第10話

 その後数日は何の変化もなかった。私は散歩に少し外出したけれど、外が暑いので、毎日、毎日、ずっと出かけているのはしんどい。お母さんが、散歩するなら朝、と言うので、朝のうちに出かけるようにはしていた。早朝のほうが、暑くなくて歩き回るのも楽だった。

 何かいいテーマでも思いつけばいいのだけれど、自由研究はまったく進まないままだ。お父さんも、私が小学生のころはキットみたいなのを買ってきてくれたけど、中学生だから自分で決めろと言われてしまった。理科って決まっていなければ、いろいろありそうなのに。

 こうなったら。私はスマホで自由研究、理科と入れて検索してみる。植物を育てて観察日記をつける、とか、天気を予想して実際の天気と比較する、とか、最初から計画を立てていないとできない研究がいくつか出てくる。短時間でできる内容だと、調べものをしてレポートをまとめるとか、博物館に行ってレポートを書くとか、そんな感じのが多い。あとは、簡単な実験だけれど、なんだかあまりレポートが書きやすそうだと思えない実験がずらり。

 どうしよう。

 だからといって、石が手に入るかどうかもわからないのに、最終日まで残したら、困るのは自分だ。

 下手にペットボトルなどの簡単な実験を選ぶより、博物館のほうがレポートが自分らしくできそうなので、適当に選んで出かけることにした。実行は明日、23日と決める。

 今日は出かける気になれなかった。もう日が昇りきってしまい、暑いので。

 何か飲もう、と思い、台所に出ていく。

「また洪水があったんだって」

「そう?」

 お母さんが私に声をかけてきた。私は、自分には関係ないと思い、聞き流してしまう。どうせ私がそんなニュースを聞いても、何もできない。すぐ近くで起きたのなら逃げないといけないかもしれないが、どこか遠くで起きた事件については、私のような中学生が1人何かしたからって、どうにもならないと思っている。

 私は適当なコップを出して、冷蔵庫から麦茶を出す。たっぷりと入った重い入れものから、お茶を注いだ。やっぱり夏は、冷たい飲みものがおいしい。

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