バグの運命に抗わない(前編)
「まったくアアアアさんったら。こんな簡単なこともできないんですの? この学園の恥としかいいようがありませんわね」
「縺ィ縺薙m縺ァ縲∵▼縺」縺ヲ閠ウ縺ィ縺薙%繧阪′蜷井ス薙@縺溷ュ励〒縺吶¢縺ゥ鬘斐→襍、繧貞粋菴薙&縺帙◆蟄励↓縺励◆譁ケ縺梧▼縺」縺ヲ諢溘§縺後☆繧九s縺ァ縺吶h縺ュ縲ゆサ翫°繧峨〒繧よ眠縺励>貍「蟄励↓螟峨∴繧峨l縺セ縺帙s縺具シ」
「ついに言語すらまともに話せなくなったのかアアアア嬢……?」
私がいつもの様にアアアア嬢をいじめると、アアアア嬢から奇怪な機械音のような声が飛び出てきた。近くにいたキーン王子は気持ち悪いものを見る目つきでアアアア嬢を見ている。
「確かにアアアアさんの声が正常に聞こえませんわね。きっと学園側が確認を怠ったからに違いありませんわね」
「何故学園が確認を怠るとアアアア嬢が変な言葉を話すようになるんだ。因果関係まったくないだろ」
「まぁこの程度なら内部処理上では普通にやり取りは可能ですから、いつも通りいじめはさせてもらいますわね」
「この理解不能な言語は『この程度』で済まないだろ。というかやり取り可能だったらいじめるって発想は狂ってるだろ」
ソーシャルゲームには時折不具合が発生する事がある。主に運営者のプログラミングミスなどで発生し、ゲームの進行を妨げたり製作者の意図しない事態が発生したりと不具合は様々な面でプレイヤーに悪影響を及ぼす。どうやらこの世界でも不具合は存在するようで、アアアア嬢の音声がおかしくなってしまっている。運営……つまり学園がアアアア嬢の処理をミスったに違いない。
だがこういう音声の不具合があってもゲームの基本処理自体は普通に行える場合もある。今回も内部処理上では普通の会話と判定されているのでいつも通りいじめても問題は無いだろう。キーン王子が私にも気持ち悪いものを見る目つきになっているのは気になるが。
「惨めねぇアアアアさん。『いじめにアクセスできません。いじめにアクセスできる環境でリトライするか、学園を再起動してください』そんなに泣きたいんだったら『教室が非常に混雑しています。しばらく時間をおいて再度アクセスしてください』私の見えない場所で泣きなさいな。『エラーが発生しました。 エラーコード:523 詳しくはこちらをご覧ください』そんな顔を見てたらイライラしますわ。『いじめが中断されました。トップ画面に戻りますか?』」
「お前も別の意味でまともに話せてねぇじゃねぇか。なんか合間合間で変な言葉が挟まってんぞ」
私はいじめのテンプレ文言を喋ったものの、合間合間に明らかに私の意志ではない言葉が挟まってしまった。キーン王子が思わずツッコんだ。
「この言葉自体はたまにある事ですわ。学園の環境が一時的に悪くなるたびにこの言葉が出てくるんですが、ちょっと待てば直りますのよ」
「学園の環境が悪化すると何故そんなことになるんだよ。この学園はお前の言語中枢じゃないんだぞ」
「でも確かに最近はこの言葉が出てくる頻度が多いんですのよね……。もしかしたら学園でちょっとしたトラブルがあったのかもしれませんわね」
「人の脳を干渉する事態は『ちょっとしたトラブル』ではないだろう。学園がどんなトラブル起こせばそんな言葉がしょっちゅう出るようになるんだ? 怖いんだが?」
先ほどの言葉はおそらく通信環境が悪いときに発生する文言なのだろう。前世の時も、『楽園でキスをして』を遊んでいた際にネットワークの調子が悪いときなどに表示されていた。が、それにしても回数が多すぎる。この回数の多さから考えるに、これも学園側のミスが原因に違いない。
「まぁちょっとテンポは悪くなりますが、いじめはできなくはないのでこのままいじめを続けますわ」
「んなヤバい状態でいじめを続けるな! どんだけいじめに執着してるんだお前は!」
「そうは言っても今日は『いじめ推進キャンペーン』で私とアアアアさんがいじめバトルすると豪華景品が学園から貰えるので張り切っていじめをしませんと……」
「んな事推進するな学園っ! いじめは防止しろっ!」
無駄な処理でストレスが溜まるのは山々だが、今日はアアアア嬢がいじめを受けるほど成長しやすくなる『いじめ推進キャンペーン』と言うイベントが実施中なのでメインストーリーのエンディングに到達して欲しい私としてはがんがんいじめるしか道はない。キーン王子から見ると狂っているかもしれないが、これもキーン王子の幸せのためなのだ。
「ソーシャ様ー、今日は元気が有り余ってるのでダブルニンキーナ編成で回していきますねー。縺オ縺オ縺オ縲∽サ、螫「遏ウ繧呈焔縺ォ蜈・繧後※繧ャ繝√Ε繧貞シ輔″縺溘>縺ェ」
「分かりましたわ。今日も元気にいじめをして差し上げますわね。『いじめにアクセスできません。いじめにアクセスできる環境でリトライするか、学園を再起動してください』」
「明らかに元気とは言い難い異常事態起こし続けてるぞお前ら。と言うか、また母上を二人に増やす気かアアアア嬢……」
アアアア嬢が若干故障した状態でこちらに今日の作戦を話してきたので、こちらも若干故障した状態で返事をした。キーン王子はなんかドン引きしている。
「よし、じゃあ今日も頑張りましょうね! ニンキーナ様達!」
そう言ってアアアア嬢はにこっとした表情でニンキーナ王妃を二人呼び寄せ……
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……たと思ったらなんかうじゅううじゅると触手をはやした真っ黒なぬちょぬちょした物体が、故障した言語でこちらに近づいてきた。
「絶対母上じゃないだろそれー!? いったい何者なのー!?」
キーン王子は、来た者が明らかにニンキーナ王妃ではないので、困惑やら恐怖やらドン引きやらを織り交ぜた顔つきになってしまった。
「あらあら。どうやらニンキーナ様のグラフィックとボイスが『SR 邪神の眷属令嬢』になってしまってるみたいですわね。ですが声とグラフィックが違うだけで中身はニンキーナ王妃のようですので、いじめには問題ないと思われますわ」
「母上の外見が邪神の眷属になるのは問題しかないって! どういう事件が発生したらそんなことになるの!? 俺の知らない間に邪神の呪いが発動したのか!?」
「いえ。多分学園が単純なミスをしたのが原因でしょうね」
「どんな単純ミスだー!? 邪教の本でも破ったのかー!?」
どうやらまた学園のミスにより、ニンキーナ王妃の姿とボイスが別の特待生『SR 邪神の眷属令嬢』と入れ替わってしまったようだ。キーン王子は非常に慌てているが、画像と音声のミス程度ならゲームの進行には問題ないだろう。……とは言えど、この不具合の量はさすがに多すぎだ。
「これはもう看過できないなぁ。ソーシャ様、私今すぐこれらの件を学園長に抗議しに行こうと思います!」
「そうですわね。すぐさま直るかは分かりませんが、学園長に伝えれば近いうちに元に戻ると思いますわ」
「邪神の呪いっぽい事案を元に戻せる学園長って何者なの……?」
アアアア嬢もこの事態を深刻だと捉えたのか、学園長にこの事を報告する決心をしたようだ。私もこの件は報告したほうが良いと思っている。きっと学園長に話せばそのうちこれらの異常事態は元に戻るだろう。
とはいえ。
「ではアアアアさん、今始めたいじめは中断しますか? 放棄すると報酬が貰えませんわよ」
「あ、それはもったいないのでいじめしてもらってから抗議しに行きますねー」
「貴方ならそう言うと思いましたわ。ではいじめさせてもらいますわね」
残念ながらいじめを中断して報告に行くと報酬が受け取れなくなる。なので私とアアアア嬢はいじめが終わった後に報告に行くと、意見が一致した。という訳でいじめを続ける。
「問題を無視して報酬目当てでいじめをうけるなっ! どう見てもヤバいんだから行動するならさっさとしろよっ!」
……つもりだったのだが、キーン王子にさっさと行けと急かされたので結局中断した。あぁ、報酬美味しいのになぁ。
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