第18話 4月26日(木)レボ部の心理テスト

 みんなおはよう。元気かい。え?みんな昨日のことが気になってるって?助と愛ちゃんのことだろ。大丈夫。安心してくれ。ちゃんと今日の話の中に入っているから、じっくり読んでくれ。

 では、舞台は、朝、僕のクラスの教室で、僕と静香ちゃんが話している所に朝ちゃんが来たところからはじまります。

朝霧:静香ちゃん、秋山君、おはよう。

秋山:おはよう。

名取:あ、え、おはよう。

 この時の静香ちゃんのおはようはぎこちなかったんだ。

朝霧:静香ちゃんどうしたの。

名取:え、何でもないよ。

朝霧:なんか元気ないよ。

名取:そう。今日の天気は曇りだからねえ。朝ちゃんは元気そうだね。

朝霧:私は元気がとりえだから。

 朝ちゃんは静香ちゃんにこう言って自分の席に座った。

秋山:静香ちゃん。どうしたの。何かあったの?

名取:うん。それがね。実は、昨日、愛が助のほっぺにキスしたって、愛が電話で言っててさあ。だから、朝ちゃんに声をかけられたとき、ちょっと気持ちが複雑になっちゃってね。朝ちゃんは助が好きだから。

秋山:静香ちゃん。ちょっと気を遣いすぎなんじゃない?助にキスをしたのは静香ちゃんじゃなく愛ちゃんなんだからさあ。でも、僕は静香ちゃんの人を考える所は好きだけどね。

 静香ちゃんは僕の顔を見て、にっこりとして言った。

名取:清彦君。ありがと。

 教室に助が入ってきた。

朝霧:あ、助平君。おはよう。

助平:あ、朝ちゃんおはよう。

 この時の助は元気だった。助は朝ちゃんが助のことを好きなのは知らないからしょうがないけど・・・。

 その後、レボ部のみんなはぞろぞろと教室に入ってきた。一人を除いて。そう。久しぶりにチャンポンが遅刻して朝のホームルームの時間に入ってきた。

江藤:また長崎か。今日の遅刻の理由は。

長崎:実は目覚まし時計がならなかったんですよ。準備は万全だったんですが。

江藤:ほう。どう万全だったんだ。

長崎:朕は二度ねするタイプなんですよ。

江藤:まあ、二度寝は気持ちいからな。

長崎:だから、いつも目覚まし時計を二つ使って、最初の1個目は時計が鳴ったら時計を止めてまた寝る。そして2個目の時計が鳴ったら完璧に起きるという計算でいたんですけど、時計を止めたら今日はまた寝てしまったんですよ。けど三度寝も気持ち持ちよかったです。

助平:チャンポン。その調子だと卒業する頃には時計が100個になってるぞ。(爆笑)

江藤:よーし。助平に平常点アップ。

長崎:え。先生。朕にはないんですか。

江藤:助平が長崎を上まったからな。

 今日の朝はこんな調子だった。

 助が凄まじかったのは朝だけではなかった。

体育の授業でサッカーをやったのだが、助はハットトリックをやってしまった。

 さらに、音楽の授業では、歌を歌う所で、先生が、

音楽の先生:誰か何か歌いたい人はいるか。

 と、言ったところ、助とチャンポンが手を上げてテツアンドトモの「なんでだろう」と歌いだした。しまいには、

助平:チャンポン。俺たち「なんでだろう」を歌っているのはなんでだろう

なんてわけのわからぬことを言い出したりしていた。

 そして昼。僕は今日も静香ちゃんと食堂で飯を食べていた。

名取:ねえ。清彦君。今日の助ってテンション高いね。

秋山:昨日の愛ちゃんのキスが効いたのかなあ。

?:え。

 後ろで驚きの言葉を放った女子がいた。後ろに振り向くと、その女子は朝ちゃんだった。まさか朝ちゃんが聞いていたとは僕も静香ちゃんも思っていなかった。

朝霧:今のホント?

 朝ちゃんの目はマジだった。僕はどう答えたら言いか言葉が見つからなかったが、静香ちゃんは動じていなく、朝ちゃんをジーと見て、言ったんだ。

名取:朝ちゃん。この話は愛が私に言ったことだけど、キスっていってもホッペだけどね。

朝霧:でも、それって愛ちゃんは助平君が好きってことでしょ。

名取:そう。

朝霧:・・・・・・。

名取:朝ちゃん。愛に何か言う気?

朝霧:もちろん。だけど、これは私と愛ちゃんの問題だけど。愛ちゃんに向かって一言言うの。“勝負”って。

 朝ちゃんはそれを言ってにっこりして僕たちから去っていった。

秋山:静香ちゃん。これはまずいんじゃないかい。

名取:・・・。うん。でも、朝ちゃんって恋愛のルールは知っているみたい。

秋山:このことは愛ちゃんに言っといたほうがいいんじゃないのかい。

名取:別にいいのよ。はっきりするからいいんじゃない。

 僕は静香ちゃんのこのセリフには複雑なものを感じた。

 しばらくたって、こんどは昼食を食べ終わった所に愛ちゃんがやってきた。

川村:静香―っ。相変わらず熱々だね。

名取:そういう愛は?

川村:うーん。・・・・・・。朝ちゃんが私に真顔で“勝負”って言った後、にっこりとして去っていったんだけど、静香心当たりある?

名取:愛はその朝ちゃんの行動はどう読んでいるわけ。

 僕はこの二人の会話を聞いて、正直、背筋が凍りそうだった。

川村:・・・・・・。助のことかなあって思っているけど、でも、そうだとしても、朝ちゃんの勝負の仕方って、正々堂々で、さわやかだったんだよ。朝ちゃんってけっこういい女ね。

名取:愛。愛は助と佐々木君とどっちがいいと思ってるの?

川村:・・・・・・。気持ちは助に傾いているんだけど、今日は佐々木君との会話が多くてさあ。今日の佐々木君は必要以上に私に声をかけてきたのよ。

名取:愛。はっきりしたほうがいいよ。

川村:わかってる。本当は、助と佐々木君をよく見たいけど、そんな時間はないみたいだし。・・・・・・。あ、私、ちょっと行く所があるのを忘れてた。じゃあ、そういうわけでじゃあね。

 愛ちゃんはそういって去っていった。

名取:清彦君。どう思う?

秋山:僕はなんともいえないよ。ただ見守るしかないんじゃん。

名取:そうね。けど、朝ちゃんも愛もけっこう大人だね。

秋山:うん。けど、そしたら、今日の佐々木が気になるなあ。

 と、言ってるそばから、タイミングよく佐々木がやってきた。

佐々木:よう。清彦。静香ちゃん。

秋山:おう。佐々木。

名取:佐々木君。今日は愛にけっこう話しかけてたけど何かあったの。

佐々木:うーん。今日の助がやけに元気だったから、愛ちゃんと何かあったのかと思っただけだけど。

 僕は佐々木もけっこう鋭いと思った。

名取:ふーん。で、今日の活動は何をやるの?

佐々木:今日は、阿曽部が仕切りたいって言うから、阿曽部に任すつもりだけど・・・。

秋山:ふーん。で、何やるの。

佐々木:心理テストだってさ。今週はレベルアップ週間だけど、自分を知るのもレベルアップさせるには大事だろって。

名取:なるほど。面白そうね。

佐々木:じゃあ、そういうわけで、俺は用があるから、じゃあ。

 佐々木は去っていった。

 昼食の休み時間が終わり、午後の授業が終わって、クラブ活動の時間がやってきた。みんな部室に集まった。

阿曽部:えー。今日は僕がアイデアを持ってきたので、部長代行として仕切らせて頂きます。

助平:ほう。それで何をするんだ?

阿曽部:心理テストをやります。テストの紙を渡します。質問が書いてあり、用意してある答えの中から、自分に合うものを選んで、答えて下さい。

 阿曽部は用紙をみんなに渡した。書かれている内容は次のとおりだった。


 阿曽部流心理テスト

1、 お金が1万円入りました。あなたならどうする?

1点    貯金をする

10点   好きなものを買う

100点  買いたいものを買う

1000点 1万円札にほおずりをする

2、 誕生日プレゼントは何が欲しい?

1点    ケーキ

 10点   キス

100点  お金

 1000点 不老不死の薬

3、 恋人と2人で行きたい場所は?

1点    遊園地

 10点   ホテル

 100点  競馬場

 1000点 天の川

4、 むかつく奴を攻撃するとき、あなたならどうする?

 1点    兵法を使う

 10点   喧嘩をする

 100点  悪い噂をする

 1000点 呪う

5、 風呂に入るとしたらどんな風呂がいい?

 1点    温泉

 10点   温泉(混浴)

 100点  健康ランド

 1000点 油風呂

6、 山に登るとき、どのルートで頂上まで行く?

 1点    蛇行しながら登る

 10点   直線に登る

 100点  ヘリコプターで登る

 1000点 タクシーを使う

7、 お金が欲しいとき、あなたなら何をする?

 1点    仕事をする

 10点   お金を借りる

 100点  お金をもらう

 1000点 ゴールドマンを倒す

8、 パンを食べるならどんなパンが欲しい?

 1点    アンパン

10点   ピザパン

100点  食パン

1000点 ざんぱん

9、 音を聞くならどんな音がいい?

 1点    クラシック

 10点   ロック

 100点  宇多田ヒカルの曲

 1000点 お経

10、あなたが殿になったら何をする?

 1点    民に米を与える

 10点   召使をこき使う

 100点  バカ殿様の真似をする

 1000点 便所掃除をする


朝霧:あははははは。

助平:阿曽部。これ、心理テストというよりはお前のギャグだろ。

阿曽部:助。この心理テストには深い意味があるんだぞ。1点は理性的思考が強い、10点は感情的思考が強い、100点は計算的思考が強い、1000点はイっちゃってる人、という風になってるんだ。

名取:へえー。言われてみると確かに・・・。

佐々木:一応意味はあるのか。

助平:それでもギャグだろ。

佐々木:これじゃあ、今日はギャグ大会にするしかないぞ。

長崎:今日はギャグの完成度アップの日てことか。朕はむしろそれがいい。

川村:この心理テストのスタイルギャグ、なかなかだから、心理テストギャグ大会っていうのはどう?そうすれば今日の阿曽部君は成仏できると思うけど・・・。

名取:そうね。このスタイルもいいね。3つ目の天の川なんてユーモラスで行って見たいよね。ね。清彦君。

秋山:そうだね。

助平:お前ら。そんなに駅前の「天の川」っていうラブホテルに行きたいのか。確かにイっちゃってる人だけど。

秋山:へ?そんなラブホテルあるのかい。

川村:やだーっ。静香―っ。

名取:何言ってるのよ。今のは偶然よ。私、そんなラブホテルあるなんて知らなかったよ。

 さすがの静香ちゃんも顔は真っ赤だった。

助平:静香ちゃん。最近変だね。

名取:うるさいわね。助。そんなに血を見たいの?

助平:ん。それってどういう意味?俺を興奮させようとするわけ。

名取:そう。ヌードの写真よ。

助平:何だ写真か。

名取:愛の写真よ。

川村:静香。何言ってるのよ。私を巻き込まないでよ。

名取:何よ。さっき、「やだーっ。」って言ったくせに。

助平:ほう。それはいいね。

川村:スケッ。(怒)

名取:あ、助。言っておくけど、愛の写真って言っても、3歳の時のだから。

助平:なんだ。そういうオチかい。そんなことだろうと思った。でも、お守りに欲しい。

名取:高いわよ。

川村:ちょっと静香。勝手に私の写真で商売しないでよ。(怒)

 正直、僕は静香ちゃんの会話って、いつもながらはらはらさせられる所があると思った。まあ、それは置いといて・・・。

佐々木:まあ、まあ。脱線したけど、今日は心理テスト風ギャグ大会を始めよう。

 こうして心理テスト風ギャグ大会が一日中始まったんだ。ギャグの内容は書ききれないので省略します。え?書いて欲しいって。今日は勘弁してくれ。

 こうして今日のクラブ活動が終わった。

 朝ちゃんが助に近寄った。

朝霧:助平君。ちょっと来て。

助平:いいけど、何?

朝霧:とにかく来て。

 助は朝ちゃんに連れ出されて、二人きりになった。

朝霧:あの、これ私の写真なんだけど、お守りにしてもらえるかな。

助平:・・・・・・。

 さすがの助も返答できなかった。朝ちゃんの気持ちを考えたようだった。

助平:・・・・・俺、好きな人がいるんだけど。

朝霧:愛ちゃんでしょ。

助平:え。あ。う、うん。

朝霧:愛ちゃんとは恋人関係なの?私には友達関係に見えるけど。

助平:え、まあ、そうだけど。

朝霧:ならもらって。私のピンナップ写真。さっき愛ちゃんの写真が欲しいって言ったでしょ。代わりでいいから。

 助は朝ちゃんの写真を見た。笑顔で髪の毛が風になびいていて、さわやかな写真だった。

助平:・・・・・・。ありがとう。大事に持っとくから。

朝霧:ありがとう。じゃあ、みんなの所に戻ろう。

助平:あ、ああ、そうだね。

 助は朝ちゃんの写真を受け取った。助は愛ちゃんが好きなのになんでって思うかもしれないけど、僕も後で写真を見せてもらったけど、本当に心を奪われそうな素敵な写真だったんだ。だからといって、助は不誠実なわけではない。愛ちゃんをちょっと呼んで、愛ちゃんに話したのだった。

助平:愛ちゃん。俺、朝ちゃんに写真もらっちゃった。

川村:・・・・・・。

 だが、これで怒る愛ちゃんではない。

川村:・・・・・・。ホント素敵な写真ね。大事に持っておいたほうがいいよ。

助平:愛ちゃん怒んないの?

川村:何で怒るの?助、私にこのこと言ってくれたからね。

助平:・・・・・・。さすが愛ちゃん。恋愛の達人だけあるね。

川村:助。こんど、二人のプリクラとろっか。

助平:そうだね。

川村:いつがいい。

 と、助と愛ちゃんが話している途中で、江藤先生とバッタリ会った。

江藤:お前ら、二人で何やってるんだ。

助平:え、いや、別に。

 そこに部室から出てきたレボ部のメンバーがやってきた。

名取:あれ、先生、何やってるんですか。

江藤:お前らか。これで全員か。俺はちょっとお前らに言いたいことがある。

 江藤先生は不愉快な顔をしていた。

佐々木:言いたいことなら俺が引き受けるんで、俺に言ってください。後で、ゆっくり二人で話しませんか。

 江藤先生は佐々木の顔をジーと見ていた。

江藤:わかった。佐々木は部長だったな。ちょっと俺の研究室に来い。

助平:あ、ちょっと待った。俺も部員だから、俺も話を聞く。

名取:私も聞く。

長崎:朕も。

 他のレボ部たちも目を合わせて、

川村:話なら全員で聞きます。

江藤:わかった。ちょっと・・・・・・。

 ここで、校内放送が入った。

放送:江藤先生。江藤先生。来賓の方がお待ちです。至急待合室までお越し下さい。

江藤:・・・・・・。お前ら。話は明日にする。明日の放課後、教室で話す。いいな。

佐々木:わかりました。

 江藤先生は去っていった。相当不機嫌だった。

朝霧:先生、どうしたのかなあ。

川村:なんか、相当誤解しているようね。

名取:美子。理由わかる?

神山:わかるよ。一言で言えば、私たちのクラブ活動に疑問があるってことよ。

佐々木:先生には前にちゃんと話したんだけどなあ。レボ部の四月の行動の目的は、まず、お互いを知ることと、自分を改革することだって。

名取:佐々木君。作戦会議開かない。

佐々木:そうだな。

阿曽部:それならうちに来ないか。うちは広いから。

助平:賛成。

佐々木:悪ぃーな。

 今夜レボ部のメンバーは阿曽部の家で作戦会議を行った。会議の内容は秘密。一体何が起こったのか。明日にはわかるんで、今日はお休み。

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