第6話 弟から姉へ

拝啓 ねぇちゃんへ

もう30年以上姉弟やってるけど、まとめて言いたいこと言ってやろうかなと。

俺がガキの頃、煽るだけ煽って公園の木の上に置き去りにしたよな?

あの後、近所のおっちゃんが見つけてくれて降ろしてくれたけどな。

かぁちゃんの実家に遊びに行ったときも、聞きなれない声がしたと思ったら、

「熊かも?ヤバイ逃げなきゃ!」って言った後「その木に登れば助かるよ。」って言って、俺が木に登ったら自分はさっさと家に逃げてったよな?

挙句の果てに「知ってる?あんた、宇宙人がうちに預けていった子なんだよ。12歳になったら、宇宙人が迎えに来るから。」とか言ってたよな?

俺、30になっても迎えに来ねぇんだけどw

12になるまで、マジで信じてたんだけどw

「ねぇちゃん、俺12になったけど…宇宙人迎えに来るのかな?」なんて、素直に聞いた俺が可愛くて仕方ねぇよw

あ~。でも忘れてねぇぞ。

「はぁ?マジで信じてたの?バッカじゃねぇ~w」って言ったねぇちゃんのイヤミったらしい顔、マジ「殺すぞ」って思った瞬間だったね。

俺の彼女「パピコさん」だっけ?迎えに来るんじゃなかったけ?

今思うと、ねぇちゃんネーミングセンスないわw


まぁ、ねぇちゃんが俺に当たってた理由も今は分かるけどね。

じぃちゃん、ばぁちゃん、隣近所からも友達からも散々言われたし。

「あんたとおねぇちゃん、母親違うんだよ。」

「お前んち、ねぇちゃんとお前の母親違うんだろ~。」

「子持ちの男と結婚するなんて、あんたの母親も苦労性だね。」

「あんたのお母さんも苦労するよねぇ、2人の子持ちと一緒になるなんて」

言いたいことはなんとなく分かったよ。

俺のお袋と、ねぇちゃんのお袋は違う。

ねぇちゃんの母親と親父が離婚して、結婚したのが俺のお袋なんだって。

ガキの頃は意味分かんなかったし、マジでねぇちゃん嫌いだったけど、中学入ってから、ねぇちゃんに詳しく聞かされてなんとなく分った。


「お母さんと私、血が繋がってないんだよ。あんたと私…半分しか血が繋がってないんだよ?あんたは良いよね。ほんとのお母さんと一緒に居れて。」


「で?結局、ねぇちゃんも俺も姉弟なんじゃね?別に、親がどうとか関係なくね?母ちゃんは母ちゃんだし、親父は親父だし。ねぇちゃんはねぇちゃんだし、俺は俺じゃね?だから?」


まぁ、俺の正直な感想だったけどw

ねぇちゃん、意外そうな顔してたの覚えてるw

俺が、ホントの事知ったからって何か変わると思った?

ねぇちゃんは、俺が何したって俺の味方だったじゃん。

親父の金的たまたま蹴り上げて殴られそうになった時も、一番最初に体張って守ってくれたのねぇちゃんじゃん。

俺が学校から泣いて帰ったら、話聞いてやり返したのねぇちゃんじゃん。

隣近所のばばぁに、言い返したの誰だっけw

でもさぁ、俺的にもやり返したいよねw

ねぇちゃん、庇ってくれてたの知ってるけどw

思春期真っ盛りなw

そこからは、俺のやり返しの始まりだったよなw

ねぇちゃんが家出てバイクで家に帰ってきたときに、家中の鍵かけて二階からメットに向けてエアガン撃ちまくったりw

ねぇちゃん、俺の事殴ろうとして、玄関やら裏口やらガチャガチャしてんの面白かったわ~w

俺がバイクに乗りたいって言った時、乗り方教えてくれたけどwその後で、無免で俺が捕まった時言ってくれたよな。


「私が教えたの。これから、あいつになんか言いたい事あったら私が聞く。あいつに私みたいに、親父の価値観押し付けんの止めてくんない?あいつがやりたいこと、やらせてあげるのが親父じゃないの?」


かばってくれたの忘れてないし。

なんだかんだ言って、親父の束縛から守ってくれたことは感謝してる。

でも、パピコさんいつ来るのかなぁw

俺w

マジで信じてたんだけどw

パピコさん、来てくれんだろうなぁってw


敬具 姉貴へw




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