親不孝者

 夫と死に別れ、貧しい暮らしをしている女がいた。

 一人息子だけが頼りだったが、これがまったくの親不孝者であった。

 母親の言うことをまったく聞かず、そのうえ口汚くののしるのだった。

 事情を知っている者たちは口々に「あいつはろくでもない死に方をするだろう」と言っていた。


 それは不良息子が十七歳の夏、昼寝をしているときに起きた。

 となりの家へ母親がお茶を飲みに出かけたあと、息子の大声が辺りに響いた。

 母親が近所の者と家に帰ってみれば、なんと舌を引きちぎられて息子が死んでいるではないか。

 息子の死体からは強い異臭がしていた。



参照:高田衛編・校注「江戸怪談集上」の宿直草『不孝なるもの舌をぬかるる事』

抹香臭くてあまりおもしろくはないが、身につまされる話だぜ。

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