第2話 目標

「僕らの夢は始まったばかりだ。」


この物語は世界に名を残す話でもなく


誰かの心を動かしたいわけでもない。


高校に入学したてのひとりの高校生。


下平春樹の物語。


至って平凡だった少年が


ある一つのロードレースに感化され、


夢を叶えるまでのお話。


------------------------------------------------------------------------------------------------------------


「ゔーざむっ」


冷たい風が強く吹く1月。


俺はロードバイクを買いに近所の自転車屋にきていた。


予算はそれなりにある。そこそこのやつが買えるはずだ。


父が昔、「ツール・ド・フランス」という


世界で一番大きな大会に出場していてその時から自分だけのロードバイク


を持つことが一つの目標だった。



そして最終的には…「ツール・ド・フランス」へと出場することが目標だ。



欲しい自転車は沢山あった…


だがもとから欲しい自転車には目星をつけていた。


お、あったあった。


「すいません、これください。」


ある大きな会社の入門用ロードバイクだ。これは初心者にも使いやすい。


だが真ん中の支柱からワイヤーが出ているこの自転車は

中級以上になるとみんな使わない。


なぜなら、ダサいから。


でも俺はこいつが欲しかった。


なぜなら父が俺にこいつを勧めたからだ。


こいつでどこに行こうかなーっと考えていると、


「他にもヘルメットなど購入いたしますか?」と聞かれた。


たしかに必要だ。


よし買っておこう。


「いります。ください。」



ヘルメットにボトル、空気入れなどを買ったら

俺の予算はほとんどなくなった。


意外と持ってきていたと思ったが


これでぎりぎりだったようだ。


とりあえず全て必要なものは購入することにした。


店員さんに話を聞くと二時間ほどで納車できるらしい。


そんなにはやく持ち帰れるのかと感じたが、


その辺は自転車屋の点検や整備の腕らしい。


俺としては時間かけてやって欲しいものだがな。


今日のところは車体以外を持ち帰り、明日車体を持ち帰ることに決めた。


俺はこれからのロードライフに期待を込め、満足気に家へと帰った。




空には長い飛行機雲がかかっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る