第17話 清少納言から紫式部へ

拝啓 紫式部様


先日頂いたお手紙は、とても楽しく拝見しました。

あなたの噂は色々と聞いて、あんな人かもこんな人かもと想像していましたが、まさか、宮中を去った私にまで嫉妬心を向けてくるとは思いませんでした。

私は、当時宮中で会ったこと、私が感じたことをありのままに書いただけ。

それに、そもそも人に見られることを前提にしたものじゃないもの。

私が何を書こうと、それは私の自由じゃないかしら?

だいたい参詣に行くときは、質素な服装をするのが常識じゃない。

しかも、宮中での歌会でしどろもどろになるなんて情けない。

そのくせ、偉そうに喋りまくるし、女たちに色目を使ってるなんて、おかしくて仕方がないわ。

女だからって、いつでも男の言うがままなわけじゃないのに。

そもそも、人の悪口や陰口、噂話って楽しいじゃない。

こんな楽しいこと我慢出来るはずないでしょう?

だいたい、流行りに疎い男が悪いと思うのだけど。

いつも偉そうにしている男たちを、言い負かしたりするのも楽しいじゃない。

あなたは、私の事を教養がない。知識をひけらかしてる。薄っぺらいとか言っているようだけど、、そもそも私はあなたと会ったこともないわ。

あなたに、私の何が分かるのかしら?

そんなことだから、気が利かないとかつまらないって陰口言われるのよ。

せっかく宮中なんて面白い場所に居るんだから、もっと楽しまなくちゃ。

女だからって、男よりも出来ることがあるんだし、屋敷の部屋に籠ってたって何にも分からないしつまらないじゃない。

人のことをうらやんだり、愚痴やら泣き言を言ってくる人ほど、自分では何にもしないし、不幸を人のせいにするのよね。

あなたの書く「源氏物語」は、ドロドロしていて私好みだったけど、主人公の光源氏は、男に生まれていたら、こんな風に生きてみたかったっていうあなたの願望?

女だからって、自分の才能を隠す必要もないと思うけど。


追伸

近寄りがたい、馬鹿真面目な女って思われるわよ。もっと人生楽しく生きなきゃ。


敬具 清少納言より






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