第376話

「いいさ、十分伝わったさ。それにアンタは亡き母の部下の命を救ってくれた。報酬はそれだけで十分さ、だからそんなに自分を下げるような発言をするんじゃないよ。自分を下げる発言をするって事は、アンタを大事に思ってる人の事も下げる事になるって事を理解しな!」


「……エメラス」

 私の言葉に、エメラスは一度だけ頷くと私の頭を撫でてきた。


「これでアンタとの貸し借りは無しだ!あとは世界を守るために救うためにこの世界に生きる者として力を貸すよ。それが生きてる者の勤めだしね!」

 そう告げるとエメラスは甲板から船体に入っていき姿を消した。


 私は、お母様に生き返らせてもらった後に右手に出現したリメイラールから貰ったブレスレッドが在る。私はそれを擦りながら考える。

 

「私は、どうしたらいいんでしょうか?全てが終わったら……私は何がしたいんでしょうか?」

 一人呟く。

 ずっと流されて生きてきた。

 でも、それもこの戦いが終われば終わる。

 クラウス様からもらった冒険者ギルドカードがあれば柵も全て無くなる。

 聖女としての柵も貴族としての柵も全て消える。

 その時、私は何をしたらいいのか。

 その時、どうしたらいいのか私には分からない。

 あれだけ欲しかった冒険者ギルドカードも、今ではそんなに必要じゃない気がしている。


「これはきっと、贅沢な悩みなんでしょうね」


 


 ユウティーシアが呟いた言葉は、降下しつつある船体の風に運ばれ霧散していった。





------------------------- 第145部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

楽しい聖女業は大好きです!


【本文】

 帝政国、それは世界アガルタにおいて魔法帝国ジールと同格の国力を有している国家と言われている。世界一多くの人口を抱えており、経済・軍事ともに非常に秀でている。

 竜騎士達に船体の誘導され着陸した後、私達は数百人の帝政国の騎士達や文官に迎えられていた。


「ずいぶんとすごい歓迎ですね?」

 私は、アリアに小声で話しかける。

 アリアは周囲の人だかりに手を振りながら。


「ユウティーシア様を目当てに集まってきてるのですから、さっさと手を振ってください」

 私に顔を向けることなく、アリアは笑顔で出迎えた騎士達や文官に手を振り続けている。

 

 仕方なく、私も手を振ることにする。

 ノーチラスから降りる前に着替えさせられたドレスは白いドレスで胸元にはルビーのネックレスが光っている。そして右手にはリメイラールから譲られた杖を持ちながら左手を振り続ける。

 杖は、聖女たる私の象徴らしく粒子化してブレスレッドに入れないでくださいねと言われていた。


 飛行船から降りた後、整理されている広大な飛行場のような場所に引かれている赤い絨毯の上を歩きながら用意されていた馬車に乗るとすぐに馬車は動きだした。


「ずいぶんとお金が掛かってるように見えますね」

 私は馬車の中を見渡しながら素直に思ったことを口にする。


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