレーがいいんじゃないか。

長崎:そうだな。だが、さらに、朕はもう一工夫して、カレーラーメンというのがいいと思うが。

助平:チャンポン。そんなラーメン聞いたことねえぞ。

阿曽部:カレーうどんはあるけどね。

名取:というわけで、カレー以外、みんなある?

 特に、他のメニューはなかったので、カレーに決まった。

名取:じゃあ、カレーにするけど、具は何にしよっか。

阿曽部:言っておくけど、今日はフォアグラは持ってこれないよ。

佐々木:誰も聞いてないって。

助平:そう。俺も、今日はスッポンは無いから。

佐々木:誰も食いたくないって。

名取:まあ、くだらないことは置いといて、自分が食べたい具をはじから言って。

秋山:じゃあ、玉ねぎ。

神山:ジャガイモ。

朝霧:人参。

長崎:チャーシュー。

助平:チャンポンいい加減にしろ。お前、店のものばっかじゃねーか。

長崎:いや、朕は素直に食いたいものを言っただけだ。

川村:でも、肉類は欲しいよね。

助平:じゃあ、やっぱりスッポンか。

長崎:助。いい加減にしろ。

助平:お前のチャーシューよりましだろ。

名取:じゃあ、牛肉に決定。

助平・長崎:静香ちゃん。何でそうなるの?

名取:話が先に進まない。

川村:静香―っ。肉はカツじゃだめかな。カツカレーもいいと思うけど。

名取:愛はカツと言いたいんでしょ。カツとか言いながらスッポン取って負けたの誰だっけ。一度使ったネタは使わないように。それに高い。

助平:今日の静香ちゃんはスパスパいくねえ。

長崎:愛ちゃんにも容赦ねえな。

名取:みんな、材料を買ってこなきゃいけないのよ。時間が無いでしょ。

秋山:じゃあ、もう決定でいいんじゃない?一応、材料は、玉ねぎ、ジャガイモ、人参、牛肉ってことで。

名取:じゃあ、多数決で決めます。清彦君が今言ったことに賛成の人は手を上げて。

 みんな手を上げたので、それに決まった。

名取:それでは買い物に行きます。

 買い物をする店は、学校の近くの八百屋さんと肉屋さんに決まった。

 まずは八百屋さん。

名取:こんにちは。

八百屋のおやじ:おっ。静香ちゃんじゃない。今日もサービスするよ。何を買っていくんだい。

川村:今日はカレーをみんなで作るんです。

八百屋のおやじ:そうかい。と、いうことは、玉ねぎとジャガイモと人参にカレー粉という感じだね。これなんかどうかい。

名取:おじさん。さっきのスーパーはここより安かったんだけど。

八百屋のおやじ:あはは。静香ちゃん。また値切ろうっていうのかい。おじさん毎回まいるねえ。

川村:そうそう。みんなで食べるから団体割引してもらえませんか。

八百屋のおやじ:あはは、かわいい子に言われるとおじさんまいっちゃうねえ。

朝霧:まけてくれたら、またこよっかなあ。

八百屋のおやじ:いやー。どうしようかなあ。

神山:まけてくれたら、会った時に手を振って上げますよ。

八百屋のおじさん:あはは。もう、おじさん、負けちゃった。これ全部で普通なら千円だけど、君たちには六百円にしちゃう。ウフ。

名取:ありがとうございます。

 ついにレボ部の女子メンバーは値切りに成功したんだ。

八百屋のおやじ:へい。まいどあり。

 レボ部の女子たちは正直只者ではないと再確認させられた。もちろん、肉屋はこんな感じだった。米はお米屋さんで買った。

 さて、話しながら校舎に戻り、調理室で用意をした。

名取:では、みなさん、カレーを作る前に言っておきます。味が辛いからといって、砂糖を入れて甘くしようとしないように。また、甘いからといって、塩を入れないように。細かいところは、そのつどいいます。みんな、わかった?

他のレボ部全員:ウィーす。

名取:では、始める前に作業を分担しましょう。

佐々木:静香ちゃん。ちょっといい?

名取:なに?

佐々木:分担してやるのもいいけど、ここはレボ部らしく、ギャグを混ぜながら一人一人やっていきたいんだが。

名取:どういうこと?

佐々木:一つの作業をみんなの前で、ギャグを織り交ぜながら順番にやるというわけだ。

長崎:おっ。なかなか面白そうだ。朕は賛成じゃ。

名取:時間がかかると思うけど。

佐々木:いや、一応あと一時間あるから余裕だろ。順番どおりにやれば終わるはずだ。

名取:わかった。時間オーバーしたら、その責任は佐々木君が取るわけね。

佐々木:ああ。罰ゲームでも何でもきやがれ。

秋山:今日の佐々木は強気だなあ。

助平:江藤を丸め込ませたのが原因じゃないのか。

佐々木:まあ、それはおいといて、順番は次の通りだ。

 佐々木は黒板に次のことを書いた。

1. 米をとぐ

2. 肉をなべで炒める

3. イモの皮むきとイモを切り

4. 玉ねぎスライス

5. 人参を切る

6. なべに湯を入れて、具も入れて煮込む

7. 煮込んでいる間の暇つぶし

8. カレー粉を入れる

9. カレー粉が溶けるまでの暇つぶし

佐々木:さあ、これのどれを担当したいか。早い者勝ちだ。さあ、やりたいところがあれば言ってくれ。

長崎:じゃあ、朕が1番じゃ。

佐々木:俺は最後。

川村:私は2番。

名取:私は4番の玉ねぎ。

阿曽部:僕は8番。

秋山:僕は6番。

朝霧:私は5番

神山:私は3番。

助平:じゃあ、俺は一番人気の高い7番

長崎:おい。最後に残ったものが人気あるわけねーだろ。

助平:なんだ。負け惜しみか。

長崎:んなわきゃねーだろ。一番最初に選んだのは朕だ。と、いうわけで朕から始める。

 チャンポンは米を釜に入れて水を入れて米をとぎながらトークが始まった。

長崎:米の洗い方の基本は、水で洗うことだ。洗剤は入れるなよ。かなりまずい。・・・いや、体にも毒である。食べたらあわふいて倒れるぞ。くれぐれも気をつけるように。そう。そういえば、最近はそういうことが起こらないように、無洗米ってものができたのじゃ。って、ここで朕の言葉を間に受けないでくれ。無洗米はただ米をとぐのがめんどくさいがために開発されただけだぞ。洗剤は関係ないぞ。・・・・・・。ただ、朕だったら、同じ“むせん米”でも、もっと人気が出る“むせん米”を出すぞ。そう。“無銭米”だ。漢字のごとく、お金がかからない。これは人気あるぞ。どうだ参ったか。っておい、ただじゃねーか。もうからねーじゃねーか。って誰か突っ込んでくれ。

 チャンポンはこうしゃべりながら米をとぎ終えた。

長崎:というわけで、朕の番は終わりだ。電気釜は時間の関係で早だきでいいよな。な、静香ちゃん。

名取:え・・・。い、いいわよ。

 チャンポンのとばし方はさすがだった。

助平:なるほど、そういうふうにやっていくわけね。

佐々木:いやぁ。チャンポン、最初っから破壊力ありすぎ。

川村:次って私でしょ。うーん。・・・・・・。でも、愛は負けない。

佐々木:おっ。愛ちゃんもエンジンかかってきたぞ。

 愛ちゃんは、洗った鍋をガスコンロの上に乗せて、まな板の上で肉を切りながらトークを始めた。

川村:私って肉を切るのは18番の必殺技なんだ。え?何でって?だって、2×9=18だからよ。えっ。こんな駄洒落ってにくい?まあまあ、そう言わないでね。私って掛け算が得意だからね。だけど、1502×931みたいな掛け算をしてとは言わないでね。私が得意なのは九九だから。え?みんな出来るって?

まあ、それは置いといて、肉を切るのが終わったので、鍋に肉を入れて、少々熱を加えます。焦げ付かない程度に肉を炒めましょう。そう。優しく、ソフトによ。私は女の子だからね。え?何か微妙に脱線しているって?気にしない。気にしない。・・・・・・。もうそろそろ出来上がるので、今日の私のトークはここまで。

 みんな愛ちゃんのトークに拍手した。

佐々木:愛ちゃん。正直、凄い。

名取:私も愛がここまでやるとは思わなかった。

佐々木:次は美子ちゃんだね。

神山:うん。私の担当はいもだよね。それでは始めさせていただきます。

 美子ちゃんのトークが始まった。

神山:私はおいもにちなんで、『正義の味方、ジャガイモマン』のお話をはじめようと思います。では、始まり始まり。・・・・・・。

 美子ちゃんはジャガイモを手にとって、皮を剥きはじめながら話を続けた。

神山:昔々あるところに、ジャガイモマンがいました。普段はジャガイモマンは屋台をやっています。そう。ポテトサラダを売っていました。ジャガイモマンは必死に声を出していました。

『いらっしゃいませ』

『ポテトサラダはいかがですか』

『うまいです』

『おいしいです』

『生き返ります』

『気分がよくなります』

『頭がよくなります』

『すっきりします』

『さっぱりします』

『運がよくなります』

『ポテッとサラサラです』

 だけど、お客さんはぜんぜん来ません。でも、ジャガイモマンは負けませんでした。

『あれ、誰もいません』

『でも僕は頑張ります』

『明日のために』

『未来のために』

『あなたのために』

 けど、お客さんはぜんぜんきません。思わず誰に向かって言っているんだろうと、つっこみたくなります。それでもジャガイモマンは明るく頑張っています。そんな時に、ある人から電話が来ました。

『助けてジャガイモマン』

 正義の味方のジャガイモマンはすぐに店を閉めて出動しました。

『俺のマウンテンバイクが火を噴くぜ』

 ジャガイモマンは現場に到着しました。

『どうした。何があったんだ』

『海で人が溺れています』

『よし。このジャガイモマンが助けに行くぞ』

 ジャガイモマンは助けに行きました。けど、溺れているのは人ではなく、人魚さんの女の子でした。ジャガイモマンは人魚さんを助けて砂浜に連れて行きました。

『あんた、人魚なのに泳げないのか』

『私、昔、かなづちでたたかれたから』

『それは洒落か』

『そう。それが言いたかったの。それじゃぁねー。バイバイ』

 その人魚さんは海に飛び込んで泳いで帰ってしまいました。

『俺は洒落を聞くために苦労したのか』

 でも、ジャガイモマンはめげません。

『こういうこともあるさ』

 こんなジャガイモマンって、みんな素敵だと思いませんか?え?この話の意味がわからないって?だって、トークだもん。深い意味はあなたが考えてね。そう。海より深い意味があるのよ。と、いうわけで、イモの皮むきをして切り終わったからおしまい。

 みんな美子ちゃんに拍手した。

助平:ほーう。そうきたか。

朝霧:なんかわかるようでわからないようで・・・。

阿曽部:美子ちゃんもさすがだよ。“いも”からここまでもっていくのは大変だったと思う。

佐々木:さて、次は静香ちゃんだね。

名取:・・・・・・。これって大変だね。・・・玉ねぎかあ。・・・・・・。うーん。今回は私もぼけなきゃいけないわけね。私はそういうキャラじゃないんだけど。

助平:ちゃんと、俺とチャンポンと清彦がつっ込んでやるから心配すんな。

名取:なんかいやなつっこみが来そうな気がするけど。

長崎:大丈夫だって。コツは自分を捨てることだよ。

名取:じゃあ、とにかく始めます。

助平:なんでやねん。

秋山:助。まだ何も言ってないって。つっ込み早すぎ。

名取:ちょっと、私の出鼻をくじかないでよ。

長崎:おっ。静香ちゃんらしくなってきた。

名取:しょうがないわね。まったく。というわけで、今日は正しい玉ねぎの使い方を教えます。正しい使い方を教えます。正しい使い方はカレーの場合は、きちんと包丁で、切りましょう。切らないで丸ごと具にすると、食べる時に玉ねぎ食べているかかカレーを食べているかわからなくなります。それはまだいい方です。決して胸の中に玉ねぎを入れて大きく見せようなんてせこい真似はしないように。転んで前かがみになった時に、胸からポロッと玉ねぎが落ちてきたら情けないからね。玉ねぎの力が無くても泣けてきますからね。くれぐれもご注意を。

助平:俺も泣けてきたぜ。

長崎:助。お前、胸に玉ねぎ入れているのか。

秋山:僕ももらい泣きしちゃったよ。

長崎:意味わかんねー。

名取:というわけで、玉ねぎの千切りは終わり。

 静香ちゃんの番が終わった。

長崎:今日の静香ちゃんはすげー。

川村:私、静香が自分を捨てたとこ初めてみた。

名取:何言ってるのよ。これぐらい余裕よ。

助平:発想が静香ちゃんらしい。でも、もしかして、それって実体験?

名取:そんなわけ無いでしょ。怒るわよ。

長崎:もう怒ってるじゃん。

名取:うるさいわね。

佐々木:まあ、まあ。というとこで、次へ進もう。次は朝ちゃん。

朝霧:はーい。では、人参を切りながらトークをしたいと思います。えーと・・・・・・。この前の自動販売機でのお話をします。ある時、私は自動販売機で、ジュースを買おうとしました。コーラーが飲みたかったので、自動販売機にお金を入れたら、ゴトッって音がして、人参ジュースが出てきました。ボタンをよく見ると、人参ジュースのボタンに、紙がはさまっていて、ボタンが押されている状態になっていたの。私は頭にきたので、そのままにして帰ろうとしたら、ピコピコピコという音が聞こえて、当たりが出たの。私は、“やったー”と思い、もう一本もらえると思ったら、ゴトッという音がして、人参ジュースがまた出てきました。がっくり。・・・・・・。

ちょっと運があるようでない話でした。で、まだ時間があるので、自動販売機ネタを続けます。自動販売機でジュースを買う人でこんな変な人がいました。紙コップで飲み物を買うやつで、砂糖を増量にして、ミルクも増量にして、コーラーを買った人がいました。私はこの人に対し、一言言ってやりたいです。『そんなことする奴ってバスに乗って終点で“次降ります”というボタンを押しているのと同じだよ。』って。というところで、人参を刻み終わりました。どうでしたか。私のトークは。

 みんな、朝ちゃんに拍手した。

佐々木:朝ちゃんすごいね

助平:夕方でも朝ちゃんって感じだね

阿曽部:助。意味がわかんねー。

秋山:次は僕かあ。といっても、なべに湯を入れて、具を入れて煮込むために火をつけるだけか。もしかしたら、それは一瞬で終わるんじゃないか。

名取:ちょっとさみしいわよね。

助平:名残惜しいなあ。

長崎:清彦はいい奴だったのに。

阿曽部:清彦。向こうに言っても僕のことを忘れないでくれ。

秋山:おい。何の話だ。勝手に僕を転校させるな。と、いうわけで、一応トークを始めます。えーと、なべに具を入れます。何をネタにしようかなあと思っているうちに、具は入れ終わってしまいました。次のチャンスは、なべに水を入れる時だって言っている間に、水を入れ終わってしまいました。後はガスをつけるだけだけど、トークをするために、ガスのスイッチをゆっくり回して時間を稼ごうと思ったけど、それだとガスに火がつかないで、ガス漏れして、窒息死してしまうので、僕は涙を飲んで、みんなのためにガスは一瞬でつけます。

 僕はガスをつけて終わった。

秋山:ほーら出来上がり。

 みんな僕に拍手をくれた。

佐々木:この短い時間でも、見せ場を作るとは、清彦も結構やるなあ。

助平:次は俺か。俺は煮込んでいる間の暇つぶしか。では、まず、寝るか。

長崎:おい。みんな頑張ったんだぞ。一人だけ寝るな。

助平:んなこといわれてもさあ。テーマも無いんだよな。でも、さっき寝ようと思ったから、寝るときに見る夢の話でもしよっか。

佐々木:さっきの「じゃあ寝るか」は前置きだったんだな。

助平:とにかく夢の話をするぜ。まずは、怖かった夢の話。俺は最近こういう夢を見た。マンションの最上階から、エレベーターに乗って下へ降りていったんだ。もちろん1階が一番下のはずだったんだが、エレベーターは1階を通り越して、どんどん下へ行くんだ。そう、エレベーターの階を表す数字が、B10階、B20階、B30階、となって、終わりが無いんだ。こんなの実際にあったら怖いだろ。どうだ。びびるだろ。ちびるだろ。

 次はサメに食われた夢の話だ。ある時、海を泳いでいたんだ。すると、背後にサメが現れたが、見事倒したぜ。めでたし。めでたし。っておい、食われたんじゃねーのかって。

そうなんだよ。倒したサメの血を嗅いで、たくさんのサメが来てしまった。どういうわけか、丸呑みされた。だから、自分の目の前は真っ暗になった。すると、そこで声がしたんだ。「おい、お前も食われたのか」って。そう。サメの腹の中で、のんきな会話をしてきた奴がいた。そいつは、チャンポンだった。

長崎:おい。何でそこで朕が出てくる。

助平:まだ続きがある。チャンポンはそこで生活をしていたんだ。そこに、「あなたーっ」って声が聞こえたんだ。その声はもちろん美華ちゃんだったんだ。

長崎:助。適当なことを言ってないか?

助平:まあまて、続きがある。そして、俺はチャンポンに言ったんだ。「チャンポン。お前ここで住んでいるのか」と。チャンポンは答えた。「そうなんだよ。いろいろ不動産を歩き回って、ただで住める所を紹介してもらったらここだった」ってさ。しかも、チャンポンはこういった。「サメは海の中にいるから、魚もただで入ってくるのさ。美華ちゃんはすし屋の娘だから、その魚ですしをにぎってくれるんだ。最高だぜ」って。で、俺はそんな話よりも、外に出たかったから、チャンポンに出口まで案内してもらったんだ。「この出口はちょっと臭いけど、我慢して出てくれ」ってチャンポンが言ってた。もちろん出口はサメの肛門だった。そこで気がついて目が覚めたら、俺はトイレで寝てたみたいだった。この夢の話も面白いだろ。

長崎:助。お前、夢だからって、好き放題、朕をネタにするな。

助平:とにかく、どうだ。具はやわらかいか。

 助は鍋のふたをとってジャガイモを箸で突っついた。

助平:だめだ。まだ堅い。そうか。じゃあ、夢の話を続けるか。次の話は、昔の夢でさあ、よく遊んだなあって思った。幼稚園の頃はブランコに乗って、小学生の頃はよく走ったっけ。算数の時間にくだらないことを言ったのを思い出したよ。先生が、「この計算の式に、カッコをつけるのはなぜかわかる人いるか」と言った時に、俺は「かっこつけるため」と言ったっけ。話はまだあるぞ。いたずらもよくしたよな。校長の銅像にふんどしを巻いたりしたなあ。中学の時もめちゃくちゃだったなあ。角田って奴と、水戸って奴と組んで、黄門組みをつくってよくけんかしたっけ。で、最近の夢を見る前に、病院で起こされたんだ。どうも死にかかってたらしい。

長崎:おい。それって夢じゃなく走馬灯じゃねーか。

助平:どうだ。なかなか面白いだろ。

 助は箸でジャガイモをつついたら、ジャガイモが崩れた。

助平:よーし。具はオッケーだな。俺の出番はここで終わりだな。

川村:私、助の過去って始めて聞いた。

朝霧:そういえば、黄門組って、中学の時、うわさで聞いたような気がする。

助平:まあ、それは置いといて、次は阿曽部だろ。

阿曽部:うん。確かに僕なんだけど、僕のトークはカレー粉を鍋に入れる時しか、時間が無いだろ。一瞬じゃん。

神山:とか言って、カレーに関してのとっておきのネタがあるでしょ。

阿曽部:美子ちゃんはさすがだなあ。実は一つだけあるんだけど。

佐々木:じゃあ、早速始めてくれ。

阿曽部:では始めます。

 阿曽部はカレー粉を取り出して鍋に入れた。

阿曽部:カレー粉を入れた後に注意することがあります。カレー粉はちゃんと解けるまで煮込みましょう。そうでないと、肉だと思って食べたものがカレー粉の塊だったら最悪だからね。食べる前にこのことは必ずチェックしましょう。以上。

 阿曽部のトークは終わった。

助平:短いわりにはポイントはついてたよな。

名取:では最後は佐々木君:。

佐々木:ウィーす。俺のトークを聞いてくれ。最近思っていることを言います。最近の天気予報はぜんぜん当たらないんだよな。占いよりも確率は低い。天気予報はまじめに予報しているのか。だけど、実はダーツで天気予報をやっていたら最悪だよな。次の日の天気予報がダーツで決まるんだぜ。明日の天気はパジェロで、あさっての天気はたわしだったら最悪だなって・・・おい、それって、関口宏の東京フレンドパークかよ。・・・。だけど、パジェロが降ってきたらみんなただでパジェロが取れるんだよなっておい。降ってきたパジェロをとろうとしたら下敷きにされるって、ていうか、降ったパジェロが地面に当たったらぐしゃぐしゃじゃねーか。てことで、ダーツでくれぐれも天気予報をしてはいけません。って、誰もやらないって。でも、もしテレビの天気予報が信じられないときはどうするか。美子ちゃんがいるじゃないか。ね。美子ちゃん。

神山:え、う、うん。

佐々木:というわけで、時間はまだまだ続けます。最近思っていることで、疑問に思ったことがいくつかあります。一つ目は風呂の中に入るとトイレに行きたくなるのはなぜなんだろう。二つ目は、行き先が同じバスがたまに二台並んで走っているのはなぜなんだろう。三つ目は、学校の机に開いている穴に消しゴムのかすを入れたくなるのは何でだろう。

というわけで、時間はまだあるので話を続けます。

最近、俺は商売に関心がある。そこで、何か変な宣伝をしているデモンストレーターがいたんだ。何のデモンストレーターかというと、化粧品なんだ。そいつはこう言っていた。『この化粧品は10才若返ります。60才の人は50才に、50才の人は40才に、40才の人は30才に、30才の人は20才に、20才の人は10才に、10才の人は0才に』と言ってたんだ。俺は心の中でつっ込んだよ。20才から10才は無理だろ。そして、10才から0才は、もはや化粧品じゃねー。・・・というわけでそろそろ時間かい?

神山:時間はまだだけど、本当は、そろそろネタが尽きたんでしょ。

佐々木:さすが美子ちゃん。鋭い。みんなこの辺で勘弁してくれ。

名取:みんなどう思う。

助平:今日の佐々木はよく頑張ったからなあ。平常点をあげるから、トークをまだ続けろと言いたい。

佐々木:おい。頑張ったからお疲れ様じゃねーのかい。

助平:世の中そんなに甘くない。今日のカレーのように。

川村:今日の佐々木君は冴えているから、もうちょっと続けてよ。

佐々木:愛ちゃんが言うんじゃしょうがない。もうちょっとだけ俺のトークを見ててくれ。チャンネルは変えないように。

長崎:おい。ここはテレビ局かい。

佐々木:というわけで、続けます。といっても、ネタが無いんだよな。後残っているネタと言えば、マグロとかエビとかホタテとか・・・って、それはスシネタじゃねーか。って一人でボケとつっ込みを入れている俺に平常点。

と、さて、何かネタはあったかなあ・・・・・・。あ、そうだ。この町にとんでもない小僧がいた話をしよう。

その小僧はバス代だまし取り小僧なんだ。その小僧は、バス停のところにいつも突っ立ってるんだ。そして、大人の人にこう声をかける。「すいません。あのう、お金が無くてバスに乗りたくても乗れないんです。バス代を貸してくれませんか」と。人のいいこの町の市民の大人はみんなバス代をこの小僧にあげてしまっていた。その小僧はその手口を何回も行っていた。俺の友達は、バスの回数券を渡そうとしたが、「回数券じゃだめなんです。お金じゃないと駄目なんです」と、何が駄目なのかと言いたいところだが、その友達は人がいいのでお金を上げてしまった。そして、ついに、その小僧は俺の前にも現れた。小僧は「あの。すいません。バスに乗りたいのですが、お金が無いので乗れません。お金を貸してもらえませんか」と言って、俺は、「お金は持ってないよ」と言ったら、「そんなはずは無いじゃないですか」とずうずうしく言って、俺は、貸す意思はないと言ったら、「困っている人を助けるのが人じゃないですか」とわけのわからぬことを言ってきたので、俺はその小僧に穴は無いかとよく状況を分析し、穴は見つかったので、俺はこう言った。「次のバス停が終点だから歩け」小僧は計算ミスをしたのに気づいたせいか、顔を赤くして黙って去っていったけどね。

というわけで、そろそろ時間だな。

 と、佐々木は鍋の中を見た。カレーは見事溶けていた。

佐々木:というわけでおしまい。

 みんな佐々木に拍手した。

神山:今日の佐々木君はすごいよ。

助平:さすがトリを飾るだけある。

長崎:トリだから、佐々木は逃げ出すと思ってけど。

佐々木:トリはチキンだからと言いたいのか。

長崎:ナイス突っ込み。今日の佐々木はすごいなあ。

助平:それはそうと、みんなカレーを食べようぜ。

 みんなみんな賑やかにカレーを食べた。

 食器の洗い、後片付けを終わって、帰る準備をした。

佐々木:じゃあ、みんな、お疲れ様。今日はここで解散する。かいさーん。

 みんな思い思いの人と話しをしていた。朝ちゃんと愛ちゃんは、助と三人で話していた。佐々木は、美子ちゃんに呼ばれて隣の教室に行った。

神山:佐々木君今日は凄かったね。

佐々木:任せてよ。

 佐々木は自己満足の気分に浸っていた。

佐々木:で、俺をここに呼んだのはいったい・・・。

神山:そうだよ。私、佐々木君に告白しようと思ったんだ。好きだよ。

佐々木:・・・・・・。

 佐々木は一瞬戸惑った。

佐々木:・・・、うれしいなあ。うれしいけど・・・・・・。

神山:愛ちゃんのこと?

佐々木:ああ。

神山:でも、愛ちゃんはもう助とできてるよ。

佐々木:ああ。今の俺って、朝ちゃんの気持ちよくわかるなあ。

神山:ということは、私の気持ちもわかる?

佐々木:・・・・・・うん。わかる。

神山:じゃあ、愛ちゃんが助に傾いている理由はわかる?

佐々木:・・・・・・。わかんない。

神山:おとといの練習試合よ。助が手を抜いていたことを知ったからだと思う。

佐々木:愛ちゃんはそんなところも見ていたのか。

神山:でも、佐々木君も実は全部急所をはずしていたよね。

佐々木:・・・・・・。

神山:そう。急所を外す代わりに、パワーで圧倒させようとして、怪我しないように無理な闘い方をしていたのは、私だけはわかっていたよ。

佐々木:・・・・・・美子ちゃん鋭いね。

神山:私が思うには、付き合う相手は、自分をわかってくれる人が一番いいと思う。だから、私が佐々木君の恋人じゃ駄目?

佐々木:ありがとう。・・・・・・。でも・・・・・・。

 と、佐々木が下を向いている時に、隙をついて、美子ちゃんは佐々木のほっぺにキスをしたんだ。

神山:今日はこの辺が限界かな。また明日ね。

 美子ちゃんは、佐々木に手を振って帰っていった。

 佐々木はしばらく茫然としていたけど、この教室にはもう用が無いので、廊下に出た。元いた教室にはレボ部の連中はみんな帰っていた。

 今日の話はこのぐらいにしておこうかな。え?人間関係が複雑だって?いいんだよ。若いうちはって、僕はジジイかっという突込みを入れて、今日はおしまい。

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