狩りのために山奥へ入った時の話だ。

 獣道を歩いていると、着飾った美女に出くわした。

 人ではないと思って鉄砲を放ったが、弾を右手でつかんで微笑を返してきた。

 もう一発撃ち込んだがこれもだめで、女は赤い唇で微笑するばかりであった。

 どうしようもないので急いで逃げたが、あとを追っては来なかった。



参照:高田衛編・校注「江戸怪談集上」の宿直草『やま姫の事』

最後の付けたしはカット。山姫は神様。アケビの異称。

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