第4話 明成学園
「ハァ…ハァ…」
俺は今日、近所にある小さめの山に来ていた。
今は午前6時。
自転車に乗るにはちょっと早い時間だ。
だがこのくらいの時間帯の方が車が少なくて走りやすい。
だが俺は朝が苦手だ。
お腹が痛くなるからなっ!!!
一枚、二枚…
ギアを軽くする度に自分の体が
フワッと宙に舞うほど軽くなる。
ガチャガチャとボトルゲージをとる
動作にはまだ慣れないがそれでも
山を登るときは自然とドリンクに手がいく。
他のロードレーサーはどうしてるのだろうか。
とりあえず今は登り始めたこの峠を
登り終えることだけを考えよう。
そんなときだった。
後ろからギュンギュンきてる音がした。
「あれ?高校生?」
そんな声をかけてきた奴がいた。
「そーだよー。きみはー?」
「おれは明成学園一年の渡部登。
得意なのは山登り!クライマーだよ!」
明成学園といえばここ最近インターハイの
上位を独占してる学校だ。
でも明成は神奈川…
なんでこんなとこに関東の人がいるんだ?
「ねぇなんでこんな東北の小さな峠にきてるの?」
「おれ、この辺に家があるんだ。
それにここ毎日のように登ったからさ。」
「じゃあ登りのときにさ、ボトル
がうまくとれなくてさ、とりかた教えてくれないかな。」
「基本的には手を横に回しながらだよ。
あとはフィーリングじゃないかな…」
「ありがとう!やってみるよ!」
峠の途中で中身はあと少しだったが…
そんな会話をしながら登っていった。
登りきったとき、この街の風景がすべて
見渡すことができる展望台がある。
そこまではいこう。
そう決心して登っていった。
「君、勝負しようよ。」
え、勝負?
俺が初の峠で勝負??
「え、おれと?」
そんな声までもれていた。
まぁいい。勝負するならしたい。
挑戦するのは大好きだ。
「じゃあ、ここから頂上まで!
ちゃんとついてこいよ!」
そういって俺と渡部くんとの
ヒルクライムレースが始まった。
思った通り、渡部くんは早かった。
「おらおらおらぁ!!」
渡部くんの声が朝の静かな峠に響き渡る。
峠終了まで残り300メートルの看板が見えた。
ガチャン。
え?
渡部くんがギアを一枚あげた。
さらに早くなる気だ。
ここまで必死でついてきた僕は
ここで離されてしまうのか…
いやだ!
ここで離されるわけにはいかない!
ガチャン。
おれもギアを一枚あげていく。
おもしろい!おもしろい!
おれはついていくことで精一杯だが
頑張っていくしかない!
「うら!うら!うらぁ!」
うぉおおおおおおお!
渡部くんに並ぶ。
息遣いがあらく聞こえる。
ゴールだ。
おらぁぁぁぁぁあ!
俺が先に頂上に立った。
あれ…
目の前が白いな…
ガシャーン!
俺は気付けば倒れていた。
「大丈夫か!?」
渡部くんは優しいな。
「大丈夫…ありがとう…」
言葉が途切れ途切れででてきた。
その後は渡部くんとたくさん話した。
渡部くんのこと。おれのこと。
そしてロードレースのこと。
渡部くんはU16の強化選手らしい。
そんな人にヒルクライムで一瞬の差だけど
勝つことができた。
とても嬉しかった。
「そんじゃ俺行くわ。」
え、もう?
「あ、これやるよ。」
そう言ってボトルを投げてきた。
「それ、今度会うとき返してくれよ。
もちろん勝ってからな。」
そう言って渡部くんは下っていった。
俺は満身創痍で動けなかった。
また会えるといいな…
冷たい風が吹き、霧が少しかかるさむい日だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(見つけた!俺と同じ登りをするやつ!
絶対あいつは大きな舞台にでてくる…!
負けたくねぇ!)
登はそう思いつつ家に帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます