第4話 戦闘はありました
1人と1頭は小川のほとりへと辿り着いた。
ネルスラニーラの情報の通りに無事に到着したのだった。
「サイファ、この上流に向かって行くと川幅が拡がった所があるそうです。その付近に開かれた場所があって、そこに玉石草があるようですよ。」
「分かった。じゃあ、このままここら辺で野営すんのか?」
時間は陽が落ち始め夕暮れになりかけていた。
見通しが利く小川の近く。休む場所には申し分ない。
ちょっとし岩場とすぐ側には森。
森側から奇襲はかけやすいだろうがサイファがいる。
警戒に困ることはない。
エルドも奇襲をかけられて困ることはない。
「そうですね。大きめな岩を見つけてそこで野営です。暗くなってか玉石草を探しに行きましょう。」
「あいよ。んで、飯はどうすんだ?」
「それはさっき手に入れたじゃないですか?まずは休める場所を作ります。」
エルドは自身の言葉通りの岩を見つけ、場を均していった。
石で円を作り、火を起こす場所を作ったのだ。
そして、先ほど仕留めたヘビを腕輪型のボックスから取り出した。
ヘビの体を確認していく。
至る所にある裂傷はどのようにしてつけられたのか考察していった。
「サイファ、見てください。このヘビ、彼女と戦闘する前に何と戦っていたんでしょうね?この傷の多さ、そして、傷の長さ。一般的な剣ではこうはいかないと思うのですが。」
「ん~。まぁ、人族相手じゃないだろうな。こいつの鱗の硬さはそこそこある。あの村の護衛団、塒にしているしている冒険者じゃない。速さも重量もありそうなこいつと戦闘するなら槍を多用するはずだ。安全策でな。ということは傷跡は刺し傷、もしくは矢が刺さっているもんだ。それがない。魔法を使った痕跡もない。打撃のあともない。
なら、考えられるのは1つ。
ヘビ対他の魔物の集団だ。しかも、斬れるモノをもった奴らだ。」
「そういう見立てになりますよね。そいつらがネルスラニーラさんがおっしゃってた騒動の原因だと分かりやすいんですがねえ。殲滅すればいいことですから。」
「そうだがな。さて、そいつらはなんでこいつを襲ったかだ。」
「そこが問題ですね。それが分からないと解決できないような気がします。
でも、まずは玉石草からですね。そっちを終わらせてからにしましょう。」
そう言って、エルドはヘビを解体しつつ食事の準備を始めることにした。胴回りエルドの身長ぐらいある大きな蛇だったこともあり尻尾の方を切り取り、残りは腕輪に収納した。血抜きをして、鱗と皮を剥ぎ、一口大に切って、串に刺して焼いては食べていく。
今日の夕食だった。
その後、何事も起きずエルドたちは仮眠をしていく。
そして、夜。
「さて、サイファ。採取に行きますよ。」
「あいよ。」
起きた一人と一頭は上流へと向かっていく。
昼間とは違う光景でもエルドたちには問題なかった。
「これは…なんとも幻想的な光景ですね!そう思いませんか?サイファ!!」
そこは玉石草の群生地だった。
花弁から小さい光の粒が浮き上がっていては弾けていく。
その明かりは優しく淡く瞬いていた。
「こりゃ、中々お目にかかれねぇな。良い物を見れたぜ!」
「ですよね!さぁ、採取していくので周囲の警戒を頼みます。」
「あいよ。注意事項忘れんなよ。お前は夢中になると見境ねぇからな!」
ぶすっと感情を隠そうとしないエルドは思い当たることがあるのか
わかってますよと不機嫌に返事をして採取に向かって行った。
(さて、指先に魔力を込めるんだったか。何色に変わることやら。
まぁ、察してはいるけどね。)
指先に少量の魔力を込めていく。
無色透明の花弁の先にに触れると、徐々に染められていく。
エルドの魔力が染み込むように。
それは水色になった。
(水色?まぁ、青系統とは思ったけど、水色かぁ。もう少し濃い色にも染めてみたいけどなぁ。)
想像していた通りにはいかず少し気落ちするエルドだが
これはこれでいいかと気を持ち直し、採取を続けていく。
花弁を根本から千切ろうとすると
ーパキイィィィンー
と澄んだ高い音ともに花弁が折れた。
初めは驚いたエルドだったが、ネルスラニーラが言った通り、それは“折る”に近いことだった。
そして、頼まれた量まであと少しというところで
エルドは考えていたことを実行することにした。
(指先にどれほど込めようと意味はない。なら、花弁からではなくて根から吸収させたどうなるんだろう。もう、試してそうだけど。
敢えて、教えてくれなかったのかな、ネルスラニーラさん。)
一本の玉石草の前で立ち止まる。
玉石草は、茎が4cmほどの太い茎を持ち高さは30cmほどもある花だ。
互いの邪魔をしないように適度に間隔が開けられていた。
エルドは膝をつき玉石草の根本に手を置いた。
(花弁ではなく根からならどうなる。)
エルドは少しずつ魔力を根から吸わせるように込めていく。
土から水を栄養を吸わせるように己の魔力を下に染み込ませる。
すると、花弁が先からではなく根本から染められていく。
全ての花弁が同時に。
染め上がったのは藍色をした花弁だった。
(これは成功したのかな?ネルスラニーラさんは知ってて教えてくれてなかったっぽいけど。もう1本試してみようか。)
しかし次は先程よりも薄く、青色だった。
(これは規則性を検証するよりもそれぞれに特徴があるっていう風にしとくか。俺が解決するようなことでもないし。)
「サイファ、終わりました。次は調査をしましょう。野営地まで戻りますよ。」
と、サイファに呼ぶように声をかける。
のそりと現れたサイファがエルドにこちらへ来るように合図する。
何事かと思ったエルドは土汚れを払い、サイファに近づいて行った。
「どうしたんですか?手強い相手でもいましたか?」
「そうだったら良いんだけどな。少し急ぐぞ。」
首を傾げながら、後ろをついて行く。
木々の間をすり抜け群生地から奥にしばらく入っていくとサイファが振り向き、エルドに示すように足を向けた。
エルドは眼を見開き、驚きを顕にする。
「これがネルスラニーラさんが“囁く”と仰った原因ですか…。そんな生易しいものじゃないですね…。それにしてもこれは…。」
「あぁ、これはおそらく“卵”だ。この量はうるさいってのが余程合うぞ。んで、これらをどうするかと思ってな。」
「全て切り取り処分します。1つは証拠としてネルスラニーラさんに持って行く必要があるでしょう。面倒ですが、キレイにやってくださいね。迅速にやりますよ!」
枝に産みつけられた卵は奥にもあるように思えたエルドは解体用の少し刃渡りの長いナイフを取り出し、サイファは尾を変化させ、枝と幹の間に張り付いているモノを切り離していく。
処分していく中で不意に視界が開けた。
倒れた木々と荒れた地面、倒れた木々には囓られた跡のある卵がいくつもあった。
(これは、戦闘跡?何者かがここで?卵を食べにきたヤツと護衛が戦ったのかもしれない。護衛がいなかったのは倒されたから?なら、護衛を倒した後、ソイツはどこに行った?負傷が酷く食べるどころじゃなかったのか?)
初めからいなかったかもしれないが、護衛がいなかったことの原因を探していくが見つけられなかったエルドサイファを呼んだ。
「戦闘があったのか。それなりに激しかったみたいだな。」
「えぇ、片方は鋭い刃物を使ってるみたいですよ。」
エルドは切断された跡や穴を指して言った。
「ここで考え込んでも埒があきませんから、さっさと終わらせて村に帰りましょう。私達の知識じゃどうしようもありませんから。」
処分を終えたエルドたちはすぐさまフェル村に戻って行くのだった。
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