第34話『デートってこんな幸せなんだな』

百華さんから借りた少し高い服を着て

俺はデパートに来ていた

今回のプランは映画や服選び、色んなことを体験させて

真里奈さんを満足させればいい・・・・かな

デパート入り口まで行くとすでにそわそわしている真里奈さんがいた


「よう、もう来てたんだな。遅れてごめん」


「え、どうしたの恋愛君、そんなお金持ちみたいな格好して」


「あー、百華さんから借りたんだよ。どうせないからって」


「あ、そーなのね。別に服選びもするから借りなくても良かったのに」


真里奈さんはどう反応していいか分からない

といった顔で俺をジロジロ見る

すると手をポンとうって人差し指を立てる


「そういえば恋愛君の知り合いが帽子屋をやってなかったかしら?」


そうだった、確かこのデパートには

湯婆姉さんの知り合いで俺も顔見知りなのである

顔見知りというだけで別に親しくはないが

なにかと物知りで湯婆姉さんも頼っていたりしていた

せっかくなので挨拶だけでもしていこう、と思い

俺たちは早速帽子屋へ行くことにした

帽子屋に着くと、すぐにカウンターが見え

そこでシルクハットのような帽子を被って

前髪のせいで目がこちらから見えない

大谷 丈瑠さんが新聞を読んでいた

俺たちが入るとすぐに気づき、新聞を直して立ち上がる


「おや、珍しい客人だね。湯婆君の弟の恋愛君だったかな?」


「はい、久しぶりです大谷さん。湯婆姉さんがお世話になってます」


「湯婆君とは幼馴染だが上京してからあまり話してはいない。別に世話をしてるわけではないよ」


淡々と大谷さんは早めの口調でそう言う

あれ、そういえば湯婆姉さんはこの人と付き合ってたと聞いたが

この様子だと別れた?表情が見えないからよく分からない。

すると大谷さんは不敵な笑みを浮かべた


「彼女とデートといったところかな?オススメならそっちにあるよ」


大谷さんに流されて俺たちは色んな帽子を見て回る

真里奈さんが小声で変な人、と言った気がするが気にしない

帽子、といっても真里奈さんに帽子じたい似合うのか?


「あ、恋愛君見て、これあなたに似合いそう」


真里奈さんがそう言って一つの帽子を俺にかぶせる

おお!たしかにかっけぇな!と言いながら

俺は鏡を使って色んな角度で自分を見る

うむ、決めた、これ買おう

俺が上機嫌でカウンターに行くと

また大谷さんは不敵な笑みを浮かべた


「どうしたんすか?俺になんかついてます?」


「いや、こっちの話だ。気にしないでくれたまえ」


「いやいや、気になりますって」


「・・・・確か君達は神宮寺財閥の御曹司と同級生だったよね?」


「はい、神宮寺さんがどうかしたんですか?」


真里奈さんが前のめりになって聞くと

さらに面白そう、という意味が込められた笑みを浮かべ

さっき読んでいたであろう新聞を見せる

そこにはデカデカと

『神宮寺財閥の御曹司、許婚と結婚!?』

と書かれていた


「え、嘘!神宮寺さん結婚しちゃうの!?」


「みたいだね。相手は神宮寺財閥と引けを取らない超お金持ちだ」


俺はその言葉を聞いた途端帽子をカウンターに起き

そのまま走って帽子屋を出る


「え?恋愛君!?どこ行くの!?」


「これが本当か百華さんに聞いてくる!!」


「やめておいた方がいい。すでに結婚式が始まっているらしいぞ」


「百華さんは普通の暮らしを夢見てたはずだ!こんな結婚嫌って言うはずだよ!」


「たしかにそうです!神宮寺さん、結婚するなら普通の人がいいって!」


「なら君達は神宮寺財閥の御曹司君が嫌々結婚しているとして、止められるとでも?」


「止められるかどうかは行ってから考える!百華さんに直接聞くんだ!」


「あ、待って恋愛君!私も行く!」


「やれやれ、騒がしい人達だ。君達は僕でも予想出来ない事をしてくれるね。いいだろう、結婚式場に送ってあげるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る