第3話 チーズ

「楽しみだ。」


俺は今日電車に揺られていた。


隣町で買った自転車を取りに行くためだ。


帰りは乗って帰ってくることは親に話してある。


色々な場所へとロードで寄り道してから帰るつもりだ。


昨日たまたま家に父がいたから久しぶりに話した。


父は海外を転々とするよう選手だから家にいないことは多かった。


父がいるのは珍しかった。


父が勧めてくれた自転車を買うことにしたことを

話したら「お前も俺の仲間だ」と言ってくれた。


とても嬉しかった。


俺の目標はいつだって父だ。


笑う時だって、怒る時だって、いつも父を目標としてきた。

父に追いつけたことは一回もないがな…




それより、電車が駅に着いたようだ。


俺は電車から降り、自転車屋へと向かった。駅から30分ほどかかって着いた。


店に入ってすぐに俺のロードは置いてあった。


「これを昨日買ったのですが…」と店員さんに話かけると

「はい!しばらくお待ちください!」そう言って奥へと消えていった。


そこから、店長さんからロードの点検とアドバイスをもらった。


時間はかかったが、念願の初ロードだ。


俺は期待で胸を膨らませつつ、またがった。


最初に感じたのは、ハンドルが馬鹿低かったってことだ。


サドルよりも低くなっていた。これは前々から知っていたが

自分で体験すると思っていた以上に低くびっくりした。


だがそのあとはスムーズに乗れるようになった。


ギア変速などを試していた。



「風が気持ちいぃー!」


俺は家に帰る途中にあるサイクリングロードへ来ていた。


めちゃめちゃスピードを出しながら…な…


これはずっとまっすぐ行けばあの有名なランドへと続いている。


途中で曲がれば俺の家へと行ける。


このサイクリングロードは180kmほどあり、走りきるには体力が必要だ。


ところどころで他のサイクリングロードと合流する。


だが日本で大きい川3選の一つである川の近くを

通っているこのサイクリングロードはとても広い。




「ん?」


ダンボールの箱が不自然に、きっと人の手によって

置かれていた。


中をのぞいてみた。


猫が一匹、(拾ってください)という紙とともに

入っていた。


「にゃぁああ。」


とても寂しそうに泣いていた。


「仕方ない。見つけたからには

親の許可を絶対もらって

飼ってやるか。どうだ?」


そういって俺は頭をわしゃわしゃしてやった。


最初は威嚇されたりしたが

しばらくすると威嚇してこなくなり、

腕の中で寝てしまった。




「これじゃロードに乗れないじゃん。」


そう春樹は呟きながら、自転車を押して

家へと帰るのだった。


この猫との出会いが後々の彼の人生を

少しだが変えることになる…


それはまだ誰も知らない…




空では太陽が少しかたむき、

カラスが鳴き始めていた。

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